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「さて、あいつが居たら言い難い事も有るだろうから何か言いたい事とか有るなら今の内だぜ」


「・・・パンドラ殿・・・・・魔族との和平が成った時、この国は如何なってしまうのでしょうか・・・教会を含め近隣諸国から魔族の手先として扱われるのではないのですか?」


「だからその為に教会を是正するんだよ。ああ、ちょっと違うか、教義の是正だな。現状教会はこの国の亜人を認めてるだろ?そこに魔族を入れるだけだ」


「だけって・・・それは幾ら何でも無理が有るのでは?教義を変えると言うのはそう簡単に出来る事では無い筈ですし・・・失敗すればこの国は孤立無縁になり近隣諸国から狙われてしまいます」


「孤立無縁?狙われる?ハッ!何言ってんだ、魔族・・・いや、魔王が仲間になるんだぜ。よく考えてみろ、使徒を含めた人族が百年戦いを挑んで如何する事も出来なかった奴が仲間になるんだぞ。まともな奴なら喧嘩売ってこねぇよ」


「・・・・・何が有っても止めるつもりは無いと」


「無いね。俺は目的の為なら手段は選ばんが無駄な犠牲は出したくない。だから敵対するな、敵は神一人で良い」


「・・・・・・・・・・」


「マークスさん、あんたが心配する気持ちは良くわかる。だが俺は止まらんぞ。家族を、故郷を、この国を守りたいのならば俺に手を貸せ。協力者が多ければ多い程成功する確率は上がる」


「・・・・・はぁ・・・解りました・・・・・このままこの国が衰退して行くのを見続けるより貴方に賭けた方が良さそうだ。宿舎を用意しましょう、今日はそこで休んで下さい。明日の朝までには書類を用意しておきますので」


「ありがとう。だが宿舎の方は遠慮させて貰うよ。ちょっと其処の土地借りるぜ」


そう言って俺は席を立ち、少し離れた所に家を出すと砦から大きな声が上がり騒がしくなる。


「・・・プッ・・・ハハハハハ!参った!参りました!まさか家を持ち歩く方が居るとは!・・・ハハハハハ!・・・貴方に出来なければもう諦めるしかないのでしょうな。宜しくお願いしますパンドラ殿」


突然現れた巨大な建造物に驚いたのか玄田が戻ってきた。


「・・・・・ただいま戻りました・・・はぁ・・・吃驚しましたよ、行き成りこんな大きな建物が現れるんですもん・・・・・規格外過ぎでしょ」


「まったくですな・・・タケ殿そろそろお暇しましょう。明日までにやる事が出来ましたし」


「ああ、良かったら夕食もご招待するぜ。玄田君、風呂も有るから着替えを持って来ると良い」


「ほ、本当ですか!喜んでお伺いさせて貰います!こっちじゃお湯を運ぶのが大変だから滅多に入れなくて!そうだ、お礼に何か必要な物が有ったら言ってください出来るだけ用意しますよ!」


「そうですな。出来る限りお応えしましょう」


「ん~そうだなぁ・・・小麦粉を貰えるかい?夕食には旨いパンを用意するよ。ああ、小麦粉と一緒に料理人を連れて来てくれ、酵母の作り方と使い方も教えよう」


「おお!やった!総隊長直ぐに用意しましょう!俺の居た世界のパンが食べられる様になりますよ!早く早く!」


そう言って玄田は走って砦に向かった。


「ははは・・・あんなタケ殿を見るのは初めてだ。それではパンドラ殿また後程」


マークスが砦に戻って一時間もしない内に小麦粉30kgと料理人達がやって来たので、天然酵母とパン種の作り方と保存方法や酵母パンの作り方を教え、天然酵母をお宝製造で作った密閉容器に入れて渡すと料理人達は口々に礼を言い戻って行った。




夜になり玄田とマークスがやって来て風呂を堪能した後食事に。

マークスが手土産にとワインを持ってきたので蒸留酒は無いのかと聞くと、マークスは首を傾げ玄田は違いの解らない男だった。


「思ってた以上に発展して無いな・・・やっぱ魔法が便利だから科学が発展しないのかね?」


「そう言えば火薬も石油も無いんですよ。戦争で魔法が重要視されているから科学が発展しなかったんでしょうかね?」


「だろうな・・・火薬と化石燃料の変わりに火魔法なんだろ?手っ取り早いし・・・・・乗り物はやっぱり馬車?」


「はい、他には飛竜も居ますけど基本一人乗りですし数もいません。王国に三十匹位でしたっけ?」


「ああ、飛竜隊は三十ですね。ですが効率が悪くて廃止するかも知れません、維持費が掛かり過ぎるのですよ」


食後に貰ったワインを飲みながら世間話的な感じで情報収集をしたがかなりの収穫だった。国王と魔王相手だ交渉材料は多い方が良い、航空機は流石に作れんが。


翌朝になり、砦の中を通り南門を抜け、王国への道順と簡単な地図や書類関係を貰い車を出す。


「色々世話になったな、お陰でかなり楽になるよ」


「何言ってるんですか!お礼を言うのはこっちの方ですって。次に会う時は日本食、楽しみにしてますよ」


「おう、任せとけ!王都で色々流行らせて来てやるから楽しみにしとけ」


「パンドラ殿王都では我が家を拠点に御使い下さい。こちらが妻達に宛てた手紙になります。どうかご武運を」


「有難く受け取っておくよ。それじゃ!」


ペダルを踏みゆっくりと加速していき後ろを振り返ると大勢の兵士達が手を振っていた。


「おい!お前等後ろ見てみろ!すげー景色だぞ!手を振り返してやれ!」


俺は右手を窓から出して手を振り、他の三人は安全バーを外し身を乗り出して手を振り別れを告げた。


「魔族である我が人族に感謝され見送られるなど思いもしませんでした・・・魔族も人族も大して変わらない物ですな」


「主様、王都ってどんな所かな!楽しみですね!」


「そうだな~此処より沢山の人と建物や色々な物が有って、良い奴も居れば嫌な奴も居る・・・・・まぁ着いてからのお楽しみだな!」


こうして協力者を得た俺達は一路王都へと向かった。

ここまで読んでいただき有難う御座います。

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