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ポーランド侵攻 4

「畜生!キリがねぇ!」


クラウスは思わずうめいた。


「あぁ、まったくだ!奴ら何処から湧いてきやがったんだ!」


隣でトーマスもうめく。


突如始まった敵の攻勢に二人はブツクサ愚痴る。


クラウス達が所属するSS第一自動車化師団隷下の第3自動車化大隊第2中隊は先行する国防軍の装甲師団の後詰めとして、北方軍集団の主力が追い付いてくるまで繋ぎとして街道の村を占領した。


先行する装甲師団の後方連絡線を維持する重要な役目だ。


重要な役目であり、装甲師団の機動力に追従出来る機動力を与えられた自動車化師団の本分とも言える任務ではあるがこの時SS自動車化師団はかなり無理のある配置を強いられていた。


クラウス達が占領した村はさほど規模が大きくなく、村自体は一個中隊もあれば十分占領可能なものだった。


だがその村が街道が集まる交通の要衝であること。


ここが第一装甲軍団の攻勢側面の脆弱な部分であること。


これらを考慮すると本来もっと多くの戦力を駐留させるべきなのだ。


だが攻勢の速度を重視した第一装甲軍団は後続の歩兵師団が追いつくのを待たず、攻勢を続行。


その結果、本来あるべき姿よりかなり手薄な戦力でポーランド軍をクラウス達を迎え撃つ羽目になった。


敵の規模はどう見ても大隊規模。


(攻防3倍の法則を正しく実行ってか!)


3倍の数の敵に攻撃されているわけであり、クラウス達がぼやくのも無理はなかった。


だがそうぼやきつつも二人の手は止まる事なく敵に撃ち返している。

それも新兵のようにのべつ幕無しに撃つのではなく、敵兵のシルエットに対し的確に射撃するあたり二人もいよいよ熟練兵の域に達してきたと言えた。


そうやって二人のような熟練兵が愚痴りながらも冷静に対応している姿は周りの『戦争童貞』の兵士達にとって支柱となる。


二人には自覚がないが、彼らのような熟練兵の存在がSS自動車化師団の練度を引き上げ、今回のような想定外の戦闘においても部隊が指揮統制を失わず敵に対応することを可能としていた。


また彼らが装備している試作小銃stg39も敵の攻撃を強力に阻止していた。


通常編成のライヒ国防軍中隊の場合、敵を面制圧できる火力として各分隊に1挺づつMg34などの軽機関銃が配備されており1個中隊だと20挺の軽機関銃が配備されている。


だがクラウス達は限定的ではあるものの敵を面制圧できる火力を兵士一人一人が保持している。


ポーランド軍は機関銃の死角から突破しようと試みるが、機関銃の死角であったとしても歩兵分隊員が手持ちのstg39でモーゼルクルツ弾をばら撒いてくるのだ。


対するポーランド軍は装備良好な分隊で分隊毎に一挺の機関銃を装備しているに過ぎない。


その結果、少数部隊であるのにも関わらず歩兵火力でSS歩兵中隊はポーランド軍大隊に優越していたのだ。


少数部隊とみてやや強引に攻勢を開始したポーランド軍にすでに相当な損害を与えていた。


だが。


(こりゃ遭遇戦じゃないな)


クラウスは敵の執拗な攻撃にただならぬものを次第に感じる。


手痛い損害を喰らったはずなのにポーランド軍は攻勢を緩めない。

これが偶発的な遭遇戦であるならば既に撤退しているはずだが、ポーランド軍は攻撃位置を保持したままであった。


今思い返せば兆候はあった。


これまでの遭遇戦では敵の偵察部隊との接敵がほぼ無い、もしくは偵察部隊との接敵から間髪いれず本隊と接敵していた。


だが今回の戦闘の前には何度か敵の偵察部隊と思わしき部隊と接敵しており、敵が一連のなんらかの戦闘計画に則り行動していることが伺えたのだ。


「おいクラウス・・・なんか聞こえないか?」


トーマスが顔をやや引き攣らせてクラウスに声をかける。


「・・・これは履帯の音だな」


(頼むから味方であってくれよ)


