不登校卒業
祖母が友青を咎めるように見た。さっさと食べて学校に行けと。
「いただきます」
手を合わせて友青はパンにかじりつく。目玉焼きは後で食べるので、隅に置いている。
黙々と食べる友青の様子に、祖母は眉尻を下げた。
「ママとパパは好き?」
「……嫌い」
友青は低めの声で答えた。機嫌が悪そうにパンを噛み千切って、目玉焼きを箸で摘んで一飲みする。もぐもぐとよく噛んで、友青は椅子を引いて立ち上がった。
「婆ちゃんこそ、なんで俺とあいつらをくっつけたがるんだよ」
「……あんなのでも、私のこどもなのよお」
申し訳なさそうに祖母はか細い声で訴えた。友青にわかって欲しい、その一心で。
そんな祖母をちらと見て、友青は罰が悪そうな顔をした。
「……婆ちゃんは悪くない」
皿を持って、流しに持っていった。ガチャガチャと流しに置いて、蛇口を捻って水を少しだけ出す。スポンジに洗剤をつけて、皿を洗う。二枚だけしかないが、皿洗いしていないと両親は怒るのだ。余計な手間を増やすなと言って怒る。電蔵のように優しさで叱るのではなく、本能のままにぶち切れる。
それが嫌で久三たちの世話になっていたのに、祖母の誘いで帰ってきた。祖母が悪いのではない。友青も少しは両親に歩み寄らなければならないと思っていたのだ。そうすればいい方向に物事が進むのではないかという甘い考えで。
しかしこども一人に大それた力はなかった。何かを変えることもできない、ただの小学生だったのだ。それを知って、友青は一層捻くれていった。
皿洗いをする手に力がこもる。眉間に皺が寄る。簡単に片づくはずの皿洗いが、無駄に長く、冗長に感じる。
「……はあ……」
友青はため息をついた。無力な自分に、あるいは……この家庭に。
小学校に行けば、みんなが友青を避ける。この前まで不登校だったのだ。そんな人間が急に出てきても、誰も心配はしない。その上、いじめられていた人間が出てきたとなれば、白い目で見られたりするのも当然。なんで来たのかという目だ。そしてすぐに目を逸らされる。まるで存在しないかのように、扱われる。
「こんな胸糞悪いとこ……」
友青は下を向いて、トボトボと歩いた。逃げ出したいと背中が語っている。




