IV
チリンチリンチリン………
朝を教えるベルが城中や街中に響きわたった。毎朝この音を聞いてエルネスト王国の民達は起きたり、仕事に行ったりと日常生活をはじめていた。
当然それは城の中でも同じであった…
「起きてください。クラリア様。朝ですよ?」
「うぅん………もうちょっと……」
クラウドが起きるように促したのだが、クラリア本人は起きるのを嫌がっており、再び眠りにつこうとした。
だが、クラウドはそうはさせなかった。
「起きないと…もう膝枕も撫でるのもしませんよ?」
「だ、だめ!」
ほら起きた。クラリアを起こすにはこれが1番手っ取り早い。起きたクラリアの髪毛は寝癖がついており荒ぶっていた。
「おはようございます。可愛い髪型ですね?」
「え?」
クラウドから突然そんなことを言われて慌ててテーブルに置いてあった鏡を見ると、口を開いたまま唖然としていた。
まるでライオンのたてがみのようになってしまったその髪型は、とても人に見せられるものではなかった。
「クラウド!こっち見ないでよ〜!!」
自分の髪型に恥ずかしさを感じたクラリアは慌てて手で直そうとするものの直るわけもなく、余計に強調されてきた。
「お、お風呂入ってくる!!」
「いってらっしゃいませ。」
そう言うと彼女は出ていってしまった。
クラウドはベッドから起き上がり、いつもの服に着替えて、食堂へ朝ごはんを食べにいった。
クラウドは食堂へつくと、他の兵士たちもそこにはいた。カウンターで給仕の女性にご飯をもらい、テーブルで食べていた。
「よう〜、クラウド。お前も朝飯食いに来たのか?」
食堂のテーブルに座ってご飯を食べていたクラウドに誰かが話をかけてきた。
「なんだ、カイルか。」
クラウドは目の前の赤髪の少しチャラそうな男に一言そう言うと、また食べることに集中し始めた。目の前の男をほったらかしにして。
「いやいや、一言言ってスルーをするなって。
お、今のダジャレ面白かっただろ?」
「帰れ。」
なんとも寒いダジャレを言われたクラウドは、冷たい眼差しでカイルを見ていた。
今クラウドの席の目の前でたって話をしている人物はカイル・エーゼルバッハ 遊撃部隊ガーディアンの7番隊隊長である。
エルネスト王国では、戦争のさいに上手く兵を動かすことのできるように「連隊制」を行っている。
「そんな冷たいことをいうなよ〜。そんなんじゃ女に嫌われるぞ?」ニヤ
「もうお前殺してもいい?いいよね?」
クラウドはこの男にだけは言われたくない!!っと思っていた。
実際カイルはモテており女性からの人気が高い。
なんとも羨ましいことだ。
「怒るなって?全部冗談だから。」
この男は、いちいち癇に障るような発言をしてくるのだ。普通の人とであれば喧嘩に発展するくらいだろう。
だが、慣れているクラウドにとっては普通の会話の一つとして捉えている。こういう扱いにくい人間も上手く扱えるようになるのが1人前の軍師になるということだ。
クラウド流の軍師の条件の一つであるのだ。
「そういや、今日セラフィスさんとイヴァンカさんの軍事演習があるらしいが……見ていかないのか?」
カイルは真面目な話に切り替えて、クラウドに話してきた。
「そうだな……少しくらいは見ておこう。次の戦いに役に立つかもしれないしな。」
そう言うとカイルからの提案を承諾し、朝ごはんが食べ終わると、
演習場所へと向かうことにした。
カイルに言われていたとおりに演習場所へくると早速やっていた。
今は陣形を組んでおり、模擬戦を行っていた。
その中で兵士達の攻撃を受け止め、魔術と槍術で相手を圧倒している女性がいた。
「もっとこい!それでは私を倒せんぞ!!」
猛々しくまるで男のようであるが、顔は女性っぽく、緑色の長い髪を横で結んでおり、胸にはなかなか立派なものがついていた。。動くたび揺れており、ある意味武器のようなものであった。
「流石は、イヴァンカだな。無傷の騎士の名は伊達じゃないよ。」
彼女はイヴァンカ・フランクハート 。ガーディアン1番隊隊長であり、エルネスト王国の誇る戦力、エルネスト五大将軍の1人である。
彼女はクリスタの師匠でもあり武芸と魔術にとても秀でている。
その強さは、たった1人で5万の軍勢を相手にして、無傷で倒したという武勇伝があるくらいだ。
「そうあんたに何度もやられるような、私じゃないわよ!
