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我が栄光は姫のために!!  作者: 石田未来
第一章 無能姫
2/12

 クラウドは大きな廊下を通っていった。途中にエルネスト王国の家来たちとすれ違い軽く会釈を交わしたりした。

 そして、ようやく目的地に着き、大きなドアの目の前のところまできた。

 ここは、女王陛下のプライベートルームであるのだ。執権になってからはここにいることが多くなっている。

 さっそくドアをノックした。


 トントン…


「どうぞ」


「失礼します。」


 ドアの向こうにいる女王陛下に許可をもらい、入ることにした。


「あら、クラウドじゃない?報告しに来たのね?」



 女王陛下は、ソファーでくつろぎ紅茶を飲んでいた。なんとも優雅であろうか。部屋は意外と派手ではなくとても落ち着いたものであった。

 そして、ソファーに座るブロンドのロングヘアーで子供を4人産んだとは思えないような美貌、彼女こそクラリアの母で実質この国を治めているオリーシャ・マリン・エルネストであった。




「はい、こちらがその報告書です。どうぞ。」



 クラウドは持っていた報告書と資料を女王陛下に渡し、説明を淡々としていった。



「今のところ兵糧のところには問題はないのですが、兵士達の装備品が少し不足しています。」



「確かに……足りてないわね……。」



 この前の戦で勝つことはできたものの、戦利品があまり芳しく無かったため、多少財政難な状態であったのだ。予算も決められているため、あまり勝手なこともできないのだ。



「財政的な問題ね。これはあの娘に任せてはどう?」


「クラリア様ですか?」


「えぇ、そうよ。あの娘は、軍事や国政はからっきしダメだけど、

 商業の才能はあるから大丈夫よ。」



 母親であるオリーシャは、他の人とは違いクラリアを無能と言ったことはない。

 それは、クラリアには国政の才能がなくとも、商才はあり、エルネスト王国の財政面を支えているのだ。

 しかし、家来やオリーシャ除く家族はそのことをよくは知らないのだ。



「なるほど、確かにこういう財政問題はクラリア様が良いかもしれませんね。」



「当然よ!私の可愛い娘だもん。」



 オリーシャ女王陛下は鼻高々にそういった。

 ちなみにオリーシャは、かなりの親バカであり、自分の娘や息子の自慢をよくクラウドにしている。

 クラウドはもう、嫌というほど子供たちの自慢話をされており、苦痛な時間であった。



「では今日の報告は以上です。」


「そう、ありがとう。」


「では私はクリスタ様のところへ向かいますので。」



 そう言ってこの部屋から立ち去ろうとしたときに、不意にオリーシャから話しかけられた。



「まぁまぁ、そんな急がなくても大丈夫よ。

 紅茶でも飲んで私と話をしましょう?」



 なんと世間話をしようと言ってきたのだ。これは流石にまずい……っと思ったクラウドは丁寧に断ろうとした。



「しかし、クリスタ様とは4時程に来るよう言われていますので…」


 オリーシャを怒らせないように慎重に尚且つ丁寧に断ろうとした。

 しかしそんな態度にオリーシャはこういってきた。



「あら…そう別に嫌なら嫌でよろしいけど……後でどうなっても知りませんよ??」



「あ、そ、それはその……わ、わかりました喜んで…。」

 とてつもなく不気味に笑っていた。これは言う通りにしなければ殺られる!そう悟ったのか、クラウドはオリーシャの話を聞くことにした。



「じゃあ私がこの前クラリアにもらった紅茶を飲みましょう!」



 さっきとは打って変わって笑顔になり紅茶を勧めてきた。

 これから、エルネスト姉弟の自慢話を永遠と聞かされる…そんな地獄をひたすら耐える時間となった。




(誰か……俺を…助けてくれーーー!!!!)

 クラウドの心の中の叫びは虚しく、誰にも届かなかった。







「はぁ……はぁ……ようやく…終わった。」


 3時間ほどオリーシャの話を聞かされて、クラウドもうヘトヘトであった。

 手持ちの懐中時計を見ると4時はとっくにすぎており、クリスタとの約束を破るはめになってしまった。



「まずいな……急がないと…。」



 クラウドは疲れきったその身体に鞭を打って約束の場所へと急いだ。






「ねぇ?クラウド〜?なんで正座させられていると思う?」


 クラウドは正座をさせられていた。そしてその目の前にはクラリアに少し似ている少女がいた。

 違うところと言ったら胸が少し控えめなところと、髪はオリーシャと同じブロンド色で組紐でポニーテールにしていることだろう。

 彼女はクリスタ・ユーリ・エルネスト第二王女でクラリアの妹である。2人の時はクリスタをタメ口で話しているのだ。


「本当に、すみません……。」


「私との約束なんて所詮そんなものなのね…。」


 クリスタは泣きそうになっていた。それを見たクラウドは慌てて慰めようとしていた。


「なんでもいうことに聞きますから!どうか涙だけは!!」


 なんでも言う事を聞く…その言葉を聞いたクリスタは目の色が変わり悪戯にクラウドを見てきた。



「本当!?じゃあ私の部下になってよ〜クラウド〜。」


「な、なんでだよ?」


「だってお姉ちゃんみたいな無能には勿体ないんだもん!」



 無能…まさか妹であるクリスタにまで言われているとは、確かにクリスタは武芸にかなり秀でており、魔術も高度なものを扱える。

 クラリアとは大違いだ。


「おい、それは言いすぎたろ…クラリア様だって一生懸命頑張ってるだぞ?」



 彼女はどうも感情を表だしやすく、表情ですぐにわかってしまう。

 クラリアの場合は感情を表に出さなすぎるが、クリスタは感情を表に出し過ぎるのだ。

 それが、姉妹の不仲をもたらしいているのだろう。



「どこがよ!?私には全くわからないんだけど?」


「……」

 クリスタの場合は戦場において活躍するため人が見た時にすぐにわかるが、クラリアは財政的な活躍であるため、どうしても目立たない部分がある。

 それをクリスタはまだわかっていないのだ。



「ねぇ?クラウド?本気で私のとこにこない?

 私はクラウドが欲しいの…」


「それはできないよ…俺が使えているのはクラリア様だ。

 それだけは裏切れない。」



 クラウドはクリスタの提案を真っ向から反対した。それぐらいクラウドはクラリアに対して忠誠を誓っているのだ。



「そう……いいわ…そのうちお姉ちゃんから奪えばいいし…」



 クリスタはボソボソっとクラウドに聞こえないほどの大きさで呟いた。

 その声はクリスタへの嫉妬が込められていた。



「でもその分、今日はきっちり付き合うよ。」


 部下になることはできないが、せめてこの時間クリスタのために尽くそうとクラウドは思っていた。




「本当!?ありがとう!クラウドのそういうところ私は好きよ?」




 そう言って彼女に頼まれていた軍略会議は夜遅くまで続いたのである。




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