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教国南端の街に着くと収納から四輪自転車を出した。

ここの所転移ばかりだったので久しぶりだが、四輪自転車は窓ガラスも付いて更に快適に為っている。


「これがホレスの言っていた、とんでもない乗り物ですか。王都中を走り回って騎兵に追いかけられたと言う・・・・・」


「ははは!それほんとかよ!あんた結構やるな!こいつは楽しめそうだ、さっさと行こうぜ」


二人を乗せてリゲルの案内で西へと向かう。途中で街道を離れ脇道を北西に進んで行くと周囲の木々が深くなって行く。更に進んで行くと馬車一台がぎりぎり通れる道になり、その先に集落・・・と言って良いのか解らない位小さな農村が有った。

周囲の柵は低く畑は有るが小さく数も少なくて水路も無い。集落の中心に井戸が有り、そこから水を汲んで畑に撒いているのだろう。家と言うか小屋は十軒程しかなく、廃村寸前と言った感じだ。


集落の入り口で車を降りるとリゲルが近くの畑に居る人達に声を掛けていき、声を掛けられた人達が別の畑の方に向かって行った。


「パンドラさん、ハンスさん、皆を集めてくれるから井戸の所に行こうぜ」


井戸の傍にテーブルセットを出してお茶をしていると、十五人程の男女が遣ってきた。その中の年長者らしき男が恐る恐ると言った感じで話しかけてきた。


「リ、リゲル君・・・この人達かい?私達に用が有るって言うのは・・・・・」


「ああ、この人達って言うか俺達だな。簡単に言うと、もっと良い環境で仕事をしたくないか?って事なんだけど・・・どうかな?」


「そ、それは・・・・・確かにここは良い環境じゃないよ、だけどここまでするのに何年も掛かったんだ。今更やり直すなんて考えられないよ」


「でも、ここは国の援助も打ち切られて開拓も止まったじゃん。それでも税金は取られてるんでしょ?取り敢えずこの人達の話を聞いてよ、ハンスさん、パンドラさん、あんた等の出番だぜ」


「始めまして。ベルトラン王国でハンス商会と言う商会の会頭をしておりますハンスと申します。此方の方は私共の協力者でパンドラと申します。簡潔に言いますと皆さんには私の商会員となって貰いまして、移住先で作物を作って貰うと言う事なんですが如何でしょうか?」


「ハンス、それじゃぁ簡潔すぎだし、そいつらに利点が伝わらないだろ。え~っと、衣食住が保証された上に税金払わないで良い魔物の居ない安全な場所で作物を作らないかって話なんだけど、どうよ?」


「はぁ?!あんた何言ってんだ?!馬鹿にするのもいい加減にしろよ!そんな旨い話が有る訳無いだろ!リゲル君、君には世話に為ったが金輪際ここに来ないでくれ!」


「あ~やっぱり信じらんないか・・・・・だがな・・・有るんだよ本当に。全員其処を動くなよ・・・・・転移魔法陣・・・起動!」


俺達を含む村人達の足元に魔力で転移魔法陣を描くと起動させて南の島へと全員で転移した。

村人達は転移酔いでふらふらしながらも周囲を見て景色が変わっている事に驚き、この事態を引き起こした俺を警戒していた。


「皆さん俺様の島へようこそ。ここは教国の遥か南に有る無人島だ。ここに皆を迎えたいと思っている。何処の国にも属していないから税金なんて払う必要が無い、夢の様な土地で好きなだけ作物を作れるって訳だ。但し条件があって移住者にはハンス商会の商会員になって貰うけどな」


「そ、それは安い給金で扱き使われると言う事だろう!それじゃ税金が無くても変わらないじゃないか!」


「あ~それは違いますよ、うちの商会員として貰う給金は最低保証なんですよ。不作等で生活が出来なくなるのを防ぐ為の物で頑張ればその分給金も増えます」


「え?・・・あの・・・・・それじゃ作物が全滅したとしても?」


「ええ、ちゃんと給金は支払いますよ。但し収穫した作物はうち以外の商会に卸す事は出来なくなりますし、今までより安い卸値にはなります。それでも税金を払っていた頃よりは確実に実入りは増えますよ」


「あ、あんた何考えてんだ・・・・・移住して直ぐに収穫できる訳じゃ無いんだぞ?!土作りから始めて来年収穫できれば良い方だ、下手すりゃ数年掛かるってのに俺達に給金払い続けられるのかよ」


「その心配はいらねぇよ。今有る畑を土ごと運んでやるから問題ない・・・こんな風にな」


地面を靄で四角く切り取った後、元に戻してやると村人達からゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。


「い、家は!?家や農具なんかも移動してくれるのか?」


「家って・・・あんな掘っ立て小屋じゃなくてもっと良い家用意してやるって。あ、そうだ、ハンスの村に行こう。あそこを見たら皆信用するだろ」


「ああ、そうですね。皆さん次に移動する所はベルトラン王国にあるハンス商会の村です。存分に見学して行って下さい」


「あ、俺の眷属の魔族が二人居るけど無害だから脅えたりしない様にな。それじゃ行くぞ・・・・・転移魔法陣・・・起動!」


全員を連れてハンスの村へ飛ぶと連れてきた皆に自由に見て廻る様に言い、俺はケント君に明日はマークスが帰ってくるから夕方には帰って成長した姿を見せてやる様に告げた。


夕方になり五万人規模の都市に匹敵する広大な土地を夕日が茜色に染め上げる。家畜達は畜舎へ村民達も自宅へと帰り、各家からは夕食の支度や風呂を焚く煙が立ち上る。

この平和その物の光景が出来たばかりの開拓村だとは誰もが信じられなかった。


全員を連れて教国の集落へと戻ると、村人達は今見てきた出来たばかりの村と自分達の集落の差に戸惑いと落胆を隠せなかった。


「どうだった?何て聞くまでも無いよな。まぁそう落ち込むな、あんた等は運が良い。何せあの村と同等以上の生活が出来る可能性が有るんだからな」


俺の言葉に皆が顔を上げて此方を向く。


「だってそうだろ?あそこの村はベルトラン王国内だから税金の分実入りは減るんだぜ。だが俺の島は違う。それに作る作物は常に不足している調味料だ。大量に作ったってあんた等の孫の世代位迄は値段は下がらねぇよ」


「そ、それはそうかも知れないが、あの島から出られなければ金なんて有っても意味が無いだろう!」


「その心配も要らない。島と王都のハンス商会を転移魔法陣で繋ぐから何時でも王都に遊びに行ける。これはさっき見た村でも同じだ」


「お、俺は行くぞ!畑ごと持って行けるなら今より生活が悪くなる筈がない!水はあの川のを使って良いんだろ?!」


「勿論だ。って言うか世帯毎に農地の区画整理をして水路と溜池も作るぞ、さっき見た村がそうだったろ」


この台詞が引き金となって全員が移住を決意し、翌朝から第一次移住が開始。その後、第二次、第三次と順調に移住が完了し、ハンスの村に続く巨大農村が完成した。島内限定だが三輪自転車と収納鞄を貸し出して作業効率を上げ、二年後には島の面積の2/3に当たる全ての畑の作物が収穫出来る様になり、ハンス商会は一気にベルトラン王国最大の商会へと伸し上がるのだった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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