第44話・必然
王都とユリーディア、及び他の3つの街を隔てる壁を全て撤去すること。
互いの街の住民、軍、ハンターを不当に傷つけること及び一切の軍事行動、戦闘行為を禁止すること。
検問所も廃止、種族や居住地に関係なく公平かつ正当な取引を推進していくこと。
まあ、これが主な改革内容だな。
ケイジ達は、城の中、玉座の間で王様や大臣達とレニカさんが話し合うのをルルカと見ていた。さすがに他国に侵略されかけたのは堪えたのだろう、王様も大臣達も至って冷静で、多種族に公平な条件も快く了承した。
これも後になって知った話だが、多種族に対して差別的に接触していたのは主に軍の、中でも#性質__タチ__#の悪い連中だったそうだ。そいつらの圧力のせいで住民や王様たちも心を閉ざさざるを得なかったらしい。今更それを聞いたところで都合のいい話だとはどうしても思っちまうが、まあ理解するしかないよな。
「あの、ケージさん」
これからのことをぼんやりと考えていたケイジに、ルルカが小さな声で囁きかけた。
「ん、どうしました?」
「もし良かったら、今から散歩しませんか?」
「え、今からですか?」
「はい。父上たちのお話はまだ時間がかかりそうですし、ケージさんとお話ししたいこともあって」
さすがにレニカさん放置して出ていくのは後々マズい気がしないでもないが……。
ん~、と考え込むケイジ。すると、ジークが背中をつついて言った。
「行ってこい。レニカさんには聞かれたら事情を説明しといてやるから」
「いいのか?」
「ああ。俺たちがこの世界に来たこともしっかり聞いておいてくれ」
「……分かった」
そうだった。
ようやく全てが分かったのだ。
この世界に来た理由、ケイジとジークが別々に転移した理由、ローブの男が言っていたこと、そして悪魔という言葉の意味。
それをルルカの言葉で繋ぎ合わせれば、今までの出来事が点から線になり、線になればそれをどこまでも伸ばしていける。
「じゃあ行きましょう、ルルカ姫」
「はいっ!」
嬉しそうに手を取るルルカを連れ、ケイジはこっそりと城を抜け出した。
間。
川沿いに描かれる緑のアーチの下を、ケイジとルルカはしばらく歩いていた。
「~~♪」
ルルカは楽しそうに鼻歌を歌いながらケイジの手をギュッと握っていた。
「必然、か……」
ケイジがポツリと呟いた。
防衛戦の前あたりまでは、俺は主人公じゃないと思ってた。他に誰か呼ばれるべき奴がいて、俺はそれに巻き込まれただけだと。俺がこの世界に来たのは単なる偶然だったんだろうと。
でも、実際は違った。俺もジークも、なるべくしてこうなってるんだろうな。そう思った。
きっと、この世界に来たことも、ガルシュやミルさん、メル、クロメ、ハク、レニカさん、それにテリシアに出会ったことも。
初めて#女性__ひと__#を好きになったのも、死にかけたっていうか1回死んだのも、生き返って来たのも、全部必然だったんだろうな。
全く、世界ってのはとことん変なことをする……。
「ご迷惑、でしたか……?」
「え?」
申し訳なさそうにルルカが言った。
「私たちの勝手な都合で呼び出して、それなのに儀式に失敗して全然違う場所に転移させてしまって……」
「……いや、そんなことないですよ」
もう言うまでもないだろうが、俺はこっちの世界に来ることが出来て本当に良かったと思ってる。そのお陰で、俺の人生全てが変わったのだから。
「俺もジークも、こっちに来れたから変われたし救われた。信頼出来る仲間も大切な人も出来た。だから迷惑なんかじゃないです」
まだこの世界に来てから1ヶ月も経っていないが、向こうにいた時の1年よりも濃い期間だった。楽しかったし、辛かったし、面白かった。十分すぎるほど充実している。
「それにタイミングこそ遅くなっちゃいましたけど、姫様も王様も無事でこの国も守れたし。万々歳ですよ俺らからすれば」
きっとこの先、この国ももっと良い方向へ変わっていくだろう。
そんな気がする。
「だから、俺たちを呼んでくれた姫には本当に感謝してます」
様々な想いとともに、穏やかな笑顔でケイジはそう言った。すると、ルルカも恥ずかしそうに笑いながら応えた。
「えへへ、そう言って貰えるとありがたいです」
可愛い……。
なんだろう、何処と無くテリシアと似てるような感じがするんだよなぁ……。
「じゃあそろそろ戻りましょうか」
薄暗い空が段々と明るくなってきている。
ケイジもジークも、ルルカもレニカさんも徹夜だった。疲れもだいぶ溜まってきている。
はあ、睡眠不足は体に悪いんだよなぁ……。
そんなことをぼんやりと考えながら、2人は城に戻っていった。




