何もかもがうまくいかない
春川友青は小学生。かなり捻((ひね)くれていて、全く可愛くない男子である。
そんな友青が昨日の昼頃に出会った青年は、ちょっぴりおかしな奴だった。出会ったばかりの友青のことを叱ったやつだ。友青は電蔵の髪の色や瞳の色のことを調べていた。
図鑑やインターネットを駆使して調べるさまは、そこらにいる小学生とは似ても似つかない。調べるのに真剣になって、無我夢中になっている。
「どう表現するんだよ、あれ……」
電蔵の髪の色は、ブラックスフィアでは水紫色と呼んでいる。電蔵のファーストネームは紫水で、ややこしいが、少しだけニュアンスが違うのだ。水紫色なら、水色が色濃いということ。
しかしその言葉自体が日本にないので、どれだけ調べても出てこないのだ。
友青はインターネットの質問掲示板に書き込みをした。
「水色と紫色が混ざってる色のこと……なんていう……っと」
それだけでは情報が不十分なことを、友青はわかっていない。人に説明するのは、自分が一番理解していなければならないので、難しいことなのだ。何も知らない相手に話すように、詳しく説明すれば好ましい。それができないうちは、説明できるようになるまで理解すること。
世の中には、説明するのが下手でも頭のいい人間はたくさんいるが、ある程度は説明できるようにしておくと、自身の今後に役立つ。他者に説明する力を持っているのは、素晴らしいことなのだ。
自身がわかりやすいと思っても、ダメなのである。ストレスのたまる作業かもしれないが、それをすることができれば、大抵のことはこなせるようになる。
落ちこぼれと称された友青も、それをするために一所懸命に調べている。
気になることを調べる。たったそれだけのことのために、人は動くのだ。動機は十分。
後は……結果に繋がるかどうか。
未だ実らずということがわかれば、進歩したことにはなる。時には諦めも肝心。
友青はため息をついた。すぐに返信がきたものの、もっと詳しく説明しろと書かれていた。詳しく説明できるほど記憶が鮮明ではないし、そうまでして知る必要があるのかという疑問もある。
それらが合わさったため息。友青は机で頬杖をつく。
「くそ……」
何もかもがうまくいかない、と友青は拗ねた。




