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それは遥か遠い昔、まだ地球が生まれる以前の話。

とある銀河のとある星に一人の青年が居た。


その星では魔法と錬金術の研究が盛んで、現代の地球よりも文明が発展していた。


その青年は類稀な魔力量と才能を持ち、様々な魔法を習得し、更に錬金術を学び研究をし、数々の功績を残して莫大な富と名声を手に入れた。

しかし彼の目指していた物は遥か高みにあった。


錬金術師の最終到達点『賢者の石』の精製である。


過去の偉人達の文献や資料を読み漁り、昼夜問わず自宅の研究室に彼は篭り続け、やがて人々は彼の事を忘れて行った。


そんな自身の研究にしか興味の無い彼の生活を支える一人の女性が居た。


彼が錬金術を学び始めた頃に、とある研究室に居た彼女は彼の才能に心酔し、資料集めや実験の助手から家事全般をこなした。


数年が経ち、少しづつだが成果のある日々。

彼女は時折留守にしたが、食事の用意はされていて数日すると帰ってきた。


更に時は流れ、遂に彼の研究は実を結ぶ。

この喜びを分かち合おうと彼は屋敷中を探したが彼女は居なかった「暫く留守にします」と書置きを残して。


彼が彼女の帰りを待ち、数日が経った。

屋敷の呼び鈴が鳴り彼女かと玄関に迎えに行った彼が見た物は、兵士達が運ぶ棺だった。


彼は知らなかったのだ、今まで稼いだ富は既に使い切っていて、彼女が魔物を倒して日々の糧を得ていた事を。


棺に眠る彼女を見て、彼は失った物の大きさに嘆き悲しみ苦しんで周囲に有る物に当り散らし暴れ泣き叫んだ。

そして賢者の石を研究室から持ち出し、彼女の胸の上に置き、その上に自身の手を沿え魔力を流して行った。


柘榴の実の様な赤い色をした賢者の石が光を放つが彼女は動かない。

彼は賢者の石に願いを叫んだ。


「私の全てをくれてやる!私に力を貸せ!賢者の石よ!!」


彼の心からの願いに賢者の石は応え、周囲を光が埋め尽くす。

彼の膨大な魔力を、そして彼自身を取り込み、賢者の石が発する光に触れた物全てを取り込み光は拡大して行った。


やがて光が収まると、そこには魔力以外何も無い暗闇の世界が広がり、賢者の石だけが淡い光を放っていた。

惑星丸ごと一つを取り込んだ賢者の石が周囲の魔力を取り込み、やがて人型を成して行く。


こうして彼は賢者の石を核とした魔力精神生命体へと変化し、取り込んだ物の知識『星の記憶』を手に入れた。


彼は先ず周囲の魔力から『工房』を作り、取り込んだ彼女のDNAマトリクスから彼女を再生させた。


しかし彼女の肉体に魂が宿る事はなかった。


星の記憶を持ってしても死者を蘇らせる事は出来なかったのだ。


だが彼は諦めなかった。

魔力精神生命体となった彼には幾らでも時間が有ったからだ。


工房に篭り、星の記憶から『システム』を構築し、魔力から様々な物を創り出した。

その過程で物質世界でしか魂は生まれない事が判明し、彼は箱庭を用意した。


彼が箱庭に降り立つと、自身を構成する魔力が拡散して行くのを感じ、自身のDNAマトリクスから自分の身体を創り出そうとしたが、拡散して行く魔力を押さえる事が出来ず叶わなかった。


工房に戻った彼は、星の記憶と箱庭のデータを検証し、元の体では膨大な魔力を持つ今の自分を受け入れられない事を知ると、自身を受け入れられる身体を創る為の研究を始めるのだった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *



これが取り込んだシステムに封印されてた奴の記憶だ。

俺が失った記憶を探していた時に偶然見つけたのだが、俺には奴が未練がましい愚か者だとしか思えなかった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *   *



転移した俺達は王都ベルトラの北側に少し行った所に立っていた。


「・・・ここは・・・・・初めて王都に入った前日に野営した所ですかな?」


「・・・ああ・・・・・あの日、全てが終わったら、ここから始めようって決めてたんだ。今乗り物用意するからちょっと待ってな」


「え?何時もの車で帰るんじゃないの?」


「あの~嫌な感じしかしないんですけど・・・・・」


俺はニヤリと笑うと魔力を練成しある物を創り出した。

最早材料など必要ない。システムを掌握した俺は、魔力さえあれば生命体以外何でも作り出し、操れる様になっているのだ。


「・・・・・な、何ですかこれは?・・・・・乗り物だと言うのに車輪すら付いていない・・・椅子は付いている様ですが・・・なんとも奇妙な・・・・・」


「主様!私早く乗ってみたい!何処に座ったらいいの!?」


「車の時と同じでライラは前、アレスとタニアは後ろだ」


「あ、あたしは歩いて帰りますぅ・・・・・何て・・・ダメなんですよ・・・ね?」


「タニアよ諦めよ。主殿が許す筈がない」


俺は操縦席に、ライラは隣に嬉々として乗り込み、アレスは嫌がるタニアを引き摺って乗り込むと扉を閉めた。


「・・・ククククク・・・いやぁ~、一度操縦してみたかったんだよね~戦闘ヘリ!」


「いぃやぁ~!降ろして~!アレス様、離して下さい!絶対やばいですって!」


「タニア、暴れんな。離着陸の時が特に危ないんだからな。行くぞ、エンジン始動!」


ローターが回転し始め、ヒュンヒュンと風を切り回転速度を上げて行く。


「よお~し、テイクオフ!」


十分な回転速度に達し、激しい風切り音と共に砂塵を上げながら上昇して行く。


「ひゃぁ~!すごい!すごい!どんどん地面が遠ざかって行くよ!」


「高度はこんなもんかな・・・高過ぎると目立たねぇし。それじゃあ凱旋と行きますか!」


操縦桿を傾けて王都へ向けて進んで行く。

ワーグナーでも流すかと思ったが、戦闘する訳じゃないしと止めておいた。


王都上空を縦横無尽に飛び回り、野次馬が増えた所でミサイルを発射。

色取り取りの花火が咲き乱れ、紙吹雪が舞い落ちる。


三十発のミサイルを撃ち終え、大歓声の中王都を一周した後に城の天辺に着陸しヘリを放置。ミサイルを発射した時点で気絶したタニアを叩き起こして王城北門前に転移した。


この日から王都ベルトラでは、パンドラ、マークス、ケイオスが北門から王都に入った事から『英雄は北方より現れる』と言う諺と共に、玄を担ぐ旅商人や冒険者が態々遠回りして北門から入る様になった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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