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砦を出てから三日目もすると農村がちらほらと見え始め、五日目には王都近くの町が見えたが寄らずに回り込んで王都に向かった。
ここまで魔物の襲撃は殆んど無く、有ってもゴブリン程度と碌な経験値にも為らないので全てタニアに倒させた。と言っても俺が靄で捕まえたのを剣で刺すだけの簡単なお仕事だ。
昼はペダルを漕ぎ、夜は魔力操作の訓練の日々を超え、七日目には王都の城壁が見えてきた。
「ひゅ~・・・流石王都だ城壁だけで何キロあんだよ・・・・・あの城魔王城よりでけぇだろ」
「あ、主殿・・・本当にあそこに参るのでしょうか・・・・・」
「あの・・・あたし心配になってきました・・・・・襲われたりしませんよ・・・ね・・・・・」
「つまんねぇ心配すんな。今日は少し離れた所で休んで王都に入るのは明日にするぞ」
夕方に王都から少し離れた川の近くに車を止めて家を出し、夕食の準備をタニアに任せお茶を飲みながら休憩していると、ライラの元気が無い事に気が付いた。
「どうしたライラ?具合でも悪いのか?それとも王都に入るのが不安か?」
ライラは俺の問いに首を横に振るだけで答えてくれなかった。
「な、なんだ・・・俺には話せない様な事なのか・・・くっ・・・・・これが娘を持つ父親の気持ちって奴か・・・誰だ相手は・・・玄田・・・だな・・・・・あの野郎何時の間にライラに手ぇ出しやがった・・・・・アレス、ちょっと北砦潰して来るわ・・・・・十日程ここで待っとけや」
「な、何を言っているのですか主殿。そのような事有る訳無い出しょうに・・・そうであろうライラ殿」
「何馬鹿な事言ってるんですかご主人様。あたし達が他の人好きになるとか有り得ないですよ」
タニアが夕食を並べながらそんな事を言ってきた。
「まさかタニアに馬鹿呼ばわりされる日が来るとは・・・俺はもうだめだ・・・・・死ぬ前にライラと話がしたかった・・・ガクリ・・・・・」
「・・・・・む~・・・主様は色々大変だから我侭言って困らせたく無いだけです」
「なんだ~ライラの我侭なら何でも叶えちゃうぞ~言ってみ~世界征服で良いか?取り敢えず魔王殺して教国も更地にしてくるぞ~」
「そんなの要らないです・・・・・最近主様が背負わせてくれないから寂しいだけです・・・・・」
「お~可愛い事言ってくれるじゃないか!よ~しちょっと待ってろ!売る積もりで取って置いたブラックベアの革使ってバッグ作ってやるからな!」
真鍮で四角く外枠を作りブラックベアの革を張り合わせ宝箱型のリュックを作った。蓋の部分はファスナーで開閉、内部に次元収納を付与した自慢の一品である。
「わ~かわい~・・・ふたの所が歯みたいで開け閉めすると食べちゃうぞ~って感じで・・・・・主様ありがとう!」
「気に入ってくれて良かった・・・ほれ、帽子と予備の短剣と後は水と保存食に傷薬と毒消しも入れとけ」
「ううぅ・・・あたしにも可愛い物下さいよぅ・・・・・せめて服だけでも普通のが欲しいです・・・・・」
「言っただろ、布は足りないって。それにその服だったらちょっと剣で斬り付けられた位なら平気なんだぞ。文句あんなら自分で稼いで買え」
「・・・・・ご主人様から貰うのが良いんじゃないですか・・・もう」
ちょっと拗ねた感じのタニアが配膳を終え夕食に。
少しずつライラのマナーが良くなっていてそれに釣られてアレスのマナーも良くなってきた。
タニアの教育の賜物だろう、王都で材料を手に入れたら何かアクセサリーでも作ってやるか・・・忘れなければだが。
翌日、朝食後王都に向かった。徐々に迫る長大な城壁に圧倒されながらも城門前に車で乗りつけると、今まで見た事の無い動く鉄の塊に衛兵が殺到し、あっという間に三十人程の武装した兵士に囲まれた。
「主殿、だから言ったではないですか・・・途中で降りて歩きましょうと」
「やだね、面倒くさいじゃねぇか・・・おーい、そこのあんた!ちょっとこっち来てくれ!そんなに警戒すんな。こいつは只の乗り物だ」
恐る恐る近づいてくる兵士に北砦で貰った紹介状と委任状を見せると納得したように通してくれた。
「使徒の玄田殿とガーランド男爵の使いの方ですか・・・・・しかし驚きました。鉄の塊が馬車より早い速度で近寄ってきた物ですから・・・・・いや、申し訳ない」
「かまわねぇよ、このまま行っても良いかい?先ずガーランド家に行きたいんだ・・・序に道も教えて欲しいんだけど」
「申し訳ないが騒ぎになるので遠慮して戴けますか。馬車を用意するのでガーランド家にはそちらでお送りしましょう」
「送ってくれんなら助かるよ。よし、皆降りるぞ」
衛兵が用意してくれた箱馬車に乗り、王都の中央通りを南に進む。城壁は二重になっており壁と壁の間には水堀と兵士の宿舎がある。
二つ目の門を潜ると石造りの建物の上に木造の建物が乗っていて平民の住居や商店が並んでいた。
更に進むと石造りの二階建ての大きな建物に変わり中心に有る王城に近づく程金持ちが住む所に為っていて王城までの道程の2/3程に所にも城壁が有り、その先が貴族街になっているとの事。
俺達は貴族街に入って少し進んだ所で降ろされ、此処がガーランド家だと言われた。
「男爵だって言うから戴した事無いと思ってたんだが・・・・・マークスって結構偉いのか?」
目の前に有る家・・・いや、豪邸と言うべき建物は周囲の家の軽く二倍は有り、高い壁と鉄製の大きな門に囲まれていて、門の内側に居る兵士に問い詰められた。
「ここはガーランド家の邸宅だ。貴様ら一体何用だ」
「あ~北砦でマークスさんに王都では此処に世話になれって言われて来たんだけど・・・・・ここで良いんだよな・・・・・」
俺は兵士に紹介状と妻子に宛てた手紙を渡して取り次ぎを頼んだ。
「む・・・・・確かにこれはガーランド家の印だが・・・少々待っていろ・・・・・おい!これを奥様に渡す様に言って来い!」
一人の兵士が手紙を持って走って行き、屋敷の扉から出てきた執事に手紙を渡して何やら話し合った後に戻って来るのを眺めていると、対応してくれた兵士が話し掛けてきた。
「・・・お館様のご様子はどうでしたか・・・・・」
「ん?ああ、マークスさんなら元気だぜ。飯も沢山食べてたし笑ってたしな」
兵士は「そうですか」と言って頭を下げ笑顔を見せた。
戻って来た兵士に案内されて屋敷の扉の前まで行くと扉が開き、執事が「ようこそ御出で下さいました。どうぞ此方に」と言って屋敷に迎え入れてくれた。
広いホールを抜け階段を上がり、三階の最奥にある重厚な扉の前に着くと執事が扉を叩き「お客様を御連れしました」と言うと、中から「通して頂戴」と女性の声が聞こえ中へと通された。
ここまで読んでいただき有難う御座います。




