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23

俺が人型に成れた事に喜びはしゃいでいたら、眷族2人が冷静に突っ込みを入れて来たので一気に落ち着いてしまった。


「おお・・・いかんいかん、あまりの嬉しさについ我を忘れてしまった」


俺は冒険者の荷物に有った服を着て自分の体を見た。


「何か野暮ったいっつーか、かっこわりーなぁこの服・・・・・まぁ取り合えずこれで良いか。それよりも今は確かめたい事も有るしな」


俺は後ろを向いて2人に向けてニヤリと笑い頼み事をした。


「ライラ、俺と追い駆けっこしようぜ~。俺を捕まえられたら何でも言うこと聞いてやるぞ~」


「え、ほ、本当ですか?!頬ずりとか、添い寝とかでもですか!」


「お、おお、食いつき良いな。勿論って言うかそんな事で良いのかよ・・・・・じゃぁ始めるぞ~・・・よ~い・・・・・始め!」


俺の掛け声と共に駆け出し両手を広げて近寄ってくるライラの左手の下を潜り抜けて背後に回り込むみ少し距離を取ると、ライラは振り返り表情を変え真剣な目付きになり僅かに腰を落としてにじり寄って来た。


「そうそう・・・本気にならなきゃ捕まえらんねぇぞ」


俺は全力で向かって来るライラの脇を抜け頭上を飛び越え時には壁を歩き避け続け、ライラの息が上がり始めた所で声を掛けた。


「はい、しゅ~りょ~。ありがとなライラ、お疲れさん」


そう言って落ち込むライラの頭を撫でてやり、アレスの方を向き剣の間合い迄近寄った。


「お次はお前さんの番だアレス。その剣で俺に全力で打ち込んで来い、俺をこの場から動かす事が出来たらお前の勝ちだ、何でも言う事を聞いてやるぞ」


ニヤニヤと笑いながら言い放つ俺に少し戸惑った後、意を決した表情で剣を構え「御免!」と言い放つと共に袈裟切りに斬り付けて来た。

ゴゥンと鈍い音が響き周囲の埃や砂が舞い上り、アレスの振り下ろした剣は俺の左肩口を捉えたかに見えたが、俺の左の掌によって受け止められていた。


「なっ!ま、まさか素手で我が剣を受け止めるとは・・・・・ぐっ・・・う、動かん!何と言う強力!ぐわぁ!」


俺は剣を掴んだ左手一本で剣ごとアレスを壁に向かって投げ飛ばした。


「おお、すまんすまん、ちょっと力入れすぎた。大丈夫かアレス、お前もご苦労さん」


呆然と俺を見る二人を余所に、身体強化のスキル無しでこれかと改めて自分の非常識ぶりを再確認していた。


「よし、お前ら何時までぼ~っとしてんだ、先に進むぞ。アレスは丸太持て、ライラは・・・ちょっと待ってろ・・・・・よし、これを背負え・・・よし、行くぞ」


訳が解らない内に先を促され、わたわたと準備をして歩き出した二人を後ろ向きに歩きながら見つつ話をした。


「取り合えずあのきもい奴は俺が全部捕まえっから、お前達は付いてくるだけでいいぞ~」


「「あ、はい」」


後ろ向きのまま軽い調子で言う俺に今だ困惑したまま付いてくる二人。俺が適当に話を振りながら長い通路を歩いているとライラがマンティコアを感知した。


「てっ!敵襲!数3!主様前!前向いて!危ない!!」


焦るライラを尻目に俺はニヤニヤと笑いながらゆっくりと首だけで振り返り、肩越しにマンティコアを視界に捉えて靄を出した。


「・・・ククク・・・・・慌てんなライラ・・・こいつ等は最早俺の敵じゃねぇ」


俺の全身から湧き上がる靄を見て散開して飛び掛ってきたマンティコア二匹を靄で捉え、残りの一匹はフロントチョークで首を圧し折った。


「おっと、力ぁ入れすぎちまったぜ・・・甚振る積もりだったのになぁ・・・ククク・・・まぁいいかぁ・・・まだ居るだろうしな・・・・・おい、残りは一匹ずつお前等が殺れや」


二人はゴクリと息を呑み、恐る恐る近づいて来てマンティコアを倒した。


「何か主様ちょっと怖いです・・・・・」


「確かに・・・・・何か今までと違った気配を感じますな・・・・・」


「おお、そいつは悪かったな。ちょっと手に入れた力が強大でな、力に酔ったつーか、押さえきれて無いって感じなだけだ。心配すんな、俺は何も変わっちゃいねぇよ」


その後は二人を落ち着かせ様と適当に話をしながら進んで行き、広場の入り口に近づくとマンティコアが六匹襲って来たが、二匹は素手で殴り飛ばして残り四匹は靄で捕らえて二人に倒させた。


「取り合えず今日はこいつら根絶やしにしてから反対側の出入り口の近くで休憩だ。な~に戴して時間は掛からないだろうから二人共もうちょっと頑張れや」


そう言って軽い足取りで広場に入る俺の後を怪訝な顔付きで二人は付いて来た。

広場を適当に歩き回り反対側の通路の出入り口に付く頃には30匹程のマンティコアを倒していて、荷物を持って移動していた二人はかなり疲れた表情になっていた。


「二人共よく頑張ったな。ご褒美に目玉スープを作ってやるぞ~」


「主様、食事の用意なら私が・・・・・」


「いいから、いいから。ライラ達はのんびり休んでてくれよ」


鼻歌交じりに竈を作り火を熾し調理を始める俺にアレスが聞いてきた。


「・・・・・主殿、何故武器を使わずに素手で戦い続けたのですか?」


「あ~戴した意味は無いんだが・・・・・そうだな・・・ただ・・・嬉しかったんだ・・・・・」


「嬉しかった?」


「ああ、そういやお前に話した事無かったか」


俺は調理しながらアレスにライラに会う以前の事からアレスに会うまでの事を話した。薄暗い部屋で一人で暗い想念を募らせ復讐を誓った事、ライラに会いゴブリンやオークを倒した事など全て話した。


「ずっとライラに背負われて居るだけで何も出来なかったし、靄で拘束しても掴んでいる感触なんて無かった・・・・・だから人型に成れていろんな感覚が有るのが嬉しくってな・・・つい、はしゃいじまったって訳だ」


リザードマンの肉を焼き、残った肉汁に木苺を潰した汁と茸や野草を刻んだ物を加えて軽く煮詰めたソースを焼いた肉にかけて目玉スープと一緒に二人に渡し、先に食べる様に促した。


「だからさ、今は何でもやりたいんだよ。二人には・・・特にライラには感謝してんだぜ。お前達のお陰で俺は自分を失わずに済んでるんだ・・・・・って何泣いてんだお前ら。ったくしょうがねぇ奴等だな・・・ククク・・・どんどん用意してるからな。ほれ、冷めないうちにとっとと食って寝ろ」


二人は泣きながら俺に礼を言い、次から次へと料理を平らげて行き、やがて満腹に為ると毛布に包まって眠った。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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