過保護と事情
いつもありがとうございます。
作者がテスト期間に入る為、次回更新予定日は1/30(土)です。
間が空きますが引き続きよろしくお願い致します。
公爵領地にある公爵亭の玄関先に一台の馬車が止まっている。
ええ、この場者だけなら何ら問題ない。なのに、前後に4人ずつ。計8名の騎士が各々の馬を従えて待機している。
なんで????
確かに今日はヌベレット子爵領へ行くから護衛は居るかもなんだけどね。うん。多くない???
普通公爵令嬢のお出かけ(ちょっと遠くへ)で妥当護衛数って5人なんだけど。おじいさまがそうやって教えてくれたはずなんだけどな~。
チラリとおじいさまを見ればこの上なく満足そうに騎士団長と話している。
いやいや、咎めてくださいよおじいさま。
おばあさまに関しては優雅に微笑まれるだけで「リズには甘いわ~」なんて言っている。
甘いわ~ではありませんよ、おばあさま。過保護!過保護すぎてビックリ案件ですが!?
「リズ」
「はい、おじいさま」
おじいさまはニコニコ笑っていらっしゃる。
笑ってらっしゃるのはいいんですけどせめて5人にするように言ってほしい。
孫娘に教えたことは守ってほしいよ。そんな思いでまっすぐに、まっすぐにおじいさまを見つめる。
しかし、想いは届かないらしく「気を付けていってくるように」なんて言われてしまう。
その言葉に何か返せるはずはなく大きく深呼吸をして、「はい、行ってまいります」と返す。
もうこうなればさっさと馬車に乗り込んで一刻も早くここから出よう。
何気にみんなの視線がすごい痛いんだよ!!
騎士団長にエスコートされて馬車に乗り込み、ヌベレット子爵領へ出立したのがかれこれ2時間前だと思う。
「長いね~」
向かいに座るヴィオとレットが苦笑する。
「仕方ありませんよ。ヌベレット子爵領へは片道3時間ですから」
「早めに出立したのは正解でしたね。あ、チョコレート召し上がります?」
「貰う。それどうしたの?」
レットが板状のチョコレートを小さく砕いて手渡してくれる。
こんなの持ってたっけ?
「ああ、これはアローにもらったんですよ」
アローがチョコレートをくれるんだ…。今度強請ってもいいかな?
「見返り付きじゃないんですか?あの人がめついですから」
ヴィオがチョコレートを口に含みながらレットを見れば、レットはあいまいに笑い返す。これは黒だわ。
「何を頼まれたの?」
「ヌベレット子爵領のガラスの質についての意見とヌベレット子爵領への貿易できそうな品がないか捜して来いと…」
「わー、さすがアローだ。商売人だね」
「お嬢様はアローが無償で働くタイプに見えますか?」
「ヴィオの眼にはアローがいったいどういう人に見えてるの?アローは普通に……商売人気質なんじゃないかな」
普通…か?え、お兄さんたちがいるから会頭になれないから自分たちで作っちゃえってなってるけど。たぶん普通の商売人じゃないだろうか。
「普通…ですか」
「お嬢様はもっと見聞を広めるべきです。あれは普通じゃなくて野心満載の商売人ですよ」
レットが普通という単語に渋い顔をする。
いやだって私アローたちが初めての商売人だからあれが常って思っちゃうじゃん。
2人の視線が痛くて話題を変える。
「というか、今日の護衛多くない?」
「大旦那様のご命令です」
おじいさまのご命令・・・
「公爵家のご令嬢の護衛に8人は多すぎるでしょう」
「公爵家のご令嬢だけでしたら多いのかもしれませんが、お嬢様は一応王太子妃候補である公爵家のご令嬢であらせられますから」
「ちょっと待って」
なぜ今ここでそれを言うのだろうか。何か引っかかる。
ヴィオとレットは私から視線を動かすことなくただまっすぐ見つめる。
いつもより多い護衛。王太子妃候補。ご令嬢。おじいさまの命令。騎士団長直々の護衛。
まさか―
「誰か、、、襲われたの?王太子妃候補の人間が、、、」
2人は静かに頷く。
待って、襲われたってなに?いつどこで。誰がなんのために??
そもそもどこの令嬢が襲われたんだ。下級じゃないから中級階級以上。シルビアが襲われたわけではないだろう。もしシルだったら早馬が知らせるはず。
でも、おじいさまもおばあさまも何も仰ってなかった。いや、おばあさまは知らないのかも。
知っているのはおじいさまだけ。いつ騎士団長と話していた?
昨日私が――!!
あの時の会話か!
大きく溜息をついて頭を振る。
「襲われたのはどこのご令嬢なの?」
「ブルーノ辺境伯爵令嬢です」
ブルーノ辺境伯といえば確かファンネルブ王国の南西の国境を守っている忠義の強い一族だったはず。今の時期なら伯爵は領地で奥方とご令嬢が王都に社交界の一環で出向いていたのだろうか。
「場所は?」
「移動の馬車の道中です」
令嬢一人なら5人ついていたはず。それでも襲われたのであれば―
「被害は?」
「護衛4名中2名が負傷。ご令嬢に怪我はなかったそうです」
ホッと胸を撫でおろす。
ご令嬢に傷がつくということはこの貴族社会ではとても生きづらくなることだ。嫁の貰い手がなくなるだとか、傷物として扱われる。
それらは決して本人が望んだ傷ではないはずなのに
「なるほどね。それでこの人数の護衛」
「昨日、大旦那様が騎士団長閣下に仰られていたではありませんか」
レットも発言にやっぱりあの時かと頭を抱えたくなる。
「お嬢様…」
「ごめん。聞いてませんでした」
レットとヴィオが同時に溜息をつく。うぅ~そんなため息つかないでよ。
私だって反省してるよ?
「…ご令嬢は無事だったのならそのならず者たちは捕まったの?」
「いいえ。現在も逃走中とのことです」
「お嬢様やシルビア様は公爵家令嬢であり、巡りのせいで最有力候補と言われておりますが巡りがなく公爵家の次に有力なのが今回被害にあったブルーノ辺境伯令嬢になります」
なるほどね。
通りで過保護になるわけだ。
おそらく、お父さまが早期に取り付けをしたのもこれがあったからなのだろう。
狙われた理由が今は不確かだが、もしそれが理由だというのなら私は堂々と宣言するべきなのだろうか?
私は王太子妃の立場に興味はないと
ファンネルブ王国の貴族階級は上から
王家
公爵家(四公爵)
侯爵家
辺境伯爵家
伯爵家
子爵家
男爵家
準男爵家
騎士
になります!!




