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第42話・倒し方がサーカスみたいな件について

「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」

第42話です‼︎

ケージくん、1つやらかしてることに気づかないもんですかねぇ……。

よろしくお願いします‼︎


「ガアアアアッ!!」


胸元を狙う槍を最小限の動きで躱し、斬る。後ろから斬り掛かってくる奴には重力魔法で地面にめり込んでもらった。

間髪入れず全方位から敵兵が襲いかかってくる。そしてその足元を凍結させ、剣を一回転。その直後に発生する高威力の衝撃波で吹き飛ばした。

弓兵が放つ矢は速度を倍にしてお返ししてやった。

魔術師が放つ火球やらエネルギー弾やらを全て叩き斬って魔法攻撃の手本ってやつを見せたやった。


「何だ、口ばっかかお前ら。全然大したことないじゃんか」


「ぐっ……」


怒り狂っていたレオルも、家臣たちに止められて戦闘には参加してこない。兵士の輪の外側から赤い目で戦闘を凝視していた。


めんどくせえ、一気に片付けるか。


右手に大きめの魔力を充填させ、地面に手を置く。


「モン◯ン風シビレ罠!!」


そう叫んだ瞬間、かなりの大きさの電流があたり一帯に流れた。周囲にいた数百人の敵兵たちはみな、意識を喪失して倒れた。


え?いや、殺してはいないぞ。

防衛戦の時よりは電力を上げたけど、死んではいないはず。たぶん。


一気に倒れた敵兵たちの中を悠々と歩くケイジ。


「ほれ、ボス部屋到達したぞ。早くやろうぜ」


「フーッ、フーッ……貴様、何者だ……!!」


今すぐにでも襲いかかって来そうだが、レオルはそう聞いて来た。


「俺か? 俺は『死神』だ。遭遇したお前らに運が無かった。それだけだ」


ちょっとカッコつけてみた。まあ実際向こうじゃそうやって呼ばれることもあったし。


「ふ、ふざけるなああああああ!!」


レオルは叫び、もう我慢できないといった様子で大きな戦斧を振りかぶった。


「おーい、遅すぎるんですけどー」


普通のハンターが相手だったら一撃で仕留められるだろうが、身体能力強化の魔法を使ったケイジにはそんなものが当たるはずがなかった。

すいすいと、両手をポケットに突っ込み余裕で回避する。


「グオアアアアアアアアアッ!!」


怒りのままに戦斧を振り回すレオル。


なんか、つまんねえなおい。防衛戦の時の方がよっぽど熱い戦いだったんだが。エルのやつ、ここまで強くしてくれなくても良かったんじゃないか?


いい加減避けるのにも飽きて来て、もう終わらせようと思い腰の剣に手をかけたその時。


「おわっ」


倒れていた敵兵の1人がケイジの足を掴み転倒させた。そのまま戦斧を振れば2人ともまともに喰らうが、レオルも敵兵も構う様子はなかった。


「やべっ」


急いで魔力を集めえたその時。


バギイイイン……と豪快な音を立てて、レオルの戦斧は粉々に砕け散った。

そう、ジークの狙撃である。


ほお、魔法で撃てば銃声も鳴らないのか。便利なモンだな。


「まったく、何やってるんだケージ。油断しすぎだぞ」


「うっせ、避けられたわ。姫さんは?」


「ギルドだ。今はレニカさん達と一緒にいるから大丈夫だろう」


「マジか。瞬転移も使ってないのに大した速さだな」


呑気に話している2人だが、その最中もレオルの拳を避け続けている。ジークもケイジと同じく、元々の動体視力に加え魔法の強化がある為、この程度の攻撃が当たるはずがなかったのだ。


「ハア、ハアッ……!!」


な、なんかそろそろ見てるのも可哀想になって来たな。いい加減終わらせてやるか。


周りには再び沢山の兵士たちが集まって来ていたが、レオルの拳を会話しながら楽々と避ける2人の男への恐怖から近付けずにいた。


「あ、そうだ。ジーク、こいつにアレ喰らわしてやろう」


「アレ? アレってなんだ?」


「お前が城に入るときに俺にやったアレだバカ野郎」


「ふはっ、アレか。よし分かった、じゃあ動きを止めてくれ」


「オッケーだ。あ、真上に撃ち上げてくれ」


ジークが一歩後退し、ライフルに魔力を溜め始める。

そう、最初に城に侵入するときにやった人間大砲だ。いや大砲じゃなくてライフルなんだけども。


「スタン!!」


レオルの攻撃を避け、隙を突いて胸元に手を当て、気絶しない程度の電流を流す。


「ガ、グ、ガア……!!」


「ぬ、おお、重いんだよお前……!!」


ガクガクと痙攣するレオルを筋力強化を使ってどうにか持ち上げ、ジークの方を向く。


「よし、いいぞ」


「ぐ、オラアッ!!」


ジークの頭上に痺れるレオルをぶん投げた。そして、ジークがその尻に上手い具合にライフルの銃口をぶっ刺す。


うわあ、痛そう。痔になりそうだあれ。


「それじゃ、快適な空の旅をお楽しみください」


「グオアアアアアアアアアアアアアア!!」


そう言ってジークが引き金を引くと、凄まじい勢いでレオルは空へ飛んでいき、あっという間に小さな粒にしか見えなくなった。


「んーと、落下地点はこのくらいか?」


「あー……いや、少し右だな」


空を舞うレオルの動きと風向きを考え、落下してくるであろう場所に陣取る2人。

そしてそれぞれの利き手に思い切り魔力を溜める。


「おし……じゃあ、タイミング合わせろよ」


「任せろ」


最高点まで到達したレオルが、未だに痺れたまま一気に落下してくる。


「「オラアアアアアッ!!!!」」


そこにタイミングを合わせ、2人の魔力が篭った全力パンチが炸裂した。


「ゴハアッ!!」


そしてそのままレオルの体は壁や民家を突き破り、見えなくなるまで吹っ飛んでいった。


「よっしゃ、任務完了だな」


「いや、まだあいつらが……」


そう言って2人が残った兵士たちの方を振り向くと、兵士たちは一斉に逃げていった。方角的に考えて、上陸してきた場所から再び船で国へ逃げるつもりなのだろう。


「任務完了、だな」


「うっし、お疲れさん」


グッと手を握り合う2人。


「なんか、ぶっちゃけ防衛戦より盛り上がりに欠ける任務だったな」


「なに、実戦なんてそんなもんだろう?」


「ま、それもそうか。それで、こっからどうする?」


「うーむ、まずは王様達を牢屋から出して、ギルドから姫さんとレニカさんを連れて来て、後始末とこれからのやり方について話し合って終わりってとこだな」


「オッケ、じゃあ地下牢行くか」


こうして、王都での戦闘は幕を閉じた。

だが、この後とんでもない恐怖が2人を待ち受けていることは、まだ知る由も無いケイジ達なのであった。

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