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***アンファミーユ第3部(En Famille Part 3)***  作者: 湖灯


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【メェナードさん VS ナトー②】

 飛行機で移動中にメェナードさんが、ナトーの捕獲に成功したと報告があった。

 捕獲という表現に少しイラっとしたが、ナトーとメェナードさんの安否が気になって聞いてみると、2人とも無傷でナトーと行動を共にしていたハンスと言う外人部隊の大尉も一緒だということだった。

 無傷!?

 外人部隊の大尉の捕獲は分かるが、あのグリムリーパーと呼ばれたナトーを無傷で捕まえたなんて流石メェナードさん凄過ぎる。

 それにしても一緒に居たのがハンス大尉だということが気になる。

 ハンス大尉は、たしかローランドの実弟。

 ザリバン高原での戦闘の結果から、既にナトーがかつてグリムリーパーと呼ばれた情け容赦もない狙撃手であった事くらいは気が付いているはず。

 そして実の兄ローランド・シュナイザーを殺害したのもナトーであり、彼自身も殺されかけたというのにまだ一緒に行動していたとはいったいどういうことなのだろう?


 許したのか?

 たしかクラウディの推測では、2人は付き合っているとか聞いたことがある。

 たしかにナトーは私ほどではないにしても、そんじょそこらに居る美人とは比べ物にならないほど美しい。

 ローランドは明るくて手も早かったが、ハンスは冷静で真面目でまるで歩兵隊長のお手本のような男だと聞いているが、相手が女だと別の顔を見せるのか?

 まさか。

 そんなことは、有り得ない。

 仮に今は許した気になっていたとしても、いつかは恨みに思う日が来ることくらい彼だって分かるだろうし、だいいち親は許すはずがない。

 我が子を殺した犯人と家族になるなんて、誰も好まないし想像もしたくないはず。

 それにしても私たち姉妹はお互いに会ったこともないのに、同じ兄弟を好きになるなんて現実的には在り得ない確率。

 この捻じれた運命と言うのも、彼女が持つ死神グリムリーパーの力なのか?

 ハンス大尉と結婚すれば彼の両親は悲しみのあまり自殺し、ハンス自身も己の行動に苛まれて狂ってしまい、いつかは不幸な事故で死ぬ。

 まさにナトーは死神グリムリーパーそのもの。

 銃がなくても、暴力を使わなくても、愛と言う真逆な位置にあるものを使っても人間なんて簡単に殺すことができるということなのか……。

 そんな恐ろしい相手を捕まえてしまったメェナードさんのことを考えると、急に背筋がゾクゾクとして震えた。

 生け捕りにしたところまでは上出来だが、これだってグリムリーパーの罠なのかも知れない。

 メェナードさんを含めた、フランス支部員の命が危ない!

 私はパイロットに再度急ぐように伝えた。


 パリのシャルルドゴール空港に到着する直前に、クラウディからまた連絡が入った。

「どうした?」不安で声が震えそうになるのを抑えて聞くと、パリ支局内で戦闘が発生しているらしいことが伝えられた。

 やはりメェナードさんでも、捕まえる所まではいったけど、その先には進めなかったのだと思った。

 つまりナトーは、私に気兼ねして自分を殺せないメェナードさんの心を読んで、わざと捕まったふりをしてまんまと内部に潜入して皆殺しにするつもりに違いない。

 空港に着く前に、予約していたポルシェをキャンセルしてオートバイに変更した。

 変えた理由はパリ市内の渋滞を避けるためと、郊外の産業廃物場のビルを仮の社屋として使っているためナトーの仲間たちが来た場合、表の道からは近付けなる可能性があるため。

 どうせ悪知恵の働くグリムリーパーのことだから、自分が潜入した後のバックアップ要員もどこかに隠しているに違いない。

 (実際に外人部隊の仲間もやって来たのだが、それは彼女を心配した仲間たちが行方を捜した結果で、決してナトーが来るように仕組んだのではない)


 空港に着陸するとすぐに救急治療の道具一式を詰め込んだ巨大なバックパックを担いでバイクで医療スタッフより一足先に出発した。

 医療スタッフは緊急手術が行えるキャンピングカーに乗り、後からついて来る。

 メェナードさんがナトーに負けるなんて思ってもいないが、常に最悪を想定した準備をしていないと気が済まない。

 あとで後悔するのは嫌だ。

 交通ルールを無視して、渋滞する車の列を追い抜きながら郊外に出た。

 あともう少し走れば、メェナードさんに会える。

 ケーニヒスベルク大聖堂では素直になれなかったけれど、今度は素直になる!

 もしメェナードさんがナトーを許してやれと言えば、私はナトーを許す。

 他人として合わなかった事、知らなかった事としてしまえば、それも出来るはず。

 いくら優しいメェナードさんだって、私の気持ちは十分理解しているはずだから、ナトーを愛してやれとまでは言わないだろう。と、そのことを考えた時だけ緊迫した無の中がホッコリと熱くなるのが分かった。

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― 新着の感想 ―
 熱い展開になって来ました。  サラちゃんの苦悩はなかなか終わらないんですね。  
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