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こんとん大戦  作者: 寿
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月曜☆ちゃぶ台劇場

月曜☆ちゃぶ台劇場


 風呂はいい。

 一日の汗を流してくれるだけでなく、疲れを癒してくれる風呂はいい。

 この時ばかりは海軍少尉も何もかも忘れ、素っ裸なひとりの人間にかえることができる。

 こんな気分のよい夜は、一言叫んでみたくなる。

「おかみさ~~ん!」

「時間ですよ~~っ!」

 居間から緋影の声が返ってきた。

 ノリの良い娘だ。

 俺の教育がよかったのだろう。

 満足だ。

 しかも湯船の中に、アヒルのおもちゃを浮かべてくれるという、よく心得た娘になっていた。

 ………が。

 アヒルのおもちゃは垂れ幕を曳いていた。

 その垂れ幕には、文字が書かれている。


 お仕事です


 癒しのひととき、憩いの時間はおしまいだ。

 今日も男たちの仕事が始まる。

 湯船をあがった俺は腰に手をあてがい、瓶牛乳を一気に飲み干した。

 ………………全裸で。


 居間にはちゃぶ台を囲んだいつもの面々。

 だが、何か足りない気がする。

 が、しかし。ちゃぶ台劇場は容赦なく幕をあげた。

 テーマ曲はハードロックの熱いビートで、緋影と出雲鏡花、それに瑠璃が入場してきた。

 なるほど、何か足りない気がしたのは、瑠璃のことだったか。

 影が薄い………もとい、おとなしいから気がつかなかった。

 ちゃぶ台劇場の口火は緋影の挨拶から。

「W〇W〇W世界プロボクシング、エ〇サイトマッチ。エ〇サイトと表記してエッチな気分にならないでください。実況のヒか柳ゲん一です」

 ちょっと待て!

 激しく待て!

 まずはタイトルだ!

 Wの後ろは伏せ字マークの〇なんだろうが、それじゃ伏せ字になってねーぞっ!

 それから伏せ字使うなら、エキ〇イトとか〇キサイトとかにしろっ!

 わざとだな?

 わざとなんだろ!

 さらにはアナウンサーの名前!

 高〇謙一氏はわかるんだが、無理矢理が過ぎる!

 最後の「一」の文字なんて、伸ばす音の棒線「ー」にしか見えんぞ!

「そして解説はいつものこのお二方………」

 修正する気ねーな?

 修正する気ねーんだろ?

 ちきしょう、俺の胃袋にストレスで穴をあけてやる!

「まずはボクシング評論家の、ジョー小出雲さん」

 あ、これは上手くまとまってるな。

 って、納得するなよ俺。

「そして元世界チャンピオンの、浜田つ瑠璃さんです」

 あのなぁ、〇田剛史さんは今でも尊敬を集める、ボクシング界のカリスマなんだぞ。

 浜田さんを名乗るなら、つけ眉毛くらいつけて来ないか!

 あ、デコ。そこのデコ。お前もだお前も。ジョー〇泉氏も立派な眉毛してるだろうが。

「それでは本日のラインナップ。お届けする試合は、この二試合です。ジョーさん、解説をお願いします」

「まずは地下闘技場でのタイトルマッチ、全裸ボクシングチャンピオンのロッキー・マルダシーノJr.対モハメッド兄の一戦ですわ」

 何をマルダシーノだ!

 何を!

 つーか対戦者も対戦者だ! なんだよその殿方を好む殿方のようなリングネームは!

「ちなみにロッキーのロの字をボに変えることは、許されておりませんのよ?」

 そんなものマルダシにすんじゃねぇ!

 天が許さぬ前に、俺が許さん!

「解説の浜田さん、この一戦どのように御覧になりますか?」

「………………………………」

「あの、なにか喋ってください」

 緋影、明らかにキャスティングミスだ。責任とれ。

「では早速ゴングですわ!」

 出雲鏡花が勝手に進行するが、なかなか試合のVTRが再生されない。

「失礼しました」

 緋影が頭をさげる。

「あまりにもあまりな試合内容だったということで、VTRを再生できないと判断されたようです」

 どんな試合内容だったんだよ?

 あ、いやいい。教えてくれるな、妹よ。

 絶対に教えてくれるな。

「この試合に関しては、ジョーさんが現地で観戦されたそうで?」

「というか緋影さま、むかしこの一戦、携帯サイトにSSとして投稿されていたのでは?」

「記憶がございません。では次の試合に移りたいと思います」

 なにかあったのか、緋影?

 耳がピクピク動いてるぞ?

「世紀の変則マッチ、忍者対女医と天狗と出雲鏡花………って、なんですかコレ?」

「ボクシングには稀有な、凶器攻撃も認められたデスマッチですわ」

 稀有すぎだろバカ野郎。

「というか小出雲さん、何故あなたまで試合に出ているのでしょう?」

「世界は謎に満ちてますのよ? さあ、ゴングですわ!」

 もちろんこちらの試合も、Vは再生されない。

「え~~………出雲さん?」

「なんでしょう、緋影さま?」

「ちゃぶ台劇場愛読者から、苦情の手紙が来てますが?」

「身におぼえがありませんわ」

「お前らちょっとヒド過ぎ。………ちなみにホメ言葉だそうで」

「耳が悪くなりましたのね、ホメ言葉しか聞き取れませんでしたわ」

 ひでぇ、金持ちって人種は、どうしてこうもひでぇんだ。

「では出雲さん、番組の尺が余ってしまったのですが、どうしましょう?」

「緋影さま? 余った尺は瑠璃さんのつぶらな瞳を、電波に乗せてみてはいかがでして?」

 時間一杯乙女の眼差しを放送するボクシング番組って、どうよ?

「心配いりませんわ、緋影さま。苦情を入れる無粋な輩は、わたくしが札束に物を言わせて、二度と口を効けなくしてさしあげてよ?」

 俺、いま、生まれて初めてブルジョワに殺意をおぼえたよ。

 民衆よ、立ち上がるなら、今この時だぞ。

「それでは出雲さん、貴女がちゃぶ台劇場認定の世界チャンピオンということでよろしいでしょうか?」

「このベルトは女王にこそ相応しいものですわね」

 女王というより女帝だけどな。

 腰に栄光の証、チャンピオンベルトを巻かれる出雲鏡花。ブーイングの使鬼たちと忍者。

「それではこれより、出雲さんには防衛戦として、挑戦者ジョー・ウォルコットと対戦してもらいましょう」

「ちょ、緋影さま! なにを? 何故に!」

 当たり前だろチャンピオン。俺たちファンを失望させてくれるな。

 恐怖のリングに押し上げられる出雲鏡花。

 ニマニマと笑う緋影。

 しかしその背後には、本日のメインイベントで緋影と対決する使鬼の中の武闘派、白銀輝夜がアップをはじめていた。


 悪は滅びるであろう。

 なんにせよ、めでたいことだ。

 そして我々を楽しませるために、体を張ってくれる悪に乾杯だ!



次回予告!

 おそらく最終回!

 ………予定は未定にして、決定にあらず。

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