ポーランド侵攻-2
(いける!、いけるぞ!)
グデーリアンは隷下の指揮官からあがってくる報告を聞きそう思う。
あがってくる報告のほとんどは敵前線を突破したというものであり、敵の抵抗にあいつまずいた部隊も、空軍からの支援攻撃が届くと進撃を再開出来ていた。
(まさに私が思い描いた戦場だ!)
今回のポーランド侵攻にさいし、グデーリアンは2個装甲師団と2個自動車化師団を束ねる装甲軍団を指揮下に納めていた。
装甲部隊による機動戦ドクトリンを旨としていたグデーリアンにとってはまさに願ったりかなったりのポジションと言えた。
そして機動力に富む装甲師団を束ねる都合上、軍団長として4つの師団を束ねる立場にグデーリアンはあったがマウルティアを改造した指揮車両に搭乗していた。
(このあたりも総統閣下はお見通し、ということか)
当初からハノマークやマウルティアの派生型として指揮車両型が存在していたことを思い出し、ふとグデーリアンはそう思う。
グデーリアンが使用している指揮車輌は高級司令部向けのパッケージであり、可動式とはいえかなり大掛かりなものとなっていた。
総統が用意させた指揮車輛は指揮する範囲に応じて何種類かある。
一つは前線型。
大隊や連隊ごとに配備される車輌であり、ハノマークをベースに設計されたものだ。
短距離無線しか搭載していないが、車輌一台で発電機からアンテナまで完結しており、マウルティアではなくハノマークをベースとした事で最悪戦闘に巻き込まれてもある程度の防御力を発揮できる。
そしてもう一つがグデーリアンが今回使用しているの師団・軍団用のパッケージだ。
車輌はマウルティアを改造したものをベースとし、中長距離無線とエニグマを搭載した指揮車両を中核とし、電源車、アンテナ車と数種類の補助車輌からなる。
指揮車両だけでも一応通信は可能だが、隷下の師団や軍集団司令部と通信する際は補助車輌と組み合わせる事で移動可能な司令部として本領を発揮する設計だ。
戦況によっては素早い展開、撤収が必要な連隊クラスまでならまだしも、師団司令部以上の階層でここまでの機動性を持たせる事に懐疑的な意見もあった。
ハノマークは勿論のこと、マウルティアも全く配備数が足りていない状況でそんな車輌を専門で用意する事が必要なのかという話だ。
(だが、またしても総統閣下の見立てが正しかった訳だ)
従来の戦場では考えられない進撃速度に、もし従来型の固定式司令部を採用していたらついて行けてなかっただろう。
前線よりもかなり後方でヤキモキしながら指揮するか、設備の貧弱さに目を瞑りながら無理矢理前線で指揮をとっていたに違いない。
その点、固定式の通信基地には劣るとしても必要十分な通信環境と、装甲師団の進撃にもついていける機動力をもつマウルティアの司令部向けパッケージは機動戦にぴったりと言えた。
そうやってこの来たる日の為牙を研ぎ澄ませていたライヒ国防軍に対し、ポーランド軍は準備不足の一言に尽きた。
空軍の短いが猛烈な(実際はこの日ルフトバッフェ全体では2000ソーティーに迫る爆撃が行われており、決して短いものではなかった)爆撃ののちグデーリアン達、ライヒ国防軍はポーランドに流れ込んだのだが、そこで待っていたのはポーランド軍の散発的な抵抗だけだった。
ここでいう『散発的』というのは、ポーランドがまともに抵抗をしなかったという事を意味しているのではない。
事実、『祖国防衛』という分かりやすいモチベーションに背中を押されるポーランド兵士は果敢に抵抗した。
実際いくつもの防衛拠点でライヒは攻撃に失敗し、個々の戦場では見るべきものはあった。
『陸軍大国』の名に恥じぬよう抵抗したのだ。
各個ばらばらで
ポーランド軍は軍の配備が間に合っておらず、まともに防衛線に配置につけていない部隊が数多くあった。
その結果地図上では均一に防衛線が引かれているが、実態としての防衛能力はかなりのバラツキがありこれが格好の狙い目となったのだ。
さらにはポーランド軍の司令部、物資集積所、砲兵陣地などはルフトバッフェの優先攻撃目標に設定され、ポーランド軍が前線を統制するのを著しく阻害していたのだった。
そんな敵の隙を見逃すほどライヒ国防軍は甘くない。
防衛準備が整っている敵陣地は避け、手薄な陣地を攻撃。
前線の統制に多大なる支障をきたしていたポーランド軍はライヒ国防軍の動きに連携して対応することが出来ず、各部隊がバラバラに抵抗するといったどうしようもない状況に追い込まれたのだった。
そしてまともに組織立って抵抗できない敵部隊の殲滅は後詰めの歩兵部隊に任せ、グデーリアン率いる装甲軍団はポーランド軍防衛戦の背後に浸透。
開戦からわずか3日で、東プロイセン目前の位置にまで軍を進撃させていた。
「閣下、軍集団司令部から通信が入っております」
グデーリアンの前に座っていた通信兵がグデーリアンに紙を渡してくる。
(万事順調といっていいな)
さっと中身を確認したグデーリアンは思わず顔がニヤつくのを止められなかった。
紙を渡してきた通信兵もできるだけ平静を装っているようだが、顔はかなりほころんでいる。
電文の中には他の軍の状況と、今後の命令が書かれていた。
それによるとグデーリアンが所属する北方軍集団のみならず、南方軍集団もポーランド軍の前線を大きく突破。
グデーリアン率いる第1装甲軍団はこのまま東プロイセンまで突破し友軍と合流。
ポーランド回廊に居残るポーランド軍の包囲は後方から懸命に追いかけてくる歩兵師団に任せ、ポーランド首都ワルシャワ目指して進軍せよというのが今後の命令であった。
「やれやれ、諸君。どうやら我々はまだまだ動かないといけないようだな」
そうグデーリアンはおどけて言うと、矢継ぎ早に隷下の部隊に指示を出すのであった。
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9月4日 ライヒ国防軍北方軍集団の先鋒である第1装甲軍団はポーランド回廊を横断し、東プロイセンに到達。
その後ほぼ軍を休めることなく南に転進し、ポーランド首都攻略に向け軍を進めるのであった。




