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翌朝から教国から南の島へと移住を開始。
島の中央を西から東へと水路を引き、更に南北へと延ばして行き要所に溜池を作り、それに合わせて畑と家を設置して行った。最初に設置した家は王都のハンス商会に繋がっている転移陣の建物に取替え、代表の年長者に必要な物が有れば俺かハンス商会に遠慮無く言う様にと言って鍵を預けた。
昼前には移住も終わり、皆に昼食を振舞った後ベルトラン王国へ飛んだ。
王都ベルトラの北地区はお祭り騒ぎだ。北門から王城へと続く通り沿いは人々で埋め尽くされ、まもなく遣って来るであろう男を今か今かと待ち望んでいた。
その男はこの国で最も強く、長年北砦を守りこの国を平和へと導いた最大の功労者である騎士。
救国の英雄の孫『王家の懐剣』マークス・ガーランド男爵。
北方防衛総隊長の任を終え、騎士団長に就任する彼を一目見ようと王都中の人が詰め掛けた。
そして一騎の騎馬が城門を抜けて彼の帰還を知らせる為王城へと向かうと喧騒は止み、人々の目は城門の先に見え始めた一軍へと注がれた。
やがて一軍の先頭が一つ目の門を潜り、二つ目の門を潜り王都内に入った瞬間に割れんばかりの歓声が沸き上がった。
勿論先頭はマークス・ガーランド男爵その人である。
四百五十人もの兵を連れて王城へと向かう堂々たるその様は正に『英雄の凱旋』で、集まった人達は彼等に感謝と労いの言葉と盛大な拍手を送った。
平民街の中央通りを南へ進み貴族街へと続く門の前まで進むと門が開き、そこには一人の男が立ちはだかっていた。
「よう、お帰りマークスさん。まさかここまで人気が有るなんて思わなかったよ。陛下よりあんたが国王遣った方が良いんじゃねぇの」
「パンドラ殿、冗談でもそう言う事は言わないでくれ。私を担ぎ上げようとする貴族を消さねば為らなくなる」
「おお怖っ。流石『王家の懐剣』と言われるだけの事は有るな。宴会の用意して待ってるから早く帰って来いよ」
「ああ、それは楽しみだ、出来るだけ早く帰宅する。陛下達に引き止められたらパンドラ殿の名を出すとしよう」
マークスの横に付いて歩きながら話をして顔を見合わせて笑い合い、一足先にガーランド家へと戻って宴会の支度をして、ケントとライラ達を迎えにハンスの村へ飛んだ。
夕方になりマークスが帰宅。陛下や大臣達に晩餐会に呼ばれたが、俺の名前を本当に出して帰ってきたそうだ。
例によって使用人を含めた館の全員が食堂に集まりマークスの帰宅を喜んだ。
宴会中に空いた皿を片づけているジェイムスが俺に話し掛けて来た。
「本当に貴方の言った通りに・・・・・パンドラ様、有難う御座います」
「ん?俺なんか言ったっけか?」
「はい、『絶対にあんな砦なんぞ必要ない国にしてやる』と。そうなればお館様も帰って来れると、確かに仰いました。本当に・・・本当に有難う御座います」
「ああ、そんな事言った様な気がするな。まぁ気にすんなって、俺達も世話に為ってんだ。御互い様だろ」
俺の言葉にジェイムスは深々と頭を下げた。
宴も終わり皆が眠りに付いた後、マークスに呼ばれ執務室へと案内された。
「まぁ座ってくれ、折角の機会だから少し話がしたくてね。ここを出たと聞いたし、忙しい君を捕まえるのは骨が折れそうなのでね」
「そうか?ハンス商会に行けば捕まえられると思うけどなぁ。それで、何の話だい?」
「先ずは礼を。この国を救った君は褒美を断ったそうだね、だからせめて言わせてくれ。有難うパンドラ殿」
「何言ってんだ、礼を言うのはこっちの方だ。あんたのお陰で余計な犠牲を出さずに済んだんだ。有難うマークスさん」
「・・・・・まったく・・・そんな君だから皆力を貸したのかもしれんな・・・・・さて、本題に入ろうか・・・息子に・・・ケントに何が有った?いや、何をした?」
「・・・・・別に何も・・・何て誤魔化せる相手じゃねぇか・・・・・ふぅ・・・話さずに済めばと思ってたんだけどな・・・・・マークスさん、あんたの爺さん『救国の英雄レイル・ガーランド』の瞳は何色だった?」
「・・・黒だった。ケントは祖父の血を濃く引いた様だが、それが関係有るのか?」
「レイルの親とか祖先の出自は?何か聞いた事は無いか?」
「祖父は幼い頃に孤児になって親代わりの騎士に育てられたと聞いたが、それが?」
「・・・・・調べ様も無い・・・か・・・・・落ち着いて聞いてくれ。おそらくだが、あんた等の祖先には日本人・・・・・消息不明になった使徒が居たと思う。そして・・・ケント君は神の寄り代の可能性が高い」
「・・・・・それで対策を・・・と言う訳か・・・・・」
「ああ、ケント君に俺の魔力を・・・・・闇属性を付与した。今の所は成功しているがこれで防げる保証も無い・・・・・勝手な真似をしてすまないと思っている」
「いや、君の事だ、そうしなければ為らなかったんだろう?それに、息子を助けて貰ったのだ礼を言うべきだろう」
「俺は俺の復讐を成す為に行動しているだけだぜ。奴に対する嫌がらせの為にあんたの息子を危険な目に合わせたんだ、礼なんて・・・・・」
「ああ、解った解った。そう言う事にしておけば良いんだな・・・・・まったく借りばかり溜まって行くな」
その後は二人で他愛の無い話をして笑い合い、就寝まで穏やかな時間が流れた。
翌日早朝、王都を三十人程の二つの部隊が東西の門から誰に見送られる事も無く出発した。
項垂れて東へ向かうのは元騎士団副団長のウェンビー子爵。
恨みがましく城を睨み西へと向かうのは元騎士団長ミゲイル・レンフォール伯爵。
二人共王都の屋敷と財産の2/3を没収された上での左遷であり、更に自分の率いる部隊内に宰相の放った諜報員が入り込んでいる事を彼等が気が付く事はなかった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