そうクラウスは天に祈るが、その祈りは聞き遂げられることはなかった。


彼らの目の前には無情にもポーランド軍の主力となっている7pt戦車が姿をみせた。

ヴィッカース6トンの系譜を組む戦車であり、7pt(ポーランド7トン)と呼称しているが実際の重量は9トン以上ある。


ライヒの2号戦車や38t戦車と同等かそれより強力な戦闘力を誇っており、歩兵部隊からするとかなりの難敵である。


ポーランド軍は今回の反転攻勢に多くをかけていた。

首都ワルシャワに迫るドイツ軍の先鋒をあわよくば包囲、そうでなくとも進撃を停止させるべく投入可能な戦力を一気に投入したのだ。


今回な政治的要因に起因する動員の遅れや、ルフトバッフェの執拗な航空攻撃で終始防戦一方とってしまっているが、本来機動戦はポーランド軍の方のお家芸なのである。


広大な平原を要する国土と、中世末期においてヨーロッパの地で無敵を誇ったフサリア騎兵を軍のルーツに持つ彼らのドクトリンに機動戦は最初から含まれてあった。


実際、近年においてもソビエトとの戦争では騎兵戦力を有効に運用し勝利をもぎ取っていた。


今回の攻勢でポーランド軍は騎兵戦力を騎乗歩兵として運用し、それに数少ない機甲戦力も随伴させた。


ドイツ軍の装甲師団と似通った編成で機動防御を試みたのだ。


もっとも戦車の絶対数が圧倒的に少なく攻勢全体でも30輌程を投入できたに過ぎないし、一部不整地での運用は別として自動車化歩兵に対し騎兵は機動力に劣る。


保有している戦車の数自体はもっとあったのだが、ほとんどの戦車はすでに前線部隊に分再配置されてしまっていたのだ。


その辺りは戦車の運用ドクトリンがポーランド軍内で確立されていない故であった。


それでも戦車が攻勢に加わるインパクトは大きい。


実際、いくつかのドイツ軍部隊は戦車を見ただけで恐慌状態に陥り撤退を余儀なくされた。


このままドイツ軍の先鋒を分断出来るんじゃないかと反撃に出たポーランド軍部隊に楽観的な空気が部隊に広がったくらいだ。


だがポーランド軍にとっても現実は非情であった。


確かに7pt戦車は優れた『軽戦車』であった。


だがあくまで軽戦車は軽戦車。


バーン!バーン!バーン!


クラウス達の後方から一際大きな射撃音が数回響く。


その音と同時に7pt戦車の前面装甲に幾つかの小さな破口が生まれる。


穿かれた穴は小さかったが操縦手に貫通した弾があたったのだろうか。


7pt戦車はたった数発の弾丸でその歩みを止めた。


7pt戦車の後ろで戦車を盾に攻撃する構えだったポーランド軍歩兵部隊にも混乱が広がる。


まさかの事態に次の一手をうちかねているようだ。

そしてその混乱を見逃すほどSSは甘くない。


混乱するポーランド軍歩兵にstg39やmg34から熾烈な攻撃が浴びせられる。


「・・・えげつないな。」


「あぁ、あれが対人兵器ってのはやりすぎだろう・・・」


思わず呟いてしまったクラウスにトーマスが相槌をうつ。


流石のトーマスもあまりの威力にドン引きしているようだった。


7pt戦車を食い止めたのはObjektivgewehrことOjG13mm()()ライフルだった。


stg39と同様、ちょび髭総統肝入りで開発された兵器だそうで『stg39を装備するならこれもついでに持っていけ』と SS自動車化師団に配備された試作兵器だ。


国防軍の他の部隊が装備している対戦車ライフルの代わりとしてクラウス達の中隊にも3丁配備されていた。


『対戦車ではなく()()と名乗っているのは戦車を主な攻撃目標としていないからだそうだ』と、以前トーマスが肩をすくめながら語っていた。


対物ライフルを目ざとく発見したトーマスは、対戦車ライフル分隊改め特殊狙撃分隊へとジョブチェンジした兵士からこれまた耳ざとく情報を仕入れていたのだった。


トーマスが仕入れてきた情報によると、13mm対物ライフルは超長距離の敵兵士もしくは近距離の軽装甲車両を撃破するために開発されたらしい。


確かに近距離からの射撃で敵戦車の装甲を貫通することを対戦車ライフルに無用の大型の望遠レンズが装備されているあたり、OjGが超長距離の狙撃を念頭に入れて開発されたということはクラウスからしても合点がいくところではある。


ではあるのだが、


軽戦車とはいえ、戦車の前面装甲を貫通する兵器が生身の人間をも攻撃対象に予め含んでいることにクラウスは改めてドン引きする。


(それにしてもトーマスの人たらしぶりは異様だな)


誰とでもすぐに仲良くなりどこからともなく情報を仕入れてくるトーマスの才能を思い出し、クラウスは思わず隣のトーマスを半眼で見てしまうのだった。










すいません、更新遅くなりました。

書きそびれていた内容が色々あり、その収集に追われています。

対物ライフルについてもどこかで詳しく触れるつもりです。

イメージとしてはヘカートが近いです。

まぁ、ライヒの技術力なら作れるのではないかと思いのせました。

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― 新着の感想 ―
対物ライフルなら手足以外は大体即死だろうし、小口径よりも苦しみが少ないという意味では人道的な可能性が微レ存。
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