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「パ、パンドラ殿それは幾らなんでも無理が有るのではないか・・・・・」


「陛下、この世界と違って俺達の居た世界では宗教は沢山有るんです。俺の居た国、日本では八百万の神と言って神様は万物に宿るもので、良い神も居れば悪い神も居る・・・・・玄田君、同じ日本人なら聞いた事有るだろ?神を名乗って人に憑依したり甘言を囁いて操ったりするのは大抵悪霊だって話」


「あ、あります!動物の霊とか低級霊だって話ですよね」


「それそれ、低級霊とは言わないが厄神の類かもしれん・・・俺は魔族領で冥府の王を名乗る高位の霊体を倒したんだが、物理攻撃は効かなかったし魔法を使って来た。俺はこの手の奴の上位の存在だと思ってる」


「あ、悪霊が神の振りをして我らを謀ったと言うのか・・・・・」


「悪霊かどうかは別としてだ、俺の言いたい事は『見た目だけで判断するな』だ。ここに居る皆は俺の後ろに居る二人を魔族だと決め付けたろ?見た目だけじゃない、あんたら貴族は平民ってだけで見下すが、平民だって凄い奴は結構居るんだぜ。種族や身分じゃなく個人個人で判断してくれ、人族だって悪人は居るだろ」


周囲の貴族達全員がばつが悪そうに俯きながら視線を逸らすと、国王が意を決した様に話し始める。


「パンドラ殿、もう良い十分だ・・・全ては教国の言い成りになり悪戯に自国を疲弊させた我ら王家の責だ・・・・・現時点を持ってベルトラン王国はビブリエ教国との同盟を破棄し魔族への償いと許されるならば同盟を結ぶ事を前提として動く。北方防衛砦の駐屯兵は五十名を残して撤退し東西の国境都市に配備、砦は魔族との交易都市へ作り変える。マークスよ・・・そなたには空いた騎士団長の席を埋めて貰い騎士団と守備隊の再教育を頼む。パンドラ殿、そなたが言い出した事とは言えこれ以上の重荷を背負わせるのは心苦しいのだが・・・・・教国と魔族領への大使の件、頼めるかな」


「お任せ下さい。俺以上に上手く出来る奴なんてこの国に居やしませんって」


「すまんが宜しく頼む。パンドラ殿達は執務室で詳細を詰めるとしよう。他の皆は持ち場に戻ってくれ、後日閣議を招集する」


国王が立ち上がりジェラルドと玉座の後ろに移動し始めると他の貴族達も移動を始め、俺達が国王の後に付いて行こうとした時、背後に魔力の高まりを感じ振り返る。


「全員入り口から離れろ!マークスと玄田は陛下の守りを!急げ!!」


俺の大声に皆が振り替えり立ち止まったが、入り口近くに光の粒が集まり始めると一斉に動き始めた。


「・・・おいおい、こいつは思ったより早い登場じゃねぇか・・・・・」


光の粒が集まり人の形を成して行くと、その膨大な魔力が威圧となって周囲に放たれ俺とマークスと玄田以外が動けなくなる。

人型の魔力の塊、その圧倒的な力そのものは確かに神足り得る存在なのだろう。


「・・・やあ、始めまして皆さん・・・・・依代なしでは長く此方に居られないから早速だが要件を済まさせて貰うよ・・・君、邪魔なんだよね。予想外で予定外・・・だからさ・・・消えて貰えるかな」


そう言って人型の光は右手を翳すと掌から光線を放ち俺の腹部を背後に有る玉座と共に撃ち抜いた。


「ガハッ・・・てめぇ・・・ゴフッ・・・・・よくも・・・・・」


腹を打ち抜かれ仰向けに倒れ床に血溜まりが出来て行く。


「あれ?中々しぶといね。まぁ直ぐに死ぬか・・・それじゃあ皆さん彼無しで頑張ってね」


そう言うと人型の光は徐々に光の粒になり拡散しながら天井へと消えて行った。


「・・・くそ・・・がぁ・・・・・待ち・・・やがれ・・・逃げん・・・じゃねぇ!」


「パ、パンドラさん!大人しくして下さい!誰か!治癒術師を!早く!」


血溜まりの中で血を吐きながら天井に向かって手を伸ばし叫ぶ俺に、玄田が我に返り叫びながら近寄ってくる。


「ッ・・・舐めた真似・・・しやがって・・・・・ふぅ・・・・・ああ・・・治癒術師はいらねぇよ・・・あんの野郎・・・死んだ方がマシだって言う目に遭わせてやる」


むくりと起き上がって靄を展開し、周囲に飛び散った血を取り込むと立ち上がって穴の開いた服を仕舞い、お宝製造で作り直して着替えた序に玉座も直しておく。

近寄ってきた玄田は、俺に掛けようとした右手を上げ口を開けたまま固まり、周囲に居た人達も揃って口を開けて固まっていた。


「よし、これで元通りだ。それじゃ話し合いに行こうぜ」


「え・・・あれ?・・・・・今死に掛けてた様な・・・・・気のせいじゃないですよ・・・ね?」


「ん?ああ、そうだな。だが終わった事だ気にするな。そんな事よりこれからの事を話しに行こうぜ。ほれ、あんた等も仕事仕事」


目の前で次々と起こった事が理解出来ずに困惑している国王の背中を押し執務室に向かう俺達を呆然と見送る貴族達の間で後日、理不尽を撒き散らしつつも取り合えず助けてくれると言う意味合いで「遠くの神より近くのパンドラ」と言う諺が囁かれる様になるのだった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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