NEAの新人
仕事が終わりボロアパートに帰り着いた。外に付けられたセキュリティもへったくれも無い郵便受けからいくつか取り出し、家の中に入ってから一つ一つに目を通した。その中に見慣れない封筒があり不審に思って差出人を見ると「NEA日本支部」と書かれていた。封筒の上部を破り中から手紙を取り出すと、
「二〇三二年度NEA日本支部入隊試験合格通知書
相模凉様。あなたはNEA日本支部入隊試験に合格しました。門番第三管理室からNEA日本支部への移動手続きを完了してください。初日の出勤は四月二十日です」
と書かれていた。一瞬驚いたが、どうやら偽物ではないようだ。手紙に書かれてある通り、現在所属している門番第三管理室に電話し移籍手続きを行った。NEAの試験に合格したことを上司に伝えると初めは冗談だと勘違いされたが、本当だと言うと驚きながらも「おめでとう。気をつけて頑張れよ」と励ましてくれた。
翌日。第三管理室に最後の出勤をした。自分のデスク周りを片付けていると、上司や同僚達が集まってきた。そしてとてもお世話になった第三管理室の室長が笑顔で立派な花束を渡してくれた。
「合格おめでとう。向こうでも元気で頑張るんだぞ」
「室長、ありがとうございます」
「相模、今までお疲れ! まさか俺より先に合格しちまうとはな」
「竹内、今日までありがとう。向こうで待ってるよ。と言ってもNEAのオフィスはここの三十階にあるけどね。だから暇な時顔見せに来いよ」
「おう」
第三管理室の中は拍手とおめでとうの声で埋め尽くされた。
「皆さん今まで本当にありがとうございました。では今からNEAの方に初出勤してきます!」
ダンボール箱にまとめた荷物と花束を持ち第三管理室を出た。そしてエレベーターを待っていると後ろに二人の少女が現れた。年齢は二、三個ほど下だろうか。二人の顔はよく似ており、背格好も同じで服装もお揃いのお嬢様のような服なので双子だと推測した。
「あなたは相模凉ね」
「そうだけど」
「年下とはいえ私達はあなたの上司よ。タメ口はよしなさい」
「え、君達……お二人もNEAの隊員なんですか?」
「隊員ではなく“軍人”と呼んでくれると嬉しいわ。エレベーターを待ってるようだったから案内しに来たの」
「ありがとうございます。でも僕オフィスの場所覚えてますよ?」
「そうじゃなくて」
何かと思うと双子の一人がもう1人の手を握りながら、僕の手首も握ってきた。その瞬間周りの景色が変わった。突如現れた大きな窓から外の景色を見ると全てを理解した。
「ここがオフィス……」
巨大なビルの最上階のため高層ビル群でさえ見下ろすことができた。落ち着いて辺りを見渡すと広い割にはデスクが八つバラバラに置かれているだけだった。内装もコンセプトが定まっておらず落ち着きのない様子だった。それと同じように双子を合わせて老若男女六人がそれぞれのことをしていた。デスクでパソコンを触っている外国人、座禅を組み周りにあるものを宙に浮かせているおじさん、口喧嘩している男女など、まさに落ち着きのない様子だった。
戸惑いながら様子をうかがっていると、座禅を組んでいるおじさんが目を閉じたまま喋り始めた。
「陽子君、玲子君、案内ご苦労様。君が相模君か。私は新島蒼吾、NEAの最高責任者……まあ簡単に言うとボスだ。これからよろしく」
おじさんは微動だにせず自己紹介を終えた。
「君の席は窓側の奥だ。移動したければ自由に動かしてもいい」
「わかりました」
「後のことは新人教育係の紅井君に任せよう。紅井君いい加減口喧嘩を止めなさい。荒田君も挑発するんじゃない」
「やだなあボスぅ、僕はただアリスちゃんに構ってるだけですよー。アリスちゃんもそんなピリピリしないの♡」
眼鏡をかけニヤついた表情がいかにも胡散臭い青年が言った。
「あのねえ。あんた私が言ってることしっかり聞いてる? 私はニークを駆除する仕事をしていながら職場でニークを飼うのはおかしいっていってるの」
「おかしいってなんだよ〜。ほら可愛いじゃん」
青年は怒っている男らしい表情の少女に飛び跳ねている毛むくじゃらのマリモのような生物を見せつけた。
「可愛くない! 大体放し飼いは不用心すぎるわ。街に逃げたしたりしたら国際問題なんてレベルじゃないのよ!」
「逃げ出したりしないってー。なートム?」
青年は飛び跳ねている謎の生物にトムと呼びかけた。
「とにかく職場で飼うのは止めなさい!」
「あれ、もしかしてアリスちゃん怖いんじゃないの? キャー可愛い。泣いちゃう? 抱きしめてあげようか?」
「荒田君それ以上は止めるんだ」
ボスの新島はそう言いながら宙に浮かせていたものを全て青年の方に向けた。
「君の憑依と私の攻撃どちらが早いか勝負してもいいだろう。しかし後者の方が早かった時は君の体は穴だらけになるが」
「ただちに辞めます」
青年は背筋を伸ばし敬礼をした。
「それじゃあ紅井君、相模君に色々教えてあげなさい」
ボスがそういうと少女は目の前に来て話し始めた。改めて顔を見ると凛としておりハーフのような顔立ちだった。さっきまで赤かったはずの肩の上まで伸びている髪はいつの間にか黒くなっていた。服装は身軽だがどこか軍服のようにも見えた。
「私の名前は紅井アリス、あんたの教育係よ。また骨抜きみたいな男が入ってきたみたいだけど、容赦はしないわ。覚悟しとくように」
「はい」
「まあ、知っていると思うけど改めてNEAについて説明するわ。NEA、正式名称ニーク専門軍はその名の通り扉の解放により抜け出したニークを駆除する専門の軍隊よ。一般市民の目に付く前に駆除しなければいけないから迅速で正確な判断と行動が重要よ」
「得意分野です」
「それならいい。あとの説明は追々説明するわ」
「わかりました」
「ああ、言い忘れていた。ようこそNEA日本支部へ」




