10.異世界感が仕事を放棄しました
ハリコから4日、ドーネから2日ほど経った。
泥下の蓮のリーダー曰く「途中で身軽になったから明日夜には着くぞ。」とのことで
スピードを緩めて明後日の日中に着けるよう調整する。
「うん?バックミラーになにか…。」
『犬か狼だな。速度落としたから追いつけるようになったんだろ。』
確かに犬っぽく見えないことも無い。
「というか60km/hで走ってるのに追いつくのか。」
『?あいつらは普通に80出せるし短時間なら100行くのは常識だぞ。』
「チーターかよ。」
『依頼主さんよ、どうも常識がズレてるな。豹系ならもっと早いぞ。』
「それは失礼。」
どうやら異世界の獣は全体的に足が速いようだ。
「それで、どうするんです?」
『あいつらは小回りが利くから捕捉された時点で逃げるのは厳しい。叩くしかないな。』
そう言って護衛車が先導車を残し俺の車の後ろに回り込む。
トラックの荷台から泥下の蓮のメンバーが得物を持って後方のイヌ科に狙いをつける。
車があるんだから銃があっておかしくないが、さすがにガトリング砲は無さげだ。
しかし照準が甘い銃でも車両から有効な攻撃が出来るよう散弾銃を使ってるのは
さすが実戦経験があると思わせてくれる。
だが、それにしてもだ。
せっかく異世界に来たというのに現代兵器が主役を張るってのはなんとも風情をわかっていない。
いや、守ってもらってる立場で贅沢だというのはわかっているけれども。
だいぶ数が減り、2,3匹となったところで泥下の蓮のメンバーが車両から降りる。
撃ってれば勝てるのに格闘戦に移るのは何故かと思っているとリーダーが説明してくれる。
『皮が売れるのと、肉だな。あんたのコンロならいい具合に焼けそうだ。』
なるほど。ステーキにするのか。だが犬肉って血抜き程度で食えるのか?
網の上で焼かれる肉。すでに部位ごとに分解されているので忌避感は薄い。
こういったジビエ肉は普通に市場に並ぶため、あたりまえの食事なんだろう。
食中毒だけはご勘弁願いたいが。
なんというか、うん。肉だね。という感じの食感と風味を味わい、再び走り始める。
久しぶりに肉の塊を食べたからか泥下の蓮のメンバーが鳴らす
機嫌よさげな鼻歌が無線から聞こえてきた。
装填も照準も全部手動で自動車から当てるのは映画じゃ無い限り無理。
あとハンドルぐるぐる回すガトリング砲はあるかもしれない。




