領地祭2日目
領地祭2日目
昨日はいろいろな方々と挨拶していろいろ大変だった。なにせこんな大掛かりなパーティーは初めての参加だしね。え?今まではどうしてたかって?そんなの参加してないに決まっているじゃない。駄々こねてお屋敷でお留守番
そっちの方が楽ではあるけど、今は領地について興味があるし…
知るためには行動しなくてはいけないから、今日も頑張ろう!
「リズ」
「はい、おじいさま」
おじいさまから声がかかり駆け寄る。まだ、屋敷を開放するまでには時間があるはずだけどどうしたのだろう?
「領地祭はどうだい?」
「とても学ぶことが多くて楽しいですわ」
「そうかそうか」
おじいさまは大きな手で頭を撫でてくれる。それが少しくすぐったくて自然と笑みがこぼれる。
「今日は儂の側に出来るだけいなさい。きっとリズにとって学びをより一層深められるはずだから」
「よろしいのですか?」
驚いておじいさまを見上げれば一つ頷かれる。
それは本来次期当主となるお兄さまが許される立ち位置だ。だって、前当主または現当主の側には同じく各領地の当主やそれに並ぶ商売人が集まる。お互いに顔覚えや取引を円滑に行うため次期当主は側にいる必要があり、側にいることを許されるということは次期当主を周りに明確に示す術でもある。
それを私に許されるなんて…
「レイは2年前からずっとローガスについて回っている。私がリズを側においても何ら問題ない」
そっか。お兄さまはお父さまの側にいるからおじいさまの側に私がいてもいいんだ。
それが分かると胸が熱くなる。
「…はい!おじいさま今日はよろしくお願いいたします!!」
胸元で握りしめた手に力がこもる。
おじいさまに少しでも認められたことが嬉しくて、より多くを学べることが嬉しくて頑張らなくちゃと背筋が伸びる。
このチャンスを無駄にしないように―
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「お久しぶりです。ハゼック殿」
おじいさまの名前が呼ばれる。
「おお、これはお久しぶりです。バーニヤ卿」
バーニヤ…伯爵。物腰の柔らかそうな人だがとても頭の回転が速くいろいろな政策に苦言を呈し、良策となるように導いてくださったことが何度かあると言われる方だわ。
「そちらの小さなご令嬢は?」
バーニヤ伯爵がおじいさまから私に視線を移す。
まっすぐ相手を見つめ、淑女の礼をとる。
「初めまして、バーニヤ伯爵。ガーナ公爵家が次女、リズビア・ガーナと申します」
「初めまして、リズビア嬢。ノゼッタル・バーニヤと申します。ご令嬢に知っていてもらえたとは光栄ですな」
伯爵は子供相手にも礼儀正しく紳士の礼をとってくださった。
さすがおじいさまが領地の勉強を教えてくださる中で何度か名前をおっしゃられるだけはある。油断してしまいそうになるがこの人は油断できないタイプの人だ。
一挙一動をずっと観察されているように感じてしまう。
そんな気持ちをごまかすように笑って見せる。
「令嬢はとてもしっかりしているからハゼック殿も鼻が高いですな」
「まだまだこれからですぞ。うちの孫たちは」
2人が声をあげて笑う。
何故笑うのかは分からないが、おじいさまが楽しそうならいいか。
こういう領地祭でもなければなかなか会えない人もいることだしね。
そんな風にしておじいさまの知り合いに私は名を名乗り、顔を覚えてもらう。たまに会話を振られたらしっかりと考えて答える。
その繰り返しをしていく。何人かには私の発言から好感触を持ってもらえたようでまたお会いできればと言われた。それだけでも私にとっては大きな収穫になる。
「リズ、少し飲み物でも取ってきなさい」
「わかりました」
おじいさまから自由に見回って来いと許可が出たので、軽食コーナーに向かう。
料理長が作ってくれた小さなサンドウィッチを3つほど選んで口に運ぶ。
お腹が減っていたからちょうどよかった。
後で料理長にお礼しに行こう。どれもおいしいから今度お茶の時間に出してもらえるように交渉しようかな
軽食コーナーからホールに戻ればとある一か所に人が集まっていた。
気になって近寄ればお姉さまとマリン・ビーナが楽しく会談していた。
おおぅ!とてもあの一角だけキラキラしている。
近づいたら行けない気がするからそーっと距離をとろうとしたら声がかかる。
「まぁ!!リズビア様ではありませんか!」
やめて!!ビーナ様
大きな声で呼び止めないでよ!皆さまの視線が私に一気に刺さるではないですか!
