ご希望はおありでしょうか?
領地から帰ってきて3日が経った。
「おはようございます、お嬢様」
「おはようございます」
「おはよう」
侍女たちに朝の挨拶を返しては足早にヴィオを連れたって移動しようとするのだが、やはりどんなに早く移動しようとしても大人と子供では物理的な差(身長という名の)が生じているせいかすぐに彼女たちに回り込まれ、行く手を阻まれる。
いや別に彼女達と話すのが嫌とかではなくてね。うん…
「お嬢様!!もうすぐお誕生日ですが何かご希望の物はおありですか?」
「パーティー当日のケーキやデザート等ご希望があればすぐにおっしゃってください!」
「お嬢様たちの大切なお誕生日ですからね」
「あははは、ありがとう。でも、いつも通りで大丈夫だし私じゃなくてシルビアのすきなもの出してあげて。あの子の方が体調面とか気を使うことは多いはずだし」
「「「…かしこまりました」」」
しゅんとした表情で侍女たちが渋々と頷く。
ああ申し訳ないって思うんだけど、こればっかりはどうしようもないっていうかなんて言うか…
領地にいたときも領地邸の使用人たちに総攻撃は何度か食らってはいたけど、領地でパーティーを行うわけではないからお祝いの言葉だけで構わないと言って何とか納得してもらった。私の誕生日に何かしたいって思ってくれているだけでとても嬉しい。
ただ、領地邸と違って本邸ではその言葉も使うことが出来ず、(正しくは使ったけど納得してもらえなかった)この3日間朝昼夕と必ず誰かにさっきの3人のような質問をされる。
それはそれはしつこいほどに。
うん、嫌じゃないんだよ?それほどまでに気にかけてもらえてるって嬉しいんだけどさ。
今まで特に一昨年まですなわち熱が出るまでの誕生日パーティーはほぼほぼ私の要望のみで開催されていた。
シルビアは身体が弱いから熱がでたり、風邪をひいたりとあまり長い間ホールにいることもなかったためほんとーに私の独壇場的な感じだった。
もう私一人だけの誕生日的な感じだった。
思いだせば思いだすほど恥ずかしいことこの上ない。
しかも、シルビアをお母さまやお父さまが気遣うのがなんだか気に入らなくて泣きわめいたり、引っ付きむしになったり…。
ロクでもない令嬢だったね。うん。
それを踏まえた去年はシルビアと半分ずつ希望を~って出したのにもかかわらずあの醜態。
もう私は恥ずかしすぎて何も言えません。
「はぁ」
「お嬢様、溜息をついては幸せが逃げますよ?」
レットの言葉に頷きはするが、己の失態にため息もつきたくなるというものだ。
「昨年はショートケーキでしたが今年はどのようなケーキが出るのでしょうかね?」
ショートケーキすごくおいしかったなぁ~。
とても大きなケーキで切り分けてもらった時に大きなイチゴをつけてもらったのは凄く嬉しかったのを覚えている。
「なんだろうね。料理長が作るから何でもおいしいんだけど。あ、この間ファイシャたちが話してたフルーツいっぱいのタルトとか気になるよね!」
「今度領地に行った際に大奥様とお出かけされますか?」
おばあさまとお出かけ!!いいかも!
今までにないし、おばあさま視点でいろいろお伺いできるかもしれないものね
「そうね!是非そう言う日程を組めるようにしておいてちょうだい」
「かしこまりました」
「王都では今はやりのお菓子ってなんだろうね?」
そう言えば、流行のお菓子知らないんだよな。いつもお茶の時間とかに出てくるものは全て料理長たちの手作り。この間私が作ったのはミルククッキー。
基本貴族のお茶会は主催者側の料理人たちによる手作りの物かお抱えパティシエによって作られたもので市販品は並ばない。
一貴族個人がおやつとして食べることはあってもお茶会では出てこない。
それにお菓子を買いに行くのに貴族の子女とはいえまだ社交界デビューもしていない子供だけで行くのはいいのかどうなのか。
分からないんだよね。
「王都の流行のお菓子も聞いておきますね」
「うん。値が張らないのならお土産に買っていこうと思うし」
いつも頑張っている商会のみんなへってね。
「かしこまりました。何個か調べておきますね」
「うん!ありがとう、レット」
お菓子、おかし~おいしいやつだと嬉しいな♪
「あ、おはようございます。お姉さま」
「!おはよう、シル」
「今日も元気ですね」
「うん!シルの顔見れたからね~」
ぎゅ~っとシルビアに抱き着きながら一緒に食堂へ向かう。
「“イタルスの撃墜”を昨日読み終わったんだけどね、あれ凄いね」
「えぇ史実に基づいていますから、歴史も覚えやすいですよね」
「そうなの!!びっくりしたよ。歴史の登場人物の実名を使わずに書かれてあるから皮肉を書いても不敬にもならないしね」
シルビアにおすすめされた本は領地に行ってからもずっと借りては読むを繰り返している。
おかげでいろんな話を知ることが出来たと思っている。
特に冒険ものやファンタジー系統は面白い。想像力豊かだなって作者の人を尊敬してしまう。
でも、一番読み漁っているのはどちらかというと図鑑だったり貴族名簿だったりなのだが…
まぁ時には気分転換って大切だねってことで
「先日お姉さまが領地に言っている際に殿下と定例茶会をしたのですが」
「へぇー」
2人だけでお茶会したんだ…。ってことは私いなくてよくない?
今までなんやかんや3人でお茶会(半地獄)をしてきたわけですが、2人でお茶会できたなら私隠れ蓑としていらないよね?
これは私がわざとお茶会でなくてもいいのでは??
「プレゼントとドレスの色を聞かれまして」
「ああ、エスコートの時ようにだね」
「はい。私は白だとお伝え出来たのですが、お姉さまのドレスは分からなくて」
「仕方がないよ。マリン・ビーナが選んでくれてるし、当日までのお楽しみらしいからね」
ビーナ様のことだからおそらく例のヘアピンのどちらかに合わせて作ってくるだろう。
個人的には青いヘアピンはシルビアに送りたいんだけど、こればっかりはビーナ様のドレス次第というところね。
「お姉さまはなにか欲しいものはございました?」
「とくにはないかな」
ぶっちゃけていいのなら王太子妃候補からの除外を強く望んでるんだけどね。
絶対にYESって言わさないでしょ?あの腹黒は
「シルは今年のケーキはどんなのがいいとかある?」
「そうですね、昨年はクリームがあったので今年はさっぱりしたものがいいですね」
「さっぱりというとチーズケーキとか、ビターな感じのものかしら」
「作っていただけてみんなで食べられるのであれば私はそれだけで嬉しいですよ」
なんて出来た子!!
私の妹は天使のように優しいですね!好き!!
「シルが嬉しいなら私も嬉しいよ」
シルビアは私の言葉に少し困ったように笑いながら差し出した手を握ってくれる。
食堂まであと少しだけどその距離を私達は手を握って歩んでいく。
リズビアは未だにウィルからの言葉を本気ではないと思ってますね~
それが本心からかそれとも自衛心からなのか?




