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第95話・再会


「ミツバか。良い名前じゃないか」


「だろ?」


あと1時間ほどでユリーディアに到着するかという頃。ジークはミツバを連れて船内でユリーディアに関する簡単な説明をしており、隣には鎧を脱いだエリスがいる。


「どういう意味が込めてあるんだ?」


穏やかに尋ねるエリスは、とても軍人には見えないほどに綺麗だった。表情からも声色からも、現状に決着を付けて安心していることが分かる。

もちろんまだ完全ではないけどな。


「俺の故郷には諺ってのがあってな。簡単に説明すると短い言葉に深い意味を持たせるものなんだが、その中に『三者三様』ってのがあるんだ」


「さんしゃさんよう?」


「人が3人いれば、3種類の在り方がある。確かそんな意味だったはずだ。で、俺はその時に間違って三者三葉って覚えててな」


懐かしい記憶だ。確かこんなタイトルのアニメもあったよな。


「下の部分をとって三葉。この世界で出会った奴らははバカみたいに個性的なのばっかりだが、誰に似ても立派に育つだろうって意味を込めたんだ」


まったく、お前らにこんなネーミングセンスがあるとは思わなかった。

感謝するよ。


「そうか……素敵な意味じゃないか。あの子もきっと、良い人生を歩めるだろうな」


「ま、お前もそうだけどな」


「私か?」


エリスは不思議そうにこちらを見る。


「ああ。部下も無事だし、レニカさんにも会える。公国が何かしてきても俺たちが付いてる」


「ケージ……」


「お前だって好きな様に生きればいいんじゃないか?」


そう告げながらエリスの方を見ると、エリスは優しく俺の体を抱きしめた。


「エリス?」


「お前という奴は……これだけのことを私たちにしておいて、何も要求しない挙句好きな様に生きろだと?」


「お、おう」


「ふふ……」


薄い布を隔てて伝わる体温は暖かく、透き通るようなエリスの魔力も感じられる。

何よりレニカさんにも似た豊かな双丘の感触が、なんかこう、凄い。


「本当に、私は良い友を持ったのだな」


「よせやい」


離れる双丘の感触に若干の名残惜しさを感じつつも、穏やかな笑顔を浮かべるエリスは今までで1番綺麗だった。


「本心さ。これからも、よろしく頼む」


「ああ、こちらこそ」


出された右手を握り返すと、向けられた微笑みに思わず固まってしまった。

そんな様子を察してか、エリスは部下たちの元へ歩き出した。


「じゃあ私は彼らと話してくるよ。また後でな、ケージ」


「おう」


軽く手を振り、エリスを見送る。

やがて姿が見えなくなると、ゆっくりとその場に座り込んだ。


「はぁ~……」


何あの人、あんなに可愛かったか……?

ぶっちゃけまだドキドキしてるわ。


あ?

エリスも狙うのかって?

いやいやさすがにそれはやばい。プレッシャーで胃に穴が空くから。


やれやれ、活き活きしてる奴は本当に魅力的だから困る……。






間。






「ここがユリーディアか……」


和国を出発してから約7時間、ようやくユリーディアの港に到着した。日も暮れているが、事情を知っている仲間たちは出迎えに港に集まってくれていた。


「よう、無事だったか2人とも!」


仲間たちの先頭に立つのは快活な緑のアイツ。


「おう、ただいまガルシュ」


「色々と手間掛けさせたな」


今回は倭国へ赴いていないが、情報収集やエリスの部下たちの住居の確保など多方面でサポートしてもらった。


「いいってことよ! テリシア達はギルドで待ってるから、行ってやんな! 住民たちは俺が案内しとくからよ!」


「何から何まで悪いな。よし、行くぞエリス」


「ああ」


船から降りてきたエリスは、ガルシュのことをしげしげと見ていた。他種族がほとんどいないノスティア公国出身ならばそうなる気持ちも分かる。

そんなエリスを見ても、ガルシュは嫌そうな顔ひとつせずニカッと笑うのだった。


「その人がマスターの妹さんか?」


「ああ、そうだ。やっぱ面影あるよな」


「おお、目元とか似てるよな。オレはガルシュだ! よろしくな!」


突き出された緑色の右手を見て、こちらをチラリと見るエリス。不安にもなるだろうが、俺は自信を持って頷いた。

すると、エリスは意を決したようにその手を握り返し、いつもの笑顔で言った。


「エリス・イークラムだ。よろしく頼む、ガルシュ殿」


ガルシュは満足気に笑い、そんな2人を見て俺達もまた安堵するのだった。


すると、もう1人の仲間が、俺の新しい家族が同じく船から降りてきた。


「ミツバ、足元気を付けろよ」


「う、うん」


しばらくの間ジークと話していたミツバは、いつの間にか俺たちにたどたどしい敬語を使うことはなくなっていた。港の奥に見えるユリーディアの街に目を輝かせているように、本来は好奇心旺盛な明るい少女なのだろう。


「ん、その子は?」


「新しい家族だ。ミツバ、コイツはガルシュ。俺たちの仲間だ」


最初は目に入る人間全員に怯えていたミツバも、今では強面のガルシュを前にしても動じない程度にはリラックスできているようだった。


「ミツバはミツバです! よろしくお願いします!」


幸か不幸か、奴隷時代に叩き込まれたであろう最低限のマナーのお陰で敬語もある程度は扱えるようだ。俺やジーク、エリスに使わないのは最初に言葉を交わしたからだろう。


「おう、よろしくな!」


ガルシュがガシガシと頭を撫でると、ミツバは嬉しそうに目を瞑った。多少乱暴でも、愛情を持って触れられることが嬉しいのだろうとジークは言っていた。

すると、その場に彼女が現れた。


「すまない、遅くなった。私も案内を手伝おう」


「レニカさん、どうも」


「ああ、2人とも無事で……」


そこまで言いかけて、ふとエリスと目が合った。2人の動きが止まる。


「エリス……?」


「姉さん、久しぶり」


瞬間、レニカさんはエリスを抱き寄せていた。その両腕は微かに震えている。


「本当にエリスなのか……?」


「うん、私だよ、姉さん」


エリスも同じようにレニカさんを抱きしめた。そんな2人を見て、辺りに静寂が流れる。


「もう、ずっと会えないかと……私は、私は……!」


「うん……」


「あの時助けられなくて、ずっと……!」


「いいよ、姉さん……」


「くっ……!」


多くの仲間達が初めて見るであろうレニカさんの涙。同じようなシチュエーションで、確かレニカさんはこうしてくれたっけ。


「ほれほれ、見世物じゃないぞ~。動け動け~」


そんな意図を察した仲間たちは、再びワイワイと動き始めた。船からはエリスの部下とその家族たちが続々と降りてくる。

ガルシュを筆頭に、仲間達が案内を始める。そんな様子を見守りつつ、俺たちは静かに2人の元を離れた。


「邪魔するのもなんだしな。俺達もギルドに行こう」


「そうだな。メル成分を補充したい」


「お前ほんとキャラ変わったよな……」


「ギルド……?」


「ああ、皆が集まる大きな建物だ」


「楽しそう……!」


男2人と少女1人。何とも言えない組み合わせで、懐かしい街の中を歩いていくのだった。







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