さっと深呼吸して振り返る。
「ご機嫌よう、ビーナ様。本日はわざわざ足を運んでくださりありがとうございます」
「いえいえ、私が足を運ぶのなんて当然ではありませんか」
頼むから話を振らないでほしい。お姉さまとお話ししてくれ
「今先ほどまでロゼリア様のドレスの話をしていたんです」
「ロゼリア様の今回のドレスは今までにない型でとてもお綺麗ですわ」
「布の光沢感が活きていてお綺麗です」
周りのご令嬢たちが姉さまを褒める褒める褒めまくる
うん。改めて見るとお姉さまはほんとお綺麗だし、ドレスは私が何個か考えたアイディアのうちの一つに忠実に再現されている。作った縫子の皆さん凄すぎです。
「皆さん、ありがとう。このドレスはビーナ様とうちの妹が私のためにと考えてくださったのですわ」
お姉さまぁぁぁぁぁぁ?!???なぁに言ってんですか。ここで
うっわ、ご令嬢方の眼がさっきまでと違ったものになってるよ
怖いよ~
昨日と違って手近にライ麦パンはないし…
お姉さまは満面の笑みだ。言いたくて言いたくて仕方なかったんですね。
わざわざ私がおじいさまの側を離れるタイミングを待っていたんですね。さすがお姉さまですわ
「まあ!リズビア様が?」
「お姉様想いの妹さんでいらっしゃりますこと」
「素晴らしい才能ですわ」
次々に述べられる嵐のような賛辞の言葉
嬉しいんだけど圧、圧がすごいです。皆さま
愛想笑いを浮かべてやり過ごそうとしたらどこからか「デザインはビーナ様が考えて色合いはリズビア様がお選びになられたのでしょう?」と言った声が聞こえた。
それを聞いた瞬間、背筋が凍った。
やめろ、そこは触れるんじゃない
そんな私の願い空しくビーナ様は生き生きとした表情で声高らかに言ってしまう。
「違いますわ。色はロゼリア様がお選びになられ、デザインを考えられたのはリズビア様ご自身ですわ。私はリズビア様の案を基に忠実に再現したまでですから」
「「「!!!!」」」
ビーナ様を見やればとってもいい笑顔を返される。
再度沸き立つご令嬢たち
「やはり私の眼に間違いはなかったでしょう?リズビア様」
満足気なビーナ様が話を振る。
「あはは、そうですね。さすがビーナ様です」
「そこでお願いがございますの」
「お願い…ですか?」
ビーナ様は頷く。
何か願われるようなことをしただろうか?むしろ私が今この状況から脱することを酷く願ってるんだけど。(この状況を作り上げた人間に願うのは中々おかしいけどね)
「今回のデザインはロゼリア様だけのためのものでしたが、他のデザイン案を我々『カロワイン』に提供していただけませんか?」
「え?」
「ロゼリア様だけの特別なデザインは、他のご令嬢たちにもかなり人気で昨日からご要望が殺到しているんですの」
昨日がお披露目だったのに??え、こわ
貴族令嬢のドレスに対するステータスの片鱗が見えた気がする。
「しかし、お預かりしたデザインはロゼリア様のためにリズビア様がお考えになったもの。商売人として無断で使用することはできませんわ。それでも幸いお預かりしたデザイン案の中には今回使用しなかったものもありますでしょう?それを提供していただきたいのです」
‥‥‥。お姉さまのために作ったものだからお姉さまが好きにしてくれればいいんだけど。私は考えただけで後は全部お姉さまにあげたつもりでいるからな~
「そうね。確かにいい案かもしれないわね。リズの素晴らしいデザインをずっと燻ぶらせておくのはとても勿体無いことだし」
「お姉さまがよろしいというのであれば私はかまわないですよ」
きゃあ~とご令嬢たちが喜びに盛り上がる。
「ありがとうございます。リズビア様は御心も広くさすがでいらっしゃいますわ」
「ビーナ様ならより多くのご令嬢が満足できるドレスを作り上げられると信じているからこそ託せるだけです」
「ありがたきお言葉」
すっととられた手にビーナ様が口づけをする。
上げられた顔からウィンクがこちらにとばされる。
あぁ、なるほど。
全てを理解してお姉さまに視線を向ければ手で優雅に口元を隠しながらも笑っている。
すっごく楽しそうに笑ってらっしゃる。
なるほど。私はお2人に遊ばれたのか。
忘れてないよドレスのお披露目




