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ep.1 神様、クーリングオフお願いします


優しい日差しが差し込み、爽やかな風が頬を撫でる。


小鳥の可愛らしいさえずりが聞こえてくる。


朝か…………


こんな気持ちの良い朝を迎えたのはいつ以来だろう。


重いまぶたを擦りながら身体を起こした。そして、未だに(かす)む視界で辺りを見回すと……



「……んん?どこだ……ここは。まったく知らない部屋だ」



高い天井、白を基調とした広い部屋、壁には印象派のような絵画が飾られている。


窓は大きく作られており、俺の寝ているベッドの所だけは少し開けられていた。そこから、さっきのそよ風が入ってきてるんだな。



「あっ!そういえば、転生がどうのこうのって………ってことはーーーーー」



神様と会って転生することになった事を思い出した俺は、転生後の身体を確認することにした。


真っ先に自分の手に視線を落とした。



「おぉ!ちっさいなぁ……こりゃ10歳ぐらいか?弱々しい腕だな~」



なんと、本当に転生してるみたいだ!ラノベやアニメの世界だけだと思っていた『転生』というもの。それが現実に起こり得るなんて……


これまで感じたことのない感動が、俺の身体全体を駆け巡っている。これか。これが言葉で言い表せないほどの感動か!


小さくてスラッとした自分の細い指を見ながら、これからの異世界ライフに想いを()せる。


なにせ魔法が存在する世界らしいからね。夢にまで見た魔法をバンバン使えるようになって、この世界における大魔法師になってやる!


妄想で一杯になっている頭を一旦、冷静に落ち着けた俺は、転生後の性別が気になった。そこで、男になら誰しもが付いている(けが)れたバベルの塔の存在を確認することにした。


……だってちゃんとご臨在であるなら安心でしょ?それに女なんて経験したことないもん。小便するとき座るとか考えられないし。


男は黙って立ちションだぁああああ!!!!!



………………


………………………


…………………………………………ない。


あっれぇ~???はははっ……。はははははっ。



無いんだよ。どこ探しても……ない。


おっかしいな~さっきまで在ったんだけどな~



あっ、ベッドの下に落ちてるのかも!俺、寝相悪いからな~。可能性が無きにしも(あら)ずってやつだな。



いっちょ探してみるか!


穢れたバベルの塔を探すため、俺はベッドの下を覗いてみた。すると上から長くて細いサラサラとした何かが、いきなり顔の前に垂れ下がってきた!


そいつが頬を撫でるものだから、思わず変な声が出てきてしまった。



「ウィヒェッ!?!?な、なななんだこれは!!!」



蜘蛛の糸か何かと思ってよくよく見てみると、どうやら髪の毛らしい。引っ張ると頭皮が痛かったから間違いない。


すごく綺麗な黄金色をしていた。まるで宝石のようだ。



…………これ。もしかして俺の……か?うん。俺のだよな。引っ張ると痛かったもんな。…………えっ!?え?え?え?えぇーー!?!?!?!?


こんな長いの!?床からベッドまでの高さ、1mぐらいあるよ?長すぎじゃないですかね……


あっ、そんな事よりバベルの塔!俺のバベルの塔はどこ!?!?


気を取り直してベッドの下をキョロキョロ見回してみるも、探しているものは見当たらなかった。


ブツが無ければ、一つのホコリさえも落ちてない綺麗な床だけが目の前に広がっている。


絶望のあまり、俺は目の前は真っ暗になった。


そして、そのまま自動でポ◯センへ…………なんて事にはならず、気を落としたままベットへ仰向けになる。


某サイトでスレを立てるなら、こんな感じになるのかな?



『【悲報】ワイ将(23)、自慢のバベルの塔紛失。()人生終了のお知らせ。なお、転生後の身体は美少女の模様』



こんなクソみたいなスレに集まる奴なんて、俺か変態ぐらいだろうな。……バカバカしい。


そもそもさ、何で女の子なん?普通に可笑しいでしょ。元々は男ですよ?何で取り上げちゃったの?何で、唯一無二の◯◯◯(ピンポーンッ‼︎)を取っちゃった?


いや、別に付いてる女の子が良い訳じゃないですよ。そんな特殊な属性持ってないですからね。素直に男の子で良くない?



