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王様のお遊戯(あそび)  作者: 社容尊悟
第四章 電蔵と役目

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友青の言葉で、覚悟を決める電蔵と王様

 王様は激しく首を振って、髪をぐしゃぐしゃとかき回した。耳も塞ぎ、目をぎゅっと瞑った。現実から目を背けて、夢であればいいのにと思っている態度だ。

 現実を受け入れようとしない我儘な王様に、友青が玉座に近づいていって言い放った。

「オマエ、母親なんだったら……ちゃんとこどもの面倒見ろよな。こどもが悪さしたら母親が言うこと聞かせるもんだろ? オマエがワガママ言ってどうするんだよ。息子の考えを受け入れろよ! 間違ってるなら、間違ってるって言え!」

「……なんだ……? 何を言っておるのかわからんのに……。なんだか涙が出てくる……なんでじゃ、電蔵……わしは……」

 耳を塞いでいるはずで、目も閉じているはずだった。

「少年の叫びが、王様に届いたんだな」

「……そうか……」

 王様はぽろぽろと零れるしずくを目で追って、感慨深い声で言った。

「……気づいたら、何か言ってた」

 友青は恥ずかしそうに首の辺りに触れて、玉座から離れる。

 電蔵のところに戻ると、電蔵が悪巧みしている笑みで茶化した。

「お前さん、意外と熱い性格なんだな」

「うるせえよ」

「お前さんのおかげで助かった」

「……お、う」

「お前さんを連れてきたのは、間違いじゃなかったってことだ」

 電蔵が目を閉じて、一歩前に出る。

「なんだよ、急に」

「いや……短い間だったが、楽しかったぞ」

 電蔵が目を開けて王様の元まで歩いていく。

「ありがとう、少年」

「……紫水……」

 初めてできた友達。その電蔵と別れることになって、友青は電蔵の背中を追いかけてしまっていた。  気づかぬうちに、無意識に、その背中を追いかけていたのだ。

 まだ何も礼をしていない、と友青は思っているのだろうか。

 友達が消えるかもしれないのに、自分が蚊帳かやの外なのが悲しいと思っているのだろうか。

 悔しくて歯噛みする友青の姿を、電蔵は目もくれずに王様に手を差し出した。

「王様。行こうか」

「……うむ。電蔵……」

 王様は電蔵の手を取って、玉座を離れた。

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