Ⅲ
クリスタとの軍略会議が終わると、周りは黒天となり、他の者達はもう寝静まっている時間であった。
さんざんクリスタに付き合っていたため、クラウドはもうヘトヘトであった。
クリスタの部屋を後にして、自分の部屋へと戻ろうとしていた。
しかし、誰かが疲れているクラウドに不意に話をかけてきた人がいた。
「クラウドさん!」
自分の名前を呼ぶ声がした。疲れた身体をゆっくり振り返るとそこにはまだ幼い雰囲気のある男の子が話をかけてきた。
「これは…リオンじゃないか?どうしたんだ?」
クラウドに話しかけてきた人物、金髪で顔は整っているものの子供らしい顔つきをしているその子供は、女王オリーシャの末の息子である リオン・キース・エルネスト であった。
彼はまだ10歳であり末っ子であるので上の3人の姉や母親から甘やかされて育てられてきた。
しかし、我侭で自己中心的な子供にはならず、人のことを思いやる立派な子供であった。
そして、リオンはクラウドのことを実の兄のように慕っている。だからクリスタと同じようにタメ口で話している。
「どうしたんだ?勉強がわからないのか?」
「え?うんとね…もう寝る時間だからおやすみの挨拶しようと思って…」
恐らくリオンは気づいていたのだろう、クラウドが疲れていることに。
本当はクラウドに用があったはずだ。それなのに自分のことは後にして他人を優先した。
きっとこの子は立派な大人になるはずだ…そうクラウドは考えていた。
「そうか、じゃあおやすみ。」
「うん、おやすみなさい。」
2人で軽く挨拶をしてそれぞれの部屋へと戻った。
しばらく歩いて行くとようやく自分の部屋へとついた。疲れた体を動かしベッドの方へともたれていった。
その時ベッドから「きゃ!」という声がした。
その声に驚いたクラウドは、慌てて立ち上がり布団を勢いよくめくるとそこには寝巻きになったクリスタがいた。
「な、…何をしているんですか!?クラリア様!!!!」
「えぇ!?あ、あのね…クラウドのベッド気持ちいいから……」
「いや、そういうこと言っているんじゃありませんよ!
なんで私の部屋にいるんですか?と聞いているんです。」
ベッドに潜り込んでいたクラリアに驚いたクラウドは、何故このような行為をしたのか聞いていた。
それに寝巻きのクラリアの髪は少し濡れており、おそらく風呂に入ってきたのだろう。
いつものクラリアと比べてとても色っぽかった。
「クラウドと一緒に寝たいなぁ〜って……それで……」
クラウドの問い詰めに対して、クラリアは控えめに答えた。
「1人で寝ることはできますよね?」
「寂しい……」
「……」
寂しい……この言葉が深くクラウドの心に刺さった。
彼女には、味方という人間が全く周りにいない。いつもいつも、無能姫と呼ばれ、蔑まれまだ17歳の少女であるクラリアにとっては耐え難い苦痛だった。
彼女の味方であったのは彼女の父親、先代国王 王女たちのお世話係をしているグランドル そしてクラウドだけであった。
「お願い……一緒にいさせて?」
涙目になりクラウドの目を見て訴えかけていた。
彼女のその姿をみたクラウドは断るなんてできなかった。
「わかりましたよ……今日だけですよ?」
「ありがとうクラウド!」
今まで悲しそうな顔をしていたクラリアは笑顔を取り戻してニッコリと笑っていた。
そしてクラウドのベッドへと入ってきた。
「じゃあ明日もはやいんで寝ますか?」
「そうだね!」
そう言うと2人はベッドに入り寝ることにした。
「おやすみなさいクラリア様」
「おやすみクラウド…」
2人はお互いにおやすみの挨拶をして、灯を落とした。
クラウドはクラリアの方を見ると既に眠りについていた。
「大丈夫ですよ……貴女のことは私が守ります……何があっても…」
クラウドがそういうと、クラリアはどこかしら安らかな顔になっていた。それは小さな赤ん坊が母に抱き抱えられているような顔であった。
こうして今日という日は終わりを迎えた………