元は男なんだから、転生後も男で良くない?なぜ女の子にした!?なぁ、神様よぉ。なぜ女の子に?なぁ、なぁ、なぁ!?…………今更言ったって後の祭りなのは知ってるけどさ。諦めつくと思うか!?


わし、前世でまだ童貞だったんだぞ!?おにゃの子と一度もやった事ないんだぞ!?おにゃの子に、身体洗ってもらう店にすら行ったことのない人生だったんですよ!?



ふぅ。…………転生してさ、ハーレムパーティ作って、おにゃの子周りに蔓延(はびこ)らせて、毎晩のようにワッショイしようと思っていたのに。それなのに、それなのに!!!


何だこれは!何なんだよ、これはよぉ!!えぇ!!!


俺の自慢の汚填砲(マグナム)は紛失、おまけに身体は女の子。でも胸は無い。完全にまな板。(わず)かな膨らみだけですよ。こんなの在って無いようなもんだろ!!


髪はうざったいぐらい長いし、四肢は今にも折れそうなほど細い。……う~ん。ただ、顔は美人なんだよな~


そんじょそこらの子役より綺麗だよ。西洋人って凄いね~

子供のはずなのに大人っぽい顔立ちなんだからさ。憧れてたものが叶うってのは良いよね~


いや、そんな事、今はどうだっていい!


俺は、今のこの状況が理解できないんじゃ!簡潔にまとめると、こんな感じだよ。



死にました

 ↓

神様現れます

 ↓

あの世行くか、転生するか選ばされます

 ↓

転生を選びました

 ↓

目が覚めると女の子でした(イマココ←



この流れで、現状を受け入れる事ができる奴は、今すぐここへ来い!大声で返事して、ダッシュでここへ来い!


どうやって受け入れたか教えて貰おうか!?



あぁ……ヤバイ。状況が状況なだけあって、パニックで頭痛くなってきた。


もう無理。マジで無理。ちょっと寝るわ。たぶん、これは夢なんだよ。何か悪い夢でも見てるんだ。うん、これは夢だ。もう一度眠れば目が覚めるかもしれないしな。


よし。寝よう。夢の中で寝むったら現実に戻るだろう。






ーーーーーそれから4時間が経った。



オッス!オラ、日野一馬。神様に転生してもらって、目が覚めると女の子になってたんだ。胸は無いし、自慢の◯◯◯(ドキューンッ‼︎)は消えて低い丘が広がってやがる。


神様、オラの◯◯◯(チーンッ‼︎)をどこに隠しやがったぁあああああ!!!!!!未使用新品だぞぉおおおおおお!!!!!!


ゲホッゲホッ……ふぅ~。まぁ、こんなところか。目が覚めて再度確認したんだが、やっぱり無かったよね。何なんだろうね。何でこんな嫌がらせを受けなきゃいけないんだろうね。



あれだ。家庭科の授業で習った、()()を使おう。


消費者を守る為に出来た素晴らしいシステム。


その名も……【 クーリングオフ 】!!!!


説明しよう。クーリングオフとは、一定の契約に限り、一定期間、説明不要で無条件で申込みの撤回または契約を解除できる法制度のことである!



……まぁ、神様相手に通用するかどうかは知らないけどさ。やるだけやってやる!こっちは、望みもしない女の子にされてんだ。大事な◯◯◯(ズキューンッ‼︎)も取られたし。


あっ、もしかして、◯◯◯(バキューンッ‼︎)は人質……いや、珍質にされてるのかも!?


神様めぇ……卑怯だぞぉおおおおお!!!!


それが、神様(おまえ)のやり方かぁああああああ!!!!!!!


というわけで、一筆啓上(いっぴつけいじょう)致す。




神様へ。


今回の転生は無かったことにしてください。クーリングオフ制度に則って申請します。


貴方のせいで◯◯◯(ピコーンッ‼︎)を失った日野一馬より




よし。こいつですぐ問題解決だろう。


これで、大事な大事な◯◯◯(息子)と再会が果たせるはずだ!!


いや~やっぱアレが無いと落ち着かないよね~


お股がスースーしちゃうもん。首元から入った空気が、そのまま床に真っ直ぐ辿り着いちゃうもんね。


ストンッて感じだよ。ストンッて。はははっヤベェ。まな板マジ半端ないって!




最後に一言……俺のナニを返せぇええええ!!!!!



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