月曜☆ちゃぶ台劇場
月曜☆ちゃぶ台劇場
朝は濃い目のコーヒーから始まる。
そこにモーニングのセットが付いていたならば、ベターである。
人生に後悔しか残っていないみなさま、おはようございます、大矢健治郎です。今朝のお目覚めはいかがでしょうか?
俺は花の都パリ、シャンゼリゼ通りにちゃぶ台を据え、月曜日の朝を迎えております。
やはりモーニングサービスのサニーサイドアップは半熟です。
そして上品な、焼きたてクロワッサン。
これこそが人間らしい朝と言えるのではないでしょうか。
しかし無粋な輩は、どこの世界にもいるもので。
ポマードやチックでリーゼントに髪型をキメた若者たち。等しく赤いブルゾンを着込んだ若者たちが、指を鳴らしスイングを口ずさみながら、ちゃぶ台へと近づいてくる。
おっと、反対側からは、青いブルゾンの若者たちだ。こちらもクリームを塗りたくった髪で、しかるべき表情をつくりながら歩いてきた。
このシャンゼリゼは、俺たちレッドスコーピオンのものだ。
いやいや、ブルースパイダーを忘れてもらっちゃ困るな。
そんなつまらない意地の張り合いでナイフを振り回す、実に迷惑な連中だ。
しかし、この土地はオロシヤのものだ。
いやいや、ヤワラギ帝国を忘れてもらっちゃ困るぜ。
という国家間の紛争と、どれだけ違うものか? たいして違いは無い
迷惑するのが国民か市民か。ただそれだけの違いでしかない。
と、それぞれのリーダー格が、懐に手を入れたぞ? いよいよ光り物の登場か?
が、二人は懐から抜き出したものを、俺に差し出した。
割り符である。
二枚の割り符がそろうことで、「お仕事です」という文字が読み取れた。
くつろぎの時間はおしまいだ。
男は仕事に生きるもの。
自分にそう言い聞かせて、俺は席を立つ。
ヨコハマの自宅へ帰ってきた。
居間には芙蓉をはじめとした、いつもの面々がガンクビ揃えて待っていた。
♪ボンチカボン ボンチカボン
ボンチカボン ボンチカボン♪
BGMが流れてきた。
知っている曲だ。
♪パラッパ ぱっぱららっパッパラ♪
ビタースィート・サンバだ。
襖が開いた。緋影と出雲鏡花が現れる。満場の拍手が彼女たちを迎えた。
「日曜深夜月曜未明! 緋影と………」
「鏡花の!」
『オールナイト・ヤワラギ!』
これには提供がついていて、全国ネットで配信されていると嘘をついていた。
つーか、いま昼間だぞ?
「それでは最初にリスナー様からのお手紙ですわ、緋影さま」
「はい、ファンベルク町のカムイさんからです! ………この作者の話、デコ率高くね?」
「緋影さま、古の賢者はかく申されましたわ。ヒロインはおデコ出せ、と」
「賢者が語られたのでしたら、仕方ありませんね。次のお手紙です。同じくファンベルク町から、測距魔法のハントレスさん! ………私の彼氏が可愛らし過ぎて生きてるのがツライです」
「おしあわせそうですわね」
「本当は長々と彼氏さんとの秘め事の内容が綴られてますが、あえて割愛しますね」
褐色のハンターくん。愛のためだ、強く生きてくれ。心の中で祈る。
「さあ緋影さま、深夜放送といえばDJのあんパンですわ」
「そうなんですか?」
出雲鏡花、お前はいつから中島み〇きになった。
「鏡花さん、私はてっきりおもろない節とか、えっちなネタトークと思ってましたが」
緋影、それはツ〇コー師匠にまかせておけ。
「続いてのお手紙ですわ。………俺って、名前無いんだよねー。この町の探偵さんからですわ」
「大藪春彦先生の小説、名もない男を参考に強く生きて欲しいですね」
まず旨いものを食ってから、ストーリーが始まるんだな? しかもその旨いものは、必ず肉。とにかく肉、あえて肉。
「続きまして、参謀さんから。………上司に不満があります。………みなさまそうですわ、貴方一人ではありませんことよ?」
「使鬼たちなども、私のことをどう思っているものやら」
「うちの忍者は忠実なしもべですわ」
うん、忍者がイヤそうな顔をしている。
覆面しているが、それが分かるぞ。
「さらにお手紙ですわ。ワイマール王国のバカ殿様からですわビリッ!」
破きやがった! こいつリスナーからの手紙、破きやがったぞ!
「いきなりですね、鏡花さん」
「えぇ、緋影さま。内容に………俺の出番はまだですかな? とかホザいてやがりましたので。手紙書いてる暇があったら、国の負債を減らしやがれですわ」
「屋台でお酒飲んでる場合じゃありませんね」
「たぬき商会は、みなさまの日々の暮らしを応援しておりますわ」
応援するだけで、手助けはしてくれないがな。
「それではお時間となりました! 天宮緋影のニャンニャンしてね! また来週」
「緋影さま、キチク桃子の青春トライアングルですわ」
どっちも古すぎて、今や誰も知らないぞ。
まあ俺なら、原〇知世の星空アイランドを押すがな。
襖が開き、緋影と出雲鏡花が去ってゆく。
今回の二人はひどい目に逢うこともなく終了らしい。
だらしない奴らだ。
ノルマくらいきっちりこなして行け。
と思ったら、懐のむこうでガタンと音がした。
あーーっ! という二人の悲鳴。
そして水音。
見えない場所でこそノルマを果す二人に、使鬼と忍者たちから「ブラボー」「ハラショー」の声が上がった。
やはりちゃぶ台劇団たる者、こうでなくてはならない。
俺は満たされた思いを胸に、席を立った。
次回予告
カレーの国の側にある、紅茶の国。
そんな場所でピロシキの国の軍艦に、スキヤキの国の天宮緋影が鉄槌をくだす!
甘っチョロく考えている、緋影のオロシヤ艦隊足止め作戦は、果たして成功するのか?
次回、カレー大好きキレ〇ジャーに、絶対期待しないでください、お願いします。




