第43話・トラウマ
「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」
第43話です!
浮気ダメ、ゼッタイ。
よろしくお願いします!
ガチャリ、ギイイイ……。
古びた音を立てて牢屋の扉が開いた。中からは数人の男達が出てくる。
「はあ、はあ……」
「国王、ご無事ですか?」
「ああ、お主らも皆生きておるな……?」
囚われてから何日経っていたのかは分からないが、恐らくまともな食事も与えられていなかったのであろう、皆衰弱していた。
「さて、じゃあとりあえず後は自分たちで手当てなり食事なりしていてくれ。あいつらは全員逃げてったから」
牢屋の鍵を渡し、ケイジが言った。
すると、大臣らしき男達や将校達はホッとしたような顔をしていたが、国王だけは不安そうな顔をして言った。
「ル、ルルカは、ルルカはどこじゃ? 無事なのか?」
「……申し訳ない」
突然ケイジが訳のわからないことを言い出した。
「な……ど、どういうことじゃ!? ルルカはどうなった!?」
「…………」
胸元を掴まれているが、ケイジは答えない。こいつは一体何がしたいのだろうか。
すると。
ゴン。
「いってぇ!?」
「まったく、何やってるんだ……」
ジークのゲンコツがかまされた。
「大丈夫だ、ルルカ姫も無事だ。今は俺たちのギルドで保護してる」
「そ、そうか、良かった……」
ジークの言葉を聞き、国王は安心したようにその場に座り込んだ。
「ほら、行くぞケージ。姫とレニカさんを呼びに行かないと」
「お前、結構強めに殴っただろ……」
「まさかまさかそんなことは」
「棒読み……」
結局、国王含め囚われていた奴らがあまりにも弱っていたため、ケイジ達は彼らを食堂や救護室まで連れて行ってからギルドに向かった。
間。
十分後。
場所は変わりギルドの中にて。
ケイジとジークはカウンターの近くで正座していた。
「…………」
「…………」
しかもその隣にはロープでぐるぐるに縛られ、いくつものタンコブを頭に作り、涙目になったレオルが座っている。
レニカさんにやられたんだろうな、痛そうに……。
何があったかって?
いや、まあ、うん……。
さっき、いや少し前にさ。このライオン野郎をぶっ飛ばしただろ?そうそう、ダブルパンチで。それでな、ぶっ倒したのは良かったんだけどもな。飛んでった方向が……。
そう、ギルドの方向に吹っ飛んで行っちまってな……。ユリーディアと王都を隔てる壁もぶち抜いて、そのままギルドも貫通して飛んで行ったらしくて。それを引っ張って来て縛り上げて、ゲンコツしたのがレニカさんらしい。で、俺とジークが帰って来たらすごい怒られたんだ……。今は姫さんと一緒に王都に行く支度してるけど、それまで正座してろって言われて……。
あ、レニカさんと姫さまが来た。
「さて、行くぞ2人とも。少しは反省したか?」
「いやまあ、謹んでお詫び申し上げます」
「マジですいませんでした」
頭を下げる2人。
レニカも本気で怒っているわけではないようだったので少し安心した。
「ふっ、やれやれ。じゃあ王都に行こう。そいつを連れて行ってくれ」
「あいっす」
「ケージ、どうやって運ぶ?」
「あー、そうだな。じゃあまた人間大砲で……」
「た、頼む、それだけは勘弁してくれ……!!」
ケイジが提案した時、レオルが絞り出すような声で必死に懇願した。
さ、さすがに痛かったんだろうな。
「な、何をしたのかは詳しくは聞かないでおくが、他の方法にしてやったらどうだ?」
「ま、まあ確かにもう1度アレをやるのは俺も気が引けるからな……」
「おおう、そうか……。それなら、普通に箒にロープ縛って飛んでくか。2人がかりで」
「了解だ。名案だな」
ケイジとジークがそう言うと、レオルは少しだけホッとしたような顔を浮かべた。本当にトラウマになっているようだ。
「あ、あの、父上は無事ですか……?」
ケイジとジークが箒にレオルを縛っているロープを括り付けていた時、ルルカ姫が口を開いた。ずっと心配だったのだろうか、声が震えていた。
すると、そんな姫を見てケイジが優しく言った。
「……もちろん、無事ですよ。王様も大臣たちも、皆城で姫様の帰りを待ってます。さあ、行きましょう?」
「は、はい……!」
安心したようで、涙目で、それでも嬉しそうな顔をしてルルカはケイジの手を取った。
間。
「姫様、大丈夫ですか?」
「は、はい! 風がすごく気持ちいいです!」
今か?
