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王様のお遊戯(あそび)  作者: 社容尊悟
第四章 電蔵と役目

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電蔵と王様の愛

「だが、世界を救うには、オレを殺すしかないんだろ。頑張って殺してくれ。オレではオレを殺せないから、お前さんに頼むしかないんだ。頼むよ、王様ァ。ちょっとくらいオレの我儘も聞いてくれ。後生だからァ」

『うぬぅ、可愛い……! くうう……猫なで声で言っても無駄じゃ! わしはお主を殺したくない! お主を殺すくらいなら……わしも死ぬ! この世界なんて、どうなってもいい! お主のいない世界は、地獄じゃ!』

 王様が金切り声で泣き叫んだ。

 電蔵は傷ついたような顔をして、目線を床に落とした。

「……いつまでも我儘聞いてられないんだぞ……生まれたからには、役目を果たさなくちゃならない。だが、それがブラックスフィアを滅ぼすことなら……オレは役目を果たさずに死を選ぶ。その方が、世界を救えるんだ。破滅を呼ぶオスにならずにすむ……。なァ、王様。わかってくれよ。オレの最期の我儘になるんだ。休みをくれ」

『お主こそ、わしの気持ちをわかれ! わからずや!』

「オレが世界を滅ぼす悪者になるのが、望みか?」

『……っ』

 愛しい電蔵に深刻な声音で問われ、王様は黙った。

 どちらの思いも尊重すべきものだ。電蔵を失うまいとしている王様の想い。世界を滅ぼすまいとしている電蔵の思い。互いに自身の気持ちを譲ろうとしない。

「オレが好きなら、オレの考えも受け入れてくれ」

 黙って聞いていた友青が口出しをした。

「なあ。オマエらさ……何熱く愛し合ってんの? 気持ち悪いぜ、まじで。こっちが火傷やけどするっての。バカらしい……そんなに好き同士ならよ、世界のことなんて知ったこっちゃないだろ。好きなようにすればいいんじゃね。それで世界が滅んだって、しゃーなしだろ? その程度の世界だってことで、諦めりゃいい」

 小さいこどもが言う言葉とは到底思えない。

「オマエらはそういう仲なんだろ?」

「……少年、お前さん……何を言ってるんだ……」

 電撃が走るような言葉に、電蔵が面食らっている。

「オレは王様を母親としか見てないぞ……? 愛し合ってるってなんだ……? お前さんが愛を語れる器か? 青春もしたことがないお前さんが?」

 電蔵も青春を送ったとは言えない。

「うるせえ! オレにはそういう風に見えんだよ! 気持ち悪いぐらい、好き好きオーラ出てんだよ、バカ野郎! きめぇよ、バカ!」

 友青はカンカンに怒って電蔵を罵倒した。親子愛というものだろうが、度が過ぎていると言いたいらしい。らちの明かなさに、友青は苛立っている。

 夫婦が喧嘩しているところをこどもが見ているようなものだ。物申したい年頃なのだ。

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