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ガーランド家へ帰ると中庭でライラとケントが稽古をしていたので暫く見学していたんだがちょっと気になったんで口を挟んでみた。
「なぁ・・・ケント君はライラに勝ちたくないのか?」
「え?それは何時かは勝ちたいと言うか追い付きたいですけど、今の僕じゃ足元にも及ばないですよ」
「ああ、それじゃぁダメだ。何時までたっても追い付きゃしないし人並か少し強い位にしかならないぞ」
「な、何がダメなんです?!毎日真面目に稽古をしているだけじゃダメなんですか?!」
「ああ、ダメだな。『何時かは』とか『今の僕じゃ』なんて言ってる様じゃ何時まで経っても追い付きゃしねぇよ。『何が何でも』とか『どんな手を使ってでも』勝つ位でないと無理だ。『稽古だし』『木剣だから』当たっても『死なない』し負けても良いんだろ?」
「そっ、そんな事・・・・・無い・・・です・・・・・・・」
「ライラはさぁ凄く強いだろ。でもな、ほんの数ヶ月前は君より弱かったんだぜ。毎日俺に言われた事を動けなくなるまで続けて、複数の魔物の相手をして今の強さを手に入れたんだ。今のケント君に足りないのは稽古じゃなくて心構えだと俺は思うぜ」
「・・・・・・・・・・」
「そうだな・・・・・暫く剣を置いてみたらどうだ?そもそもライラじゃ強すぎて目標としては漠然としすぎてるせいもあるだろうしな。丁度いい相手を知ってる、会いに行って見るかい?」
「・・・・・行きます!連れて行って下さい!」
「いい返事だ。アイリスさんの許可が取れたら連れて行ってやろう」
ケントが屋敷に走って行き暫くするとアイリスさんと戻って来た。
「パンドラさん、この子の成長に必要な事なのですよね?」
「ああ、今のままじゃ直ぐ壁に当たって小さく纏まっちまう。『救国の英雄の子孫』に相応しい力を手に入れるには暫く此処を離れた方が良いと思うんだ」
「でしたら私に否は有りません。ケント、ガーランド家の男として立派になって帰ってくるのですよ」
「はい、母上。一人前の男になれるよう精進致します」
「あ、別に山奥に武者修行とかじゃないからな。そんなに遠くもないし何時でも会いに戻れるから。行き先は『元魔の森』で、アレスとタニアも居るから心配も要りません。ライラも行くか?アレスの奴結構強くなってるぜ、久しぶりに相手してみるのも良いだろ」
「あら、随分近いのね。タニアさんも居るなら食事の心配も要らなさそうね」
ジェームスから荷物を受け取り笑顔で手を振るアイリスとジェシカに見送られ、転移で開拓地に三人で飛ぶと叫び声を上げながら丸太を担いで走る男が見えた。
「やってるやってる。ケント君、あの馬鹿っぽい奴が今の君に必要な男だ」
「あ、あの人って以前ライラ師匠にやられた方ですよね・・・・・」
「ああ、元聖堂騎士団の白井秋一。魔法も武器も使わない肉弾戦のみの戦闘狂だ」
軽く酷い説明をしながら白井に近寄って行き声を掛けた。
「おーい!白井君!ちょっと頼みがあるんだが良いか!」
「うおおおぉぉぉ!って何だパンドラさんか!げ、ラ、ライラ・・・さんも一緒かよ。そっちの小僧は見た事が有るような?・・・・・まぁ良いか、俺に頼みって何だ?」
「ああ、彼はガーランド家の次期当主のケント君だ。君に彼を預けたいんだが頼めるかな」
「ハッ!冗談じゃねぇ。貴族のボンボンなんか相手してる暇なんかねぇよ。俺は一日も早くアレスの代わりになれる様に鍛えなきゃなんねぇんだ、他当たってくれ」
「あ~そうか~そいつは残念だ~お前にも良い話だったんだがな~・・・・・仕方ないアレスにでもやらせるか」
「ちょ、ちょっと待てよ。良い話って何だ!そいつを預かると何が有るってんだ」
「何だよ、嫌なんじゃなかったのか?まぁ教えてやるよ。人に物を教えてやるってのは自分の成長に繋がるんだぜ。知らなかったのか?自分を客観的に見直す事が出来る様になるから冷静さも身に付くし技も洗練されたりするぞ」
「ほ、ほんとかよ・・・・・や、やるぞ、そいつに稽古つけりゃ良いんだな。それで強く慣れるんなら何でもやるぞ」
ちょろいっつーか頭悪すぎだろこいつ。日本に居たら訪問販売とかで借金作るタイプだな。こいつだけはこっちに召還されて良かったのかもしれない等と思いながらアレスとタニアの所に移動した。
「あ、アレス様、ご主人様がいらっしゃいましたよ!ライラ様とケント君も一緒ですね。久しぶりですし休憩にしましょう」
「おお、主殿、今日はお揃いで如何なさいました?」
「よう、ご苦労さん。今日はケント君を白井君に預けに来たんだが、序にライラと手合わせでもどうかと思ってな。そろそろ自分の成長を確かめたいだろ?」
「それは願っても無い事ですが・・・・・ライラ殿、お願い出来ますかな」
「アレスさん随分変わったね。もう全力でやらないと勝てないかも」
俺が二人に木剣と木刀を渡すと少し離れアレスが正眼に構えライラは両手を下げたままで対峙する。
アレスは以前の闘争心が消え、穏やかでいて隙の無い眼でライラを見ていたがフッと笑みがこぼれた瞬間、間合いを詰めて打ち込んだ。
ライラは前に出ながら左手の剣を逆手にアレスの打ち下ろしを受け流そうとし、受けた木剣を折られて左肘に打撃を受けてしまう。だが右手の木剣がアレスの首を捉えていた。
「つ~とうとう貰っちゃったか~。ほんとアレスさん強くなったね」
「いえ、真剣であれば我の剣は弾かれ首を落とされていたでしょう。これで慢心せず更に前へと進めると言う物です。ライラ殿、感謝いたします」
「二人共御疲れさん。タニアはケント君の身の回りの世話を頼むな。アレス、もう暫く此処の生活が続くと思うがよろしく頼む。ケント君あいつは馬鹿だがその分真っ直ぐだ、学べる所は沢山有るからしっかりやると良い。ライラ、帰るぞ」
タニアがアホな事を言い出す前に転移でガーランド家に飛んだ。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