今はレオルを箒に括り付けて、ジークと2人がかりで運んでる。何故か知らんけど姫様も俺の箒に乗ってる。危ないからレニカさんの方に乗ってくれって言ったんだけどな……。
え?
タラシ乙?
いやなんでだよ。
ま、とりあえず今回はこれで一件落着だろうな。ここからお互いどうしていくか決めるのは、俺達の仕事じゃない。
「やっぱり、あの予言はあまりあてになりませんね……」
ルルカがぽつりと呟いた。そして、ケイジはそれを聞き逃さなかった。
「……どういう事ですか?」
「確かに、私達を助けてくれたのは貴方がたお2人ですが、お2人とも悪魔になんか見えませんもの。きっとお2人は悪魔なんかじゃなく、この国を救う聖戦士だったんです」
ケイジ は 「聖戦士」職業カード を手に入れた!
転職しますか?
はい
いいえ ⬅︎
「聖戦士、ですか……。いい響きですね」
「ふふ、そうでしょう?」
ルルカは嬉しそうに笑った。
まあこっちはまったく笑えないんだけどな。正直、当たってるよな。その予言って。ジークはどうか知らないが、少なくとも俺は悪魔に違いないと思う。いや、言葉が微妙に違うだけで俺もジークも悪魔みたいなもんか。「死神」と「悪魔」じゃあ大分意味合いが違ってくるが、たぶん同義なんだろうな。
「あの、ケージさん」
ケイジが予言について悶々としていると、再びルルカが口を開いた。
「はい、どうしました?」
「えと、その、お2人はこの件が終わったら、またユリーディアにお戻りになってしまいますか?」
「……と言うと?」
ケイジは敢えてルルカの方を振り向くことなく淡々と尋ねた。
「もしお2人がよければ、これからもこの国を、私達を、守っていただけませんか? も、もちろん恩赦は沢山用意しますから!」
あー、雇いたいってことか。まあ、無理だけど。そもそも俺らの本職は守る方じゃなくて殺す方だし。
それにテリシアもいるしな。浮気ダメ、ゼッタイ。
「申し訳ありません。残念ですがそれを引き受けることは出来ません」
「そ、そうですか……。ですよね、すみません急に無茶なお願いを……」
途端に落ち込んだのが丸分かりな声色でルルカは言った。
ああもう、そんなに落ち込まないでくれよ。
「ああ、大丈夫ですよ。無理だっていうのは、王都に行くのがってことです。困った事があったら言ってくだされば、俺達はいつでも助けますから」
「ほ、本当ですか?」
「ええ、もちろん。あ、そうだ。じゃあこれを渡しておきますよ。何かあったら、この真ん中をグッと押してください」
そう言って、ケイジは真ん中に赤い宝石の付いたペンダントを渡した。
もちろん、魔法の細工がしてある。真ん中の赤い宝石を押すと、魔法的不思議パワーで俺だけにそれが分かようになってるんだ。だから、反応があったら向かえばいい。
「分かりました、ありがとうございます」
ルルカはケイジからペンダントを受け取ると、嬉しそうにそれを少し眺めて、首に付けた。
「よく似合ってますよ」
「ふふ、ありがとうございます」
他愛ない会話をしながら、4人と1匹は王都に向かって行った。
「……あいつ、確実に浮気してますね」
「だな。これはぜひともテリシアに報告しなければ」




