表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同接一万でダンジョンが確定する世界で、炎上した元トップ配信者が観測を操る  作者: 海狼ゆうき
観測されるダンジョン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/84

アルゴリズムの静かな暴力


 配信翌日。

 七瀬の動画再生数が、異様に伸びない。


 通知は来ている。

 フォロワーも増えている。

 だが。


 表示回数が、落ちている。


 零がモニターを睨む。


「露骨すぎるだろ」


 国家の男が静かに言う。


「感情誘導スコアが閾値を超えています」


「だから?」


「おすすめ欄から除外」


 七瀬はスマホを見つめる。

 昨日まで当たり前に届いていた層が、消えている。


 コメント欄に書き込み。


《通知来ない》 《シャドウバン?》


 零が舌打ち。


「管理ってこういうことか」


 国家の男は否定しない。


「暴力ではありません」


「でも消える」


 七瀬が小さく言う。

 声は静かだが、刺さる。


 管理は殴らない。

 削る。

 削って、静かに、消す。


 トウマからメッセージ。


《同じ現象が起きています》


 七瀬は即通話をかける。


 画面に映るトウマ。

 彼の動画も、伸びが鈍化。


「私の管理肯定動画は通常通り伸びます」


 一拍。


「揺れを肯定した部分だけが、切り抜きで抑制されています」


 国家の男が目を細める。


「部分最適化アルゴリズム」


 零が笑う。


「都合いいとこだけ残すのか」


 トウマは頷く。


「“恐怖”というワードが高リスク指定になっています」


 七瀬が呟く。


「怖い、って言えない社会」


 静寂。


 国家の男が淡々と説明する。


「感情拡散モデルは、

 “共鳴強度×拡散速度”を危険値と判断します」


「つまり?」


「あなたは危険です」


 七瀬は苦笑する。


「人間やめろって?」


 国家の男は答えない。

 その沈黙が答え。


 零が立ち上がる。


「どうすんだ」


 七瀬はトウマを見る。


「戦う?」


 トウマは一瞬考える。


「正面衝突は得策ではありません」


「効率悪い?」


「はい」


 七瀬は笑う。


「でもさ」


 一拍。


「今、私たち消されたら、揺れた人どうなる」


 トウマの視線が揺れる。

 彼の画面にも、同じDM。


《昨日勇気出したけど、今日は怖い》


 管理は静かに圧をかける。

 声を小さくする。


 トウマが言う。


「別の形を取るべきです」


 零が首を傾げる。


「別の形?」


「アルゴリズムに検知されない表現」


 国家の男が即座に反応する。


「回避行為は監視対象になります」


 トウマは冷静。


「露骨にやれば、です」


 七瀬が目を細める。


「つまり?」


 トウマはゆっくり言う。


「揺れを、物語にする」


 沈黙。


「直接“怖い”と言わない。

 だが、伝える」


 国家の男が低く言う。


「感情の暗号化」


 零が笑う。


「おもしれえ」


 七瀬は考える。

 揺れを、そのまま出すのではなく。

 構造の外側へ流す。


「短編ドラマ」


 七瀬が呟く。


「討論の後の二人、みたいな」


 トウマが頷く。


「フィクション扱いならリスクは下がる」


 国家の男が端末を操作する。


「確かに、物語形式は感情誘導スコアが低く出ます」


 七瀬が笑う。


「バグだね」


「仕様です」


 国家の男は訂正する。


 その夜。

 新しい配信。


 タイトル。


《架空の話:揺れない人と揺れる人》


 同接、開始五分で三百万。

 アルゴリズム警告、出ない。


 七瀬が語る。


「ある日、揺れない人がいました」


 画面は柔らかい照明。


 トウマも別画面で語る。


「揺れない人は、混乱が嫌いでした」


 コメントが流れる。


《トウマじゃん》 《七瀬だろ》


 だが、直接的ではない。


「揺れる人は、泣くのを止められませんでした」


「揺れない人は、それを非効率だと思いました」


 一拍。


「でも、ある日」


 七瀬が微笑む。


「揺れない人は、少し揺れました」


 トウマが続ける。


「揺れる人は、それを責めませんでした」


 コメント欄が、静かに温かくなる。


《わかる》 《これなら見れる》


 国家の男が数値を見る。


「拡散率、安定」


 零が笑う。


「抜け道かよ」


 七瀬は小さく首を振る。


「抜け道じゃない」


 一拍。


「生き方」


 物語は続く。


 揺れない人が、初めて“怖い”と言うシーン。

 揺れる人が、“管理も必要”と言うシーン。


 直接ではない。

 だが、確実に届く。


 同接、六百万。

 削られない。

 消されない。


 アルゴリズムは静か。


 国家の男が低く言う。


「検知不能域です」


 トウマが静かに呟く。


「管理の外に出ました」


 七瀬はカメラを見る。


「私たちは、消えない」


 一拍。


「形を変えるだけ」


 コメントは揃わない。

 だが、消えない。


 揺れは暗号化され、流通する。

 管理は、直接止められない。


 静かな攻防。

 構造 vs 物語。


 トウマが配信の最後に言う。


「効率は大切です」


 一拍。


「しかし、人間は効率だけでは語れません」


 七瀬が続ける。


「揺れは、バグじゃない」


 静かに。


「仕様でもない」


 一拍。


「人間です」


 配信終了。


 国家の男はモニターを閉じる。


「予測不能。

 しかし、排除不可」


 零が言う。


「勝ちか?」


 七瀬は首を振る。


「まだ」


 トウマも言う。


「管理は進化します」


 そう。

 アルゴリズムは学習する。


 次は、物語すら検知する。


 戦いは終わらない。

 だが。


 今日、揺れは生き延びた。


 次章。

 構造が、本気で牙を剥く。


【第三十六話 終】


------------------------------------

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