浮気現場?
どうしてこうなった。
いや、昨日応接室でお話をして3時間拘束後に夕食。夕食が終わるまでずっと一緒にいるし
おじい様に呼ばれて執務室に向かい、今回の交渉の件とお父様から許可いただいた商会の話を伝えて今後の予定も話した。さすがにこの時間はおじい様と私の2人きりだったけど…
問題はそのあとだよね。
自室に帰ろうとしたらいきなり腕掴まれて庭園前でお話。これはレット曰く2時間。
なんやかんや早く寝たいのに邪魔をしてくるし、最終的には執事長に咎められてやっと解放された。
ありがとう、執事長。大好き
それから―
庭を駆ける。もうこうなったら令嬢の作法とか知ったものか。もう限界だ。
胃も心も
お目当ての人が背中を向けているのをいいことに背中へダイブする。
「ドわっ!?っぶね」
抱き着かれた本人はさっきまで見ていたのであろう苗の心配をする。
苗に何事もなかったのを確認して呆れたようにため息一つ。
「リズ、いきなり抱き着くならせめて花壇から離れてるときにしてよ。危ないから」
それは花がだよね??知ってるぞ。
何気に私の心配してないことを
「それで今日はどうしたの?」
エリオットは私の髪を、手袋を外した手で2,3度撫でてまた作業に戻る。
「もう疲れた。ずっと一緒にいる。胃が痛い。早く帰ってほしい。このままじゃ今日アロー達のところに行けない。あぁ書類仕事が溜まるううううううう」
「あぁ殿下のことね。今日中には帰られるんだから我慢しなよ」
「やだやだやだやだぁ」
頭をぐりぐりとエリオットに押し付ける。
ほぼほぼ一緒にいるんだよ??しかも、毎回いつ王都に帰るかとか、いい加減婚約者候補の立場を自覚してほしいとか、パーティーは必ず一番手に踊るから逃げんなよって脅すんだもん!!
勝手に踊れよ!ご令嬢なんて山ほどいるだろう!!
なんであの人あんなにしつこいの??馬鹿なの?暇じゃ人だからさっさと帰れよ!!
昨日から私の心は荒れに荒れまくっている。
レットとヴィオには可哀そうなものを見るような視線を送られるし、殿下側の従者はニコニコ笑顔を貼り付けてるし…。この落差よ。
ガサッ
後ろの花壇が人為的に揺れる。
「こんなところにいたんだ、リズ」
「ヒッ!」
それは福音で何逃げてんだお前?ですよね。知ってるよ
ブリキのおもちゃのように固くなった首を殿下の方にゆっくり向ける。
わ~、太陽がよく似合うきらきらの笑顔だ~なんて言えないよね。あはは現実逃避したい!
めっちゃ怖いんだけど。目が、目が全然笑ってないよ?なんで??
後ろに鬼でも背負ってるのかな?ってぐらいあの人怖いよ
「急に走り出したから追いかけてみれば」
追いかけないでくださいって私言いましたよね。あれ聞こえてなかったのか?
「こんなところで浮気ですか」
ぅ・和・キ
うわき
浮気
……………
「はぁ??」
「リズ…ビア様、素が出てます」
「は!」
おっと、何言ってんだこいつって思ったら口から勝手に本音が漏れていた。危ない危ない
エリオットがさりげなく私の手を自身から離していく。
「リズビア様と俺が浮気だなんてありえませんよ。身分はわきまえています」
「そうか。しかしそれは貴殿側の話であってリズビアがそうとは限らない」
エリオットが口を噤む。
「それに貴殿と私の婚約者殿は大変仲がよろしいようだ」
ギラリと殿下の金色の瞳が光る。
まるで言い訳は許さないと言わんばかりだ。
が、しかし。誰と誰が婚約者だって???
「殿下、私達の関係は婚約者ではありません。婚約者候補と王族です。」
殿下の眼が大きく見開かれる。
エリオットも驚愕の表情をする。
殿下の後ろにいたレットとヴィオは頭を振り、殿下の従者は信じられないものを見るように私を見つめる。
え、なんで?大切なことだよ。これ
私の中では事案です。
「リズビア…今そこが重要ではないんだが…」
殿下が虚を突かれたようにためらいがちに声をかける。あら、珍しい
「重要ですよ。それに殿下は知らないかもしれないのでおっしゃっておきますが私友達が少ないんです。貴族の友人と平民の友人合わせて両手で数えられるぐらいに少ないんです。私の貴重な交友関係に殿下がしゃしゃり出ないでくださいな」
殿下のせいでエリオットが離れていったらどうするんだ。
折角お友達になれた一人目の特別な友人なのに
「あと、以前殿下に贈った花がありましたよね?栞にした」
「ああ」
「あの栞に使う花について相談にのってくれたのが彼なんです。ですから勝手に浮気云々言わないでください。彼に失礼すぎます」
殿下は私の言葉を聞くなりエリオットに謝罪する。
王族だから頭は下げれないけど、ちゃんと謝罪の言葉を述べるあたり殿下も本心で言ったわけではないだろう。
逆にエリオットの方が委縮してあたふたしている。
「しかし、リズビア様の先ほどの行為は見られ方によってはそのようにとられかねないかと…」
殿下の従者の方が私を見つめて提言する。レットとヴィオは黙ったまま話を聞いて、エリオットは居心地悪そうにしている。
殿下はまっすぐに私を見つめて私の回答を待っている。
「そうでしょうか?」
こてんと首を傾けて何でもないように話す。
「公爵邸も領地邸も限られた人間以外の出入りは出来ませんから見られたとしても身内のものが多いから変な噂にはなりませんよ。それに、私の年頃でしたら誰にでも抱き着きますよ?(屋敷のものには)抱き締めることはスキンシップにもなりますし、心を許した相手にしか行いません。そこに従者様が懸念されるようなことは、皆分別ありますからありえないかと…」
実際に万が一にあったとしてもそれは身分違いの恋だ。
公爵家という大貴族から考えればそれはイバラの道。無論、勘当されたらそれも一つの道かもだけどそれは今のところ考えてないし
第一そんなくだらないことで私のスキンシップをするななんて言う方がナンセンスよ。
「万が一、噂が流れたらいかがなさるおつもりなんですか?」
「噂の出方にもよりますが放っておきますよ。さすがに家門に泥を塗ることはしたくないので悪意あれば叩きますが、基本噂なんて長くて一か月ほどでしょうし気にいたしませんわ」
まず、私が社交界に積極的でないから出回って被害こうむるのは家族側なんだけど…きっと私よりもみんなの方が噂の沈下には慣れてるしね~
適材適所って大切
「噂が出回っても私に損はないですし」
「は?」
「え…」
楽しい度修羅場ってなったと思ったらすぐに違う方に行ってします。何故だろう…




