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翌日になり人族の国へ向かう為に移動を開始したが、直ぐに問題が発生した。


タニアがまったく付いて来れないのだ。


タニア自身は必死に為って歩こうとしているのだが、靴擦れや豆ができて足が血だらけになってしまい、これ以上は無理と判断してかなり早い休憩となってしまった。


「さて・・・第一回残念サキュバス対策会議を始めたいと思いま~す」


「ちょ、何ですそれ!変な議題で『煩い、お前に発言権は無い。大人しく足に薬でも塗ってろ』・・・ぅあ・・・はい・・・・・」


「やっぱりここはだな、背負子に乗せて誰かが背負うしかないと思うんだが・・・・・ライラは『や!主様以外は嫌!』ですよね~・・・・・」


「我も遠慮させて下さい。背中に人が居ると言うのはどうにも落ち着きませんからな」


「はぁ仕方ない俺が『ダメ!』・・・え~それじゃどうすんだよ・・・・・」


「主殿が背負うと言うのは我も反対です。緊急時に主殿の動きが制限されるのは拙いですし、何より威厳と言う物が無い」


「はぁ~・・・どっかその辺に乗れる魔物とか・・・ん?・・・乗れれば良いのか?・・・まてよ・・・移動手段を作れば良いのか・・・よし!今日の移動はここまでにする。明日の朝までに乗り物を用意しとくから今日は自由行動だ」


「うぅ・・・皆さん申し訳ありません・・・あたしのせいで・・・・・」


「まぁ気にすんな。お前の軟弱さを読み違えたのは俺だしな。ライラ、アレス、外に散策に行くなら毛皮の取れそうな魔物か動物狩って来てくれ。見付けたらで良いから」


「は~い」「了解です」


「タニア、悪いと思うなら今出来る事をしろ。二人の為に美味い昼飯を作るとかな」


二人を見送りタニアを諭して図面の作成に取り掛かった。


「ん~木製だと壊れたら修理出来ないし、鉄でいいか・・・・・チェーンよりシャフトドライブで・・・・・サスペンションも欲しいなぁ・・・・・あ~ゴムがねぇ・・・鉄に溝掘りゃ良いか・・・・・ガラスもねぇ・・・シートに張る毛皮が足りねぇし・・・・・二人に期待するか・・・・・」


昼が過ぎ、夜になる頃には図面が完成し、皆が寝る頃に試運転が出来た。

月明かりに照らされて鈍く光る鉄の塊が夜の草原を直走る。


「取り敢えずスピードさえ出し過ぎなきゃ大丈夫かな・・・・・壊れたら作り直しゃ良いんだし」


翌日、朝食を取り家を収納してから皆に御披露目をした。


「どうだ!今日からこれで移動するぞ~」


「「「・・・・・・・・・・」」」


「なんだお前等!反応薄いな!」


「あ、いえ・・・その・・・この鉄の塊は何なのですか?・・・・・車輪が付いているので馬車の様な物なのは解るのですが・・・・・」


「ん?そうだな・・・これは四輪自転車・・・かな?・・・・・まぁ深く考えるな、そう言う物だと思っとけ。じゃぁ行くぞ~」


ドアを開け、後ろにアレスとタニアを、助手席にライラを乗せてシートの上に有るジェットコースターの安全バーの様な物を下げさせた。


「よ~し!そんじゃ出発!」


ハンドルを握りペダルを漕いで前に進んで行き、更に踏み込んで加速していく。


草原を抜けて土の露出した道の様な所を南へと走って行く。


サスペンションのお陰で大した揺れも無くそこそこ快適だ。

隣に座るライラはご機嫌で流れる景色を眺めては見た事の無い物を指差して俺に話しかけてくる。

後ろの二人は・・・・・微妙な笑顔を貼り付けたまま固まっていた。


暫く進んで行き、昼前には後ろの二人も慣れて景色を眺める余裕も出て来たので、タニアに人族の国について知っている情報を話させた。


魔族領に隣接している国は一つで『ベルトラン王国』と言い、百年程前から魔族領に侵攻を始めたが、戦力差のせいで国境は変わっていないらしい。

五十年程前にそれまで敵対していた亜人(獣人、エルフ、ドワーフ)と手を組み侵攻したが、魔王自ら出陣して追い返し、その後は小競り合いが続いているそうだ。

使徒はベルトラン王国の南にある『ビブリエ教国』から派遣されて来るらしく、現在は国境付近の砦に一人駐留していて、他には三名が確認されているが所在は不明で全員黒目黒髪だそうだ。

王国では亜人は普通に生活しているが魔族は殆んどが奴隷。教国では亜人も差別され殆んど居らず、居ても奴隷らしい。


聞けば聞く程碌でもない社会なので壊し甲斐が有るなと、ペダルを漕ぐ足に力が入った。

ここまで読んでいただき有難う御座います。

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