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王都ベルトラに朝日が昇る。
周囲の建物より一際高い建造物が日の光を浴びて窓ガラスが光を周囲に撒き散らし西へと長い影を落とす。
この世界では有り得ない建築技術で作られた六階建ての店舗がその全容を現して行く。
見た目は木造建築だが内部は純鉄を使用した鉄骨造で、その周囲を圧縮木材で覆い、樹液から作った天然樹脂塗料で火災に強く、木目を生かした仕上がりになっている。外壁厚は20cm窓ガラスは厚さ5cmの強化ガラスを使用と多少の事ではビクともしない造りとなっている。
二階と三階の間にある看板は純鉄で一文字ずつ立体に作られ、日の光を反射して表通りの路面に「パンドラの箱」と逆さ文字となって描かれていた。
開店前、表通り側の窓の前に店員達を集めて朝礼をした。
「おはよう諸君!対にこの日が遣って来た!表を見ろ!噂を聞き付けた亡者共がこぞって遣って来ている!本日より此処は戦場と為るだろう!だが心配はいらない!なぜならば諸君らの血の滲む様な研修の成果を見せる時が来たのだ!こちらには王国公認と言う免罪符がある!俺達がこの店の規則だ!従わない奴は例え貴族であろうとも客ではない!遠慮は要らん、敵対する物は排除せよ!日没を営業終了とし、それまで客を捌けば俺達の勝利だ!」
軍隊宜しく大げさな身振り手振りで演説する俺に玄田は苦笑いしながら「ノリノリっすね」と言い、「はい!」と元気よく返事をする店員達に一つ頷き入り口を開けて扉の下に楔を入れて固定する。
「良し!総員戦闘配置に付け!営業を開始する!」
店を出て階段を下り表通りに集まった人達に声を掛けた。
「御集まりの皆様!ようこそ御出で下さいました!『パンドラの箱』只今より営業を開始致します!但し!店内の規則には従って頂きます様お願い致します!」
店内に戻って行く俺の後に付いて集まっていた人達が店内へと入って行く。
店内に入った人達は皆一様に唖然とした表情で後ろから来る人達に押される様に奥へと移動したが、ソワソワと周囲を見回すばかりで如何したら良いのか解らないと言った感じだ。
店内は天井と腰壁が白く塗られていて柱は腰壁より上は鏡張りな上、東、南、西側の柱と柱の間は全てガラス窓と一日中陽光が入り、ほぼ照明要らずとなっている。
これだけでもこの世界では有り得ないと言うのに、並んでいる商品が見たことも無く何に使うか解らない物ばかりなのだ無理もない。
「皆様どうぞ遠慮なさらず解らない事は店員にお聞き下さい。なに、恥ずかしい事では有りません。何しろ今までこの世界には無かった物ばかりなのですから解らなくて当然なのです。そうですね・・・・・たとえばこれは缶詰めと言って調理した食品が入っているのですが、開封しなければ半年以上持つ保存食です」
「こ、これが保存食?なぁあんた、こいつに『鳥の照り焼きって』書いてあんだけど料理なんだよな」
「ええ、そうですよ。奥の食堂でも食べられますが・・・・・そうですね一つお開けしましょう・・・カシュ・・・・・どうぞ食べてみて下さい」
空けた缶詰の中身をフォークに刺して数人に試食させた。
「う、旨めぇ・・・・・何だこりゃ・・・鶏肉ってこんなに旨いもんだったのかよ・・・・・なぁ、こいつは本当に半年以上持つのか!?」
「ええ、封を開けなければ大丈夫ですよ。利用法としては家の備蓄以外に野営時や時間の無い時にサッと食べられると言った利点もあります」
「こ、こいつがあれば野営で不味い干し肉を齧る必要が無くなるのかよ・・・・・」
「勿論欠点も有ります。鉄で出来ているので数を持ち運べば重くなりますし嵩張ります。あ、空いた缶をお持ち戴ければ相場で買い取りますよ」
俺の説明を聞いて大量に抱えて行こうとした客に声を掛けた。
「お客様、そちらの商品はそこに書いてある様にお一人様一種類三点までとなっておりますのでお戻し下さい」
「な、良いじゃねぇか!金なら払うんだ文句はねぇだろ!」
「店内規則を守って頂けない方は当店ではお客様とは認めません。例えそれが国王陛下でもです。ご理解戴け無いのでしたら貴方に売る商品は御座いませんのでお帰り下さい」
店内の彼方此方で似たような光景が起こったが店内を回る兵士達のお陰で暴れる奴は出なかった。
「何だこれは!これを作ったのは何処の鍛冶師だ!教えろ!」
調理器具を置いて有る一画で騒ぎが起こったので対応にまわる。
「お客様、他のお客様の迷惑になりますので大きな声は出さない様願います。店内にある商品は全て私が作った物ですが何か問題でも?」
「問題なら大有りだ!どれもこれも見た事の無い金属だ!鉄の様で鉄で無い・・・・・何なんだこれは!」
「大きな声は出さない様にと申しましたが・・・・・それはステンレスと言う合金で基本的に錆びないので調理器具に向いているんですよ」
「さ、錆びない・・・だと・・・・・そ、それではまるで金の様ではないか!それが鉄と変わらない金額で売られているなど信じられん!」
「別に信じて頂かなくても結構です。それから、基本的にと言ったでしょう?錆びた鉄と一緒に置いておくと錆が移りますが、それ以外では先ず錆びません」
「へぇ~それって凄い事なんでしょ?だったら試しに買ってみる価値有るわ~。ねえ、このミートチョッパーって何なの?調理器具なのよね?」
「ええ、そうですよ。これは上から肉の塊を入れてハンドルを矢印の方向に回すとこちらから挽肉になって出てくるんです。今までの様に包丁で細かくなるまで叩き続けるといった手間が無くなる便利な道具です」
「え~でも、挽肉なんてわざわざ作る様なもんじゃないでしょ」
「挽肉に野菜とか色々混ぜて調理するんですよ。肉の消費を減らせた上に野菜も取れて家計にも身体にも優しいですよ」
「あはははは・・・上手い事言うわね。旦那に相談してみるわ」
「他にも便利な調理器具が有りますので見て行ってください。奥の食堂では今迄に無い料理を沢山用意して有りますので、良かったらそちらもご利用下さい」
「すみません、ハーグス家の使いの方がいらっしゃいまして、オーナーに取り次いで欲しいと」
店員の一人が耳打ちして来たので対応する事に。
「御忙しい所失礼致します。ハーグス伯爵様に開店祝いとして売り上げに貢献して来る様にと仰せ使いまして、近々新しい料理人も参る事ですし何か良い物は御座いませんか」
「おお!宰相様の使いの方ですか!ようこそ御出で下さいました!宰相様にはお気遣い有難う御座いますとお伝え下さい。そうですね~宰相様なら各種酒類とこちらの新しい調味料などは如何でしょう。あの料理人ならば使い方を存じておりますし問題ないかと」
ウィスキーにブランデー、ビールと日本酒に加え味噌、醤油、ウスターソースを勧めると全てを購入して帰って行った。
開店祝は口実で酒を買って来いって言われたに決まっているが、宰相と知り合いと言う事実が周知されれば王国公認にも真実味が増すので利用させて貰った。
特に問題なく行きそうだと思っていた時・・・・・それは遣って来た・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座います。




