4.貴族社会なんて御免被る
ミアー卿邸宅。
なぜかご当主自ら出迎えられているムグラーのおっさんと俺。
「なに、緊張することはない。先日の晩餐の礼がしたくてな。
山の幸はとても素晴らしい質であった。食通としての面目躍如と言ったところだ。」
「は、はぁ…」
「はっはっは。私は貴族と言っても治めるべき領地は戦争で持って行かれてしまってな、
今までの功績との相殺で辛うじて貴族社会に留まっているに過ぎん存在だよ。」
なんか色々と複雑な事情がありそうだが、一介の商人として首は突っ込まない方が良さそうだ。
その後、食事を供され「今後もよろしく」との言葉を賜ったが
「機会があれば」と返し、ミアー卿の邸宅から帰った。
「やれやれ、今回ばかりは心臓に悪かった。」
「全くですよムグラーさん。一介の行商が貴族にツラ出せと言われて無事で済むとは思えない。」
「いや、すまんかった。ここまで感激されるとは私も思わなかったんだ。」
宿に帰り、次の目的地を考える。
このマリューボという街は客として買う分には問題ないが商人としてだと許可制の壁がある。
だからここでは仕入れずに次の街で仕入れることになる。
資金についてはミアー卿から幾らかもらったし、
なによりムグラーのおっさんがかなりの大金で商品を買ってくれたおかげで
ハリコの屋台事業の時より潤っている。
「うーん。悩んでも仕方ないか。」
こんな時は商業ギルドで相談するに限る。
「入荷の依頼も配送の依頼もありませんねえ。」
ガーンである。
商業ギルドの依頼は定期便を持たない行商が目的地が決まらない時に利用する仕組みなのだが、依頼数が少ないのですぐに捌けてしまうのだそうだ。
仕方ないので明日の争奪戦に望むと決め、宿に戻ろうとしたときギルドの職員に呼び止められた。
なんでも貴族様の指名依頼という事なのだが、まあ嫌な予感しかしない。
連行されるかのように別室へ連れて行かれ
依頼人を呼んでくると言って待たされること小一時間。
やっと来た依頼人の顔を見た瞬間、嫌な予感が当たってしまったと思った。
「やあ。先ほどぶりだな、ハサマ殿。」
貴族。しかも本人である。
「ムグラー殿の話とは別件でな、
時間凍結を使ってこのマリューボの魚を領都デッサの品評会に出したいのだ。」
「領都くらいの距離なら氷に浸ければ品質落ちないと思いますが…。」
「いや、市場に出る前のものだ。水揚げ時点のものを凍結してもらいたい。」
船酔い必至——
金を権力を持ってる食通が暴走すると自分一人で占有しがち
この貴族は民間の食の質を底上げをするのが仕事なので善人に見えるだけなのです。たぶん




