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幸せに生きていたいので  作者: 結汝
46/144

苛立ちの原因

少し短めです

カリカリカリカリ


 無意味な紙に羅列された字が問うものをペンで書き綴る。

 その回答を見守る、もといのぞき込む教師の顔色など知ったことではない。

全てを描き終えれば、ペンを置いて暇そうな教師に紙を押し付ける。


「なんと!もう回答を―」

「今日はこれでいいでしょうから失礼します」


 教師の声を遮って、終わりを宣言し部屋から出る。

部屋の外には側付きのアクアが控えていた。


「お疲れ様です」

「自室に行く」

「かしこまりました。人払いと紅茶を用意いたしますね」


 アクアが離れたのを確認して廊下を歩きながらため息を吐きだす。

ああ、イライラする。

 理由は明白。

 リズビア・ガーナと王妃誕生祭のパーティー以降会えていないことだ。

前回は領地祭もありこちらもあちらも忙しくそれどころではなかった。妥当な理由があった。しかし、今回は違う。

 どうやら彼女は現在何らかの理由で領地に一人で行っているらしい。

その報告を受けたのは先日ガーナ公爵家に定例茶会として赴いた時だった。

 公爵夫人はシルビア嬢しか呼ばなかったことに疑問は感じていたが、深く考えずに流していた。最初はシルビア嬢と2人きりだったがいつまでたってもリズビアが現れない。

痺れを切らした俺が問えば、シルビア嬢の口から出てきたのはリズビアは領地に行っているという事実。

 定例茶会についての手紙を送った際にあいつはなにも触れていなかった。

 要約すると無理に時間をとる必要はないといった内容だった。

 そう。一つも領地に行くとは言っていないのだ。しかも、あいつは手紙を送ってから領地に赴いたらしい。


「計画的犯行ってことか?」


 人の想像を超える。さすがリズビア・ガーナ


どんっ


 背中から柔らかな衝撃が来る。


「あにうえ!」

「リンデン、どうかしたのか?」


 俺に抱き着いてきた弟の頭を人撫でする。


「あにうえをみかけたので」

「そうか、勉強はどうだ?」

「まだあにうえのようにはできません」

「そこは僕ではなくリンデンのペースでちゃんとものにすることが大切だろう」


 弟はかわいい。

父上も母上も俺とリンデンは別物でそれぞれをちゃんと愛してくれている。

 しかし、教師の中にはそれをわかっていないものが多い。

俺の呑み込みの良さをリンデンにも求めたがる。

そんなクズは教鞭を振るっていいとは思わない。

即刻にでも王城から出て行ってほしいが、内部粛清なども考えて今はまだ泳がされている。

そうとも知らない馬鹿どもはすぐにリンデンに圧を加える。

幸いにもリンデンは頑張り屋だ。卑屈にはならないのが救いだ。

 そもそもリンデンは馬鹿ではない。俺の吸収が早いだけで同じ教育を最終的にはこなせるし、こなしている。

この事実に気づいたやつがおそらくだがリンデンを次期王へと持ち上げることだろう。

おそらく父上はそいつらをあぶりだすためにこうして見逃している振りをしているのだろうが…


「リンデン」

「はい、あにうえ」

「楽しいか?」

「はい!」

「そうか、ならいい。私は部屋に戻るよ」

「わかりました」


 小さな弟から離れ自室へと向かう。

 その道中窓の仕切りがない渡り廊下である人物に命じる。


「あいつらを見張っておけ」

「了解しました~」


 その者が消えたのを気配で感じながらもう一度溜息を吐き出す。

 あいつの緩い返事はどうにかならないものか。

弟のこと、教師のこと、貴族の思惑、リズビア・ガーナ

それらすべてが悩みの種であり煩わしい。

それでも、やはり一番腹が立つのはリズビアのことなんだよなと冷静な頭は考えてしまうのだった。


ウィルの苛立ちを煽りに行くスタイルのリズビア

この王子ちゃんと報復するタイプの人間です。

一か月後が楽しみだね(ニッコリ)

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