3.どうせなら高値で
紹介時に"食通のナントカ卿と懇意"とか言ってたので大体の予想はついてたが
やはりその貴族に納める商品で困っていたらしい。
「ミアー卿が呼ばれた晩餐で東部の山菜がそれはもう新鮮な状態で供されたらしくてな、
美食家を自称する卿にとっては大変プライドを刺激されたらしい。」
泥下の蓮の団長が説明してくれる。
「それで、その晩餐の礼としてそれ以上のものを仕入れてこいとムグラー殿に依頼したわけだ。」
「ははぁ、伝手が無かったか時間が無かったかで、仕入れることが出来なかったんですね。」
「そういうことだ。君は本来売ることの出来ない商品を高値で買ってもらえる、
ムグラー殿はミアー卿の依頼を完遂できるというwin-winな取引だと思うが?」
「俺は今、金がないので選択肢はありませんよ。」
「それは良かった。ムグラー殿、買い叩きと売り渋りの防止として
取引に立ち会わせていただきますがよろしいですか?」
「もちろんだ!それでは晩餐の当日、ミアー卿の厨房で出していただこう。
ハサマ殿はそれまで私の商会の客分として寝泊まりされるといい。」
そんなわけで山の幸を高値で売る契約を取り付け、
ミアー卿の晩餐をこしらえる日までたっぷりと海の幸を堪能させてもらった。
もちろん、鑑定して商品登録も忘れずに。
ミアー卿主催の晩餐の日取りが決まり、
納品を完了した俺はすぐ晩餐の日までの間に調査していた宿に移動した。
客分という立場に慣れなかったということもありストレスが溜まっていたのだ。
ムグラー邸より食事の質は落ちても心の安定を求めるのは仕方ないことだと思う。
そして晩餐の日の翌日。
何故かムグラーのおっさんに呼び出され、ミアー卿の邸宅に向かうことになった。
「一体なんです?商品の品質に問題は無かったはずですが。」
「私も連れてこいと言われただけなのだ。
流れの商人だから無体なことはできないと言ってはいるが…。
とにかくおかしなことにならない様、私も努力するつもりだ。」
「はぁ…。」
行商の失敗はこれでチャラとなりました




