3.とんからりっと
他にやることもないので、赤本を解くこと3日。
やっとドネペロフに到着する日となった。
ここでの降車はあらかじめドネペロフ行きとして購入しなくてはならず、
乗る車両も別であると初日の改札に来た乗務員と憲兵に聞いていたため
俺が乗るこの車両には降車する客はいないはずだ。
にもかかわらず乗客の一人が窓から出ようとしている。これが関所破りか。
窓から脱出なんてどんだけお粗末な破り方なんだと傍観していると、
他の乗客達がこぞって憲兵に通報する。
「窓から逃げた!」
「あっちの方向だ!」
などなど。確かにそちらの方角に逃げてるのを見たが、そんなに率先してやるものなのだろうか?
そう疑問に思っていたら居残りしていた憲兵が
「そことそこ、それとあそこの部屋か。通報は有効と認める。車掌、六角銅貨1枚を返金してくれ。」
「わかりました。」
なるほど、そういう仕組みか。密告と変わらん嫌な隣組システムだ。
「それでは時間になったので1部屋毎に審査を行う。
乗客の通過税については切符の支払いにてすでに支払い済みとなっているので
荷物を確認できるようにすること。
また、空間魔法などを使用している場合は申告すること。
未申告は重罪とされているので正しく申告することを勧める。」
さすがは憲兵という感じで一気に緊張した空気を作り出す。
数十分後、俺の部屋に乗務員と複数の憲兵が入ってくる。
「空間魔法持ちですが、特殊なので見れるかわかりませんよ。」
「心配ない。検査機を持ってきている。
それに反応が無ければ見ようがないので自己申告で出してもらうことになる。」
そういってカメラっぽいものをこちらに向ける。
「貨幣に少量の食料と…これは赤本か。切符は?」
「えっ。反応しませんか?」
「…確認できないな。一度車両から降りて持っている荷物を申告してもらおう。
おい、応援を頼む。」
半ば引きずりおろされる形で降車し、事務所で座らされた。
どうも検査機は0番の倉庫しか見れない様なので、
1番に入れている売れ残り商品と切符を含めた荷物を素直に出す。
「他は?」
「ありません。」
担当の憲兵が別の機械を見ている。嘘発見器かもしれない。
「…どうやら本当のことらしい。
それでは所持している荷物から税の計算をするのでそこで待つように。」
憲兵と入れ替わりで公務員然とした人が入ってくる。
「心配するな。ドネペロフ駅の担当税理士だ。」
そういってドアを閉める憲兵。税理士はすでに計算に入っている。
やることのない俺は倉庫の整理をするわけにもいかないので
そのまま座っているが落ち着かない。
待っていると列車の発車ベルが聞こえ、そのまま行ってしまった。
「え、ちょ」
「この事務所に連れてこられた時点で諦めたまえ。
なに、税金さえ払ってくれれば次の列車には乗れるよう手配されるから問題はないだろう。
そのために部屋の荷物はすべて下ろされただろう?」
たしかにそうだが理不尽極まりない。
これも異世界の洗礼というやつなんだろうか。
ドリフ大爆笑OP・EDの元ネタである隣組って本来は相互監視の仕組みなのよね




