友青の言葉で、覚悟を決める電蔵と王様
王様は激しく首を振って、髪をぐしゃぐしゃとかき回した。耳も塞ぎ、目をぎゅっと瞑った。現実から目を背けて、夢であればいいのにと思っている態度だ。
現実を受け入れようとしない我儘な王様に、友青が玉座に近づいていって言い放った。
「オマエ、母親なんだったら……ちゃんとこどもの面倒見ろよな。こどもが悪さしたら母親が言うこと聞かせるもんだろ? オマエがワガママ言ってどうするんだよ。息子の考えを受け入れろよ! 間違ってるなら、間違ってるって言え!」
「……なんだ……? 何を言っておるのかわからんのに……。なんだか涙が出てくる……なんでじゃ、電蔵……わしは……」
耳を塞いでいるはずで、目も閉じているはずだった。
「少年の叫びが、王様に届いたんだな」
「……そうか……」
王様はぽろぽろと零れる滴を目で追って、感慨深い声で言った。
「……気づいたら、何か言ってた」
友青は恥ずかしそうに首の辺りに触れて、玉座から離れる。
電蔵のところに戻ると、電蔵が悪巧みしている笑みで茶化した。
「お前さん、意外と熱い性格なんだな」
「うるせえよ」
「お前さんのおかげで助かった」
「……お、う」
「お前さんを連れてきたのは、間違いじゃなかったってことだ」
電蔵が目を閉じて、一歩前に出る。
「なんだよ、急に」
「いや……短い間だったが、楽しかったぞ」
電蔵が目を開けて王様の元まで歩いていく。
「ありがとう、少年」
「……紫水……」
初めてできた友達。その電蔵と別れることになって、友青は電蔵の背中を追いかけてしまっていた。 気づかぬうちに、無意識に、その背中を追いかけていたのだ。
まだ何も礼をしていない、と友青は思っているのだろうか。
友達が消えるかもしれないのに、自分が蚊帳の外なのが悲しいと思っているのだろうか。
悔しくて歯噛みする友青の姿を、電蔵は目もくれずに王様に手を差し出した。
「王様。行こうか」
「……うむ。電蔵……」
王様は電蔵の手を取って、玉座を離れた。




