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第46話・少しでも長く


1番良い告白のやり方ってどんなのなんだろうなぁ……。

直接、手紙、現代ならメールとかもあるよなぁ。まあこっちじゃケータイ自体存在しないが。

結局、どんな方法であれ自分の真剣な気持ちが、相手を好きだっていう気持ちが、しっかり伝われば良いんだよな。

綺麗な夜景の見える場所で2人っきりで、なんてアニメみたいなシチュエーションもいいよなあ……。


なんてボンヤリ考えながら、とうとうギルドに到着した。

現在時刻は午前7時。街もギルドもだいぶ活発になってきている。


「お、レニカさんおはよう!」


「マスター、おはようございます」


「ジーク、また弾取りに来てくれ~」


「ケージさん、今日私のお店来ませんか?」


「うおお、なんだこの穴!?」


街の住人たち、ギルドの仲間たちと挨拶を交わす。そして足は止めずいつものカウンターへ。

見慣れた3人が目に入る。

カウンターで洗い物をしながら話すテリシア、朝から若干飲んでいるメル、それをバカにするガルシュ。

普段ならそれを見てホッとするのだが、今日だけは違った。


嬉しい。

ただただ、テリシアの元へ帰ってこれたことが嬉しい。


そこで、2人が足を止めた。


「……?」


どうしたのかと、ケイジが振り向く。


「行ってこい」


「怒られても私のせいにはしないでおくれ」


そんなジークとレニカ。ついつい笑みがこぼれる。

顔を上げ、テリシアの元へ向かう。

テリシアがこちらに気付き、カウンターから綺麗な金髪をなびかせて出て来る。


ああ……。

やっぱり俺、テリシアが大好きなんだ……。


「ケージさん! もう、また私を置いてどこに……」


走って来たテリシアを、ケイジは抱き寄せた。

優しく、強く。

テリシアの暖かさを、感触を、この瞬間を噛みしめるように。


「け、ケージさん……?」


ギルドの仲間たちはその光景をポカーンと眺め、テリシアもオロオロしている。事情を知っているジークとレニカは、やれやれといった顔をしていた。


あれ……?

俺、何やってるんだ……?

今日、2人きりになってからちゃんと伝えるんじゃ……。

まあ、いいや……。このまま伝えよう……。


今までずっと、誰にも愛されて来なかったケイジ。そんな彼を、まっすぐな心で愛してくれたテリシア。ようやく自分の心と折り合いをつけることが出来た彼が、自由になった自分の気持ちを抑えられるはずがなかったのだろう。


「テリシア、好きだ。大好きだ。俺は君を、心から愛してる。ずっと、ずっと一緒にいてくれ」


生まれて初めての告白。強く抱きしめ、耳元で自分の想いを告げた。この言葉が、積もらせていた想いが、何物にも邪魔されないように。

周りは驚き、憧れ、呆れなど様々な感情が渦巻き、そして時間が止まっているかのようだった。

だが、彼女は違った。

突然のことに驚きながらも、テリシアはギュッとケイジの体を抱きしめた。彼女なりに、強く、優しく。


「私も、ケージさんが大好きです。ずっと、お側にいます。何があっても、あなたを愛し続けます」


ああ、嬉しい……。

分かっていても、直接返事を聞けるとたまらなく嬉しい。俺の大好きな女性ひとは、俺を大好きでいてくれたんだ……。


「はいはい、見世物じゃないぞー。仕事しろお前らー」


レニカがそう言うと、仲間たちはまたいつも通りに活動し始めた。だが、2人はそのまま動こうとしなかった。

少しでも長く触れ合っていたいと。

少しでも長く愛し合っていたいと。

少しでも長く繋がっていたいと。

そう主張するかのように。


そんな2人を、ジークとレニカ、そしてメルとガルシュは優しい笑みと共に眺めていたのであった。

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