第3話「SNSの誤解」
――夕暮れの街路樹に、オレンジ色の光が落ちる時間。
カフェの扉が静かに開き、一人の青年が入ってきた。スマートフォンを握りしめ、少し肩を落としている。
「いらっしゃいませ」
「……相談に来ました。SNSで、誤解を招いちゃって……」
ミライは頷き、静かにカウンターに案内する。
「どんな誤解ですか?」
青年はスマホの画面を見せた。そこには、彼が投稿した写真とコメントが並ぶが、文字だけを切り取ると、友人たちに悪意や軽率さが伝わってしまったらしい。
「ちょっとした冗談のつもりだったんです。でも……みんな怒っていて、返信も来なくて」
「なるほど。言葉だけでは伝わらないこともありますね」
ミライはアルバイトの少女に目配せする。
「じゃあ、少し整理してみましょうか」
カフェのテーブルに置かれた紙とペン。青年はゆっくり、起きた出来事を時系列で書き出す。ミライはそれを見守り、時に問いかける。
「その時、どう思った?」
「どう感じてほしかった?」
紙の上に、言葉と感情が整理されていく。
「誤解は、意図が伝わらなかった結果です。まずは自分の思いを冷静に伝えること。謝るべき点は謝ること。それだけで、状況は変わります」
青年は深く息を吐き、スマホを握り直した。
「やってみます……」
「誰かを傷つけるつもりはなかった。それをまず認めるだけで、少し楽になりますよ」
扉の外に、街のざわめきが戻る。
カフェの中では、アルバイトたちが笑い声を小さく交わし、青年は少し前向きな表情を取り戻していた。
「SNSは怖いものでもあるけど、こうして整理すれば、次にどう行動すればいいか分かる」
ミライの声に、夕暮れの光が優しく応える。
――また一つ、紙袋の中の悩みが、形を変えて軽くなった。
次に扉を開ける客は、どんな“小さな社会問題”を抱えているのだろうか。