陣形交代!鶴翼の陣から鋒矢の陣よ!」
もう一人少し離れたところから指示を出している少女の姿があった。紫のロングヘアー身長は160くらいの少女であった。
彼女の名前はセラフィス・ドレッドノート。手には軍配のようなものを持っており、おそらくこの模擬戦に置いての総大将であろう。
「なるほど……攻め続けるイヴァンカに攻撃を与えるために鶴翼を鋒矢に……セラフィスもやるな。」
しっかりとクラウドもこの模擬戦にて自分に吸収できるものを探して吸収していた。
やはり軍師という役目を負っている以上は兵士たちを無駄死にさせずどのように勝つかが大切である。そのためにこのように勉強することを惜しまないのだ。
「ふん、今更鋒矢に変えたところで私を止められないぞ!!」
そう言うと、イヴァンカへと向かってきた兵士達を自分のもつ槍で薙ぎ払った。兵士達は空高く飛ばされて不時着したところは50メートルも元の場所から離れていた。
「少し本気でいかせてもらうぞ。くらえ!サンダーウェーブ!!」
イヴァンカがそう言うと、自分の槍を地面に突き刺してそこから雷を大地に流した。
地面をはっていく雷に兵士達はやられてしまい、セラフィスのところまで届こうとしていた。その時、突然電気が消滅した。
クラウドには何が起きたか全くわからなかった。
だが、彼女が全く無事であるということだけがわかった。
「イヴァンカ。あんたの雷は強いけど射程範囲くらいは把握してるわよ!」
「だからどうした!?わかったところで私を止められなければ意味はないぞ!」
「学習しないわね…今、あんたが本陣を離れたことでがら空きなのよ。」
セラフィスがそう言った瞬間イヴァンカの背後からセラフィス軍の兵士が現れた。そして、兵士達はまっすぐと相手本陣へと進行していた。
「な!しまった!ですぎた!!!!」
「おバカね。さぁ、一気に畳み掛けるわよ!!」
セラフィスがさらに号令を掛けたことで、兵士達の士気が上がり止められなくなっていた。
「ならば、お前を倒すまでだ!!セラフィス!!」
「ちょっ!イヴァンカあんた模擬戦なのよ!」
「ははは。本陣に敵がつく前に相手を倒すか…さすがイヴァンカ!でもそれじゃぁ勝てないよ……」
クラウドは、イヴァンカのセラフィスへの強襲を仕掛けようとしているところを見てそう言った。
もう少しでイヴァンカの槍はセラフィスへと届こうとしていた。
しかし………
「そこまで!!」
突然声が聞こえた。恐らく模擬戦終了の合図であろう。
結果としてセラフィスの軍が勝利となった。
「くっ………悔しい!!私がついていながら!!負けるなんて……。」
「全く……模擬戦なんだからあんまり無茶しないでよ!イヴァンカ!」
「悪い……。つい熱くなって……」
イヴァンカはセラフィスに謝っていた。まぁイヴァンカが本気をだしてしまうとただではすまないため当然のことだろう。
「おーい。二人とも!」
さっきまで模擬戦を見物していたクラウドが話していると二人の元へ駆け寄った。
「おぉ、クラウド!見ていたのか!」
「あら、クラウドじゃない?」
イヴァンカとセラフィスがほぼ同時に声をかけてきた。
「あぁ見ていたよ。いいものを見せてもらったよ」ニコ
「私の采配すごかったでしょ?」
セラフィスがクラウドに自分の模擬戦においての采配の評価を聞いてきた。
それと同時にドヤ顔もしていた。
「あぁ、確かにすごかったよ。でもまだ甘いよ。
本来ならイヴァンカをもっと押すことができたはずだよ。
他にも……」
的確に采配の評価をしていた。さすがは伊達に一年間軍師をやっているだけである。
セラフィスの采配の良いところや悪かったところを丁寧に説明していた。
「うーん…そうか…。もう少し頑張らないとね!」
「充分セラフィスは頑張っているよ。」ニコ
クラウドはニッコリとセラフィスに向かって笑った。クラウドの笑顔を見ていたセラフィスは頬が赤くなっていた。
「(はぁ……!クラウドの笑顔いいわ〜!ご飯が何倍でもいけそうよ!!)」
セラフィスは自分の頭の中で妄想を広げていた。どこかしら楽しそうだ。
「クラウド!!私はどうだったか!?」
今度は、イヴァンカが模擬戦の感想と評価を求めてきた。
「イヴァンカはほんと強いね。でも強いからって1人で先走りしすぎると足元をすくわれるよ?気をつけてね」ニコ
「そ、そうか…そうか……」
イヴァンカはセラフィスとは違い少し悲しそうな顔をしていた。
恐らく、痛いところをつかれた為である。
「じゃあ俺は城の方に戻るからまたね。」
そう言うと二人のいる場所を後にして、城の方へと向かっていった。
「あぁ……幸せ。」
「もっと精進しないとな……。」
全く違う表情の二人。彼女達は去っていったクラウドの背中を見えなくなるまで見ていた。




