8.増援
作戦開始から10日目。
2日に渡る奮戦により3層の入り口まで戦線を押し上げることに成功したギルドは、西方軍の増援を待っていた。
「まだ来ないのか?」
「先に編成された部隊は向かっていると言うことだ。」
「本隊はまだ編成中か。クソッ、何を悠長にしているのだ。」
作戦参謀が愚痴っている。西方軍は貴族のしがらみが一番強いということもあって調整に難航しているというのだ。
「こうしている間にも戦費が嵩んでいくというのに。何をやっているのだ。」
「国に訴えて、予算は増額してもらったがこれでは水の泡ではないか。」
「こういうときに仕事をしないで何が貴族か。」
もはや名誉毀損のレベルである。
なお、事実を述べているので誹謗中傷にはあたらない。
3層の入り口から先に行くための増援が遅れているため、厭戦の空気が漂い始める。
「まずいな。ハサマ、何か手はあるか?」
「あるわけないでしょう。ここには酒くらいしか遊ぶ余地もない。」
「くっ。ハンターに手形で支払うのもさすがに限界だぞ…。」
参謀らの話によれば、先遣隊もせいぜい中隊規模だという。
とてもじゃないが数が足りない。
どうしたものかという空気がギルド全体に回りそうなとき、思いもよらない所から援軍の知らせが来た。
「ギルドマスター!国から親衛隊の援軍を送ると通達が来ています!」
「何ぃ?親衛隊だとッ、どういうことだ。」
「王家が西方の遅れ分を補うそうです。」
「王家が?まさかそれほどスタンピードに重きを置いていただいていたとは…」
「親衛隊は大隊規模で王都デッサより出立、2日後に到着とのことでした。」
「何だと!ほぼ全てではないか!」
「どういうことです?ギルドマスター。」
「どうもこうもあるか。西方で貴族共が暗闘を繰り広げているのに辟易した王家が範を示すと言っているのだ。西方は面子丸つぶれだな。」
「それじゃあ慌てて編成するんですかね。」
「するのだろう。と言うか、せざるを得ん。」
大事になってきた。
今回の件でミアー卿をはじめとした南部貴族と失態を犯した西部貴族とで序列が変わるのだろう。
俺は貴族社会なんてよくわからないのでどうでも良いのだが、
弁当屋など事実上ミアー卿の後ろ盾を得ている状態なので西方に向かうときは気をつけねばならなくなるだろう。
とにかく、厭戦の空気は王家の介入によって払拭される事になった。
そこだけは現場の人間として感謝しておこうと思う。
西方軍はこれ以後、左遷先扱いとなってしまうのであった




