接触
リョジュン陥落。
それと同時にリョジュンのオロシヤ艦隊は、港をすててヤワラギ海へ姿を現した。
それをヤワラギ海軍の第二、第四艦隊が迎え撃つ。第一、第三艦隊は帰国し、整備を受けていたのだ。
ウラジオ艦隊を仕留めた実績のある、第二艦隊だ。その勢いはいまだ維持。リョジュン艦隊をも残らず平らげる。
司令官はまたもや名をあげることとなった。
さて緋影だ。
常に男爵とともに、というか俺たち三人で、男爵の護衛に当たっている。
もちろん芙蓉が周囲を偵察。瑠璃と輝夜が男爵を護衛。咲夜が緋影を護るというシフトを組んでいた。
男爵は人の多い場所を好んでいたため、直接的な手段に出てくる者はいなかったが、それでも芙蓉などは「男爵は人気者だねぇ」と言っていたので、それなりには狙われていたらしい。
そして芙蓉の言い方もまた、含みのあるものだった。刺客が迫っているのは理解しやすい。
その男爵が、ある日俺たちに言った。
「バルチック艦隊の進路にくわしい者がいる。革命運動の資金と引き換えに情報を得る」
え? ちょっと待て。
俺たちは男爵から離れることなく護衛していたんだぞ?
いつ、誰と接触して、そんな話になったんだ?
「レストランだよ、あのオロシヤ人のいるレストランさ」
スケベの化身のように男爵は笑う。
「ではみんなで、あのレストランに行こうか」
あのレストランには、渡仏以来何度か訪れている。つまり、あの店の人間から何らかのサインがあったのだろう。
「お兄さま?」
緋影が俺の袖を引く。
芙蓉が微笑んでいる。
刺客を探知したのだろう。
「輝夜を男爵のそばに控えさせてくれ」
「わかりました」
「芙蓉、刺客はどんな感じだ?」
「レストランに向かってるみたいだねぇ。でも視線がどちらに向いているかは、わからないよ?」
「どちらというと?」
芙蓉は笑いをひそめた。
「男爵に向いているのか、協力者に向いているのか分からない、って意味さ」
誰をねらったヒットマンか?
それは不明のまま、事態は進行する。




