74
廊下を抜け、中庭の中心にある祠の様な建物の中に入り、長い螺旋階段を下りた先に有る豪華な装飾の施された扉を潜る。
神託の間は6m四方程の広さで部屋の中心に直径3m程の魔法陣が石造りの床に掘り込まれていた。
俺は転移陣の時と同じ様に木の板に書き写して軽く魔力を流し、写し間違いが無い事を確認して収納に仕舞うと、巨大ハンマーを出して床に叩きつけて魔法陣を粉々に砕いて行った。
「良し、こんなもんだろ。辰神は先に上に上がっててくれ、俺は天井を崩落させて埋めちまうからさ」
辰神と入り口へ向かって行くと背後に魔力の高まりを感じ、振り向きながら収納から次元刀を取り出すと光の収束する地点目掛けて一気に間合いを詰め、次元刀を振り抜いて光を切り裂くと後方に飛び退いた。
「ハハハハハ!この間はよくも遣ってくれたな!挨拶代わりだ取っときな!」
切り裂かれた空間が光を吸い込んで行くが全てを吸い込む事は出来ずに閉じてしまい残りが人型を成して行く。
「貴様ぁ!神たるこの私に刃を向けるとは身の程知らずにも程がある!唯では済まさんぞ!必ずや後悔する事になろう!」
「ハッ!後悔すんのはてめぇの方だ!『自称』神!!」
身体強化に魔力を重ね、更に強化した神速を持って追撃に掛かるが光その物の速度で逃げ回る奴に今一歩刃が届かない。
人の身の限界を超えた動きに全身の筋肉が悲鳴をあげ、徐々に動きが鈍って行き、奴に背後を取られる様になった。
「ハハハハハ!どうやら此処までの様だな!所詮は人でしかない貴様に神である私に勝てる道理等無いのだ!」
筋断裂を起こし膝を付いて動けなくなった俺の背後で奴は高笑いをして勝ち誇ると右手を翳す。
俺は肩越しに奴が右手から光を放とうとした瞬間、新たな魔法を発動した。
「奈落.....」
発動の鍵となる呪文を呟くと視線の先1m程の所に直径30cmの漆黒の渦の球体が出現し、奴の放った光が吸い込まれて行く。
転移魔法で空間を捻じ曲げて転移先を指定せずに収納魔法で周囲を固定化した出口の無い渦『奈落』
近づく物は全て吸い込まれ、無限の闇へと落ち続けるだろう。
制御が不完全な為、長時間は持たないが回復するには十分な時間が取れる。
「なっ!何だそれは!貴様一体何をした!」
「馬鹿かてめぇは、何処の世界に手の内教える奴が居んだよ・・・そうそう、こいつは制御が難しくてな・・・ちょっと気を抜くと・・・・・こうなる」
話しながら距離を取とって入り口近くまで行き『奈落』の制御を緩めると闇の渦が徐々に大きくなって行く。
「辰神・・・走れ!!」
周囲を飲み込み肥大していく『奈落』を制御が出来るぎりぎりで押さえつつ辰神と共に階段を駆け上がり、建物から出ると『奈落』を消して建物から距離を取った。
地響きと共に地面が陥没し建物が崩壊して土煙を上げて地中へと沈んで行くと光の粒が天へと上って行く。
俺は光の粒を見つめながら魔力の流れを追った。
「・・・・・チッ・・・捕らえ切れなかったか・・・・・逃げ足だけは早えぇんだよな。辰神、お前には奴がどう見えた?」
「え・・・あ~・・・私には二人共怪物にしか見えなかった・・・と言うか何をしていたのか良く解らなかった・・・・・だが、あいつが神とは思えなかったよ・・・あんたに対する憎悪の塊でしかなかった気がする」
「怪物で悪かったな!まぁ仮にも神を名乗る奴とやりあおうってんだ、怪物にでもならなきゃ相手になんねぇだろ」
「そう・・・だな、確かにその通りだ。私如き凡人では到底太刀打ち出来んよ」
俺達は顔を見合わせると笑い合い教皇の待つ部屋へと向かった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




