視察に行ってみた
「今年はリズが領地視察に来るなんてね。驚いたよ」
「昨年は絶対に嫌だと駄々をこねていたもの、仕方ありませんわ旦那様」
グサグサと両親の言葉が心に刺さる。
仕方ないんですけどね。恨むなら去年の自分を恨むべきだし、今年はお兄様に半強制的に約束を取り付けられたといっても仕方ないが、それがなくてもおそらく領地視察にはついてきていただろう。
ちなみに本日はお父さまとお母さま、レイチェル兄さまと私の4人だけでの視察である。
ロゼリア姉さまは婚約者であるナンテンサー伯爵家に出向かれ、シルビアは体調を崩してしまったのでお留守番をしている。
領地までは馬車で行って帰れる距離であるが、お母さま以外は領地にあるお屋敷に3日ほど滞在する予定。お母さまはシルと姉さまがいる王都内の屋敷にお戻りになられるそうだ。
「そんなに言わないでください。お父さまもお母さまも…私も反省しているんですから」
「あぁ、もちろんリズが反省していることは分かっているんだよ。ただ、一緒に行動できることが嬉しいんだ」
お父さまは向かいから手を伸ばして頭を撫でる。
いつも王城勤めでお忙しいからなかなか一緒にいることは出来ない。
前までは私が勝手に執務室に突撃して要望伝えて了承してくださるまで強請っていたからな~。本当に我が儘すぎて嫌になる。
「領地につき次第私は商人たちの話を聞くからレイもついてきなさい」
「わかりました」
「私は先にお屋敷に行ってお義理母様達に御挨拶しておきますわ」
「頼むよ」
おじいさまとおばあさまには今年の新年挨拶以降会っていない。結構久しぶりだなー
いろんな刺繍や本を教えてもらいましょう。そしてそれをシルに教えて…
「リズはお母様と一緒に―」
「リズは俺達と一緒に商人の話し合いに連れていきましょう、父様」
レイ兄さまがお父さまの発言に被せる様に声を出す。
てか、え?
「私もお父さまたちに着いていくんですか?お邪魔では?」
隣に座るレイ兄さまをなに考えてるんですかと訝し気に見つめる。
綺麗なお顔にいい笑顔が私を見つめ返してくる。これお父さまたちがいなかったらほっぺをつままれているやつですね!
お父さまとお母さまがいてくれてよかったぁ~
「邪魔ではないが、レイチェル。何か考えがあるのかい?」
お父さまは興味深そうにお兄さまを見つめる。一方のお兄さまはとても楽しそうに頷く。
わあぁ本当に今日はご機嫌ですね、兄さま
私はお兄さまがご機嫌で嬉しいですが、先日の爆弾発言をビーナ様に告げちゃってくれたことに関しては許していませんからね!
絶対に口に出したりなんて出来ないけれど。出来ないけれど
「父様、リズは先日かの有名なデザイナー、マリン・ビーナ殿から男性用のパーティー服のデザインの依頼を受けたんです。しかし、リズは男性の服は詳しくないといっていたので今の流行を手っ取り早く知るには実際に見ることにほかないと思うので」
「なるほど。ロゼリアが嬉々として話していた新衣装のドレスデザインの件だな」
お兄さまめっちゃくちゃ話を書き替えますね。
私依頼受けたんじゃないです。いや、最終的にはそうだけど。やるように仕向けたの兄さまですわよ⁈
「それなら、実際に見た方が早いか…。よし、リズも一緒に行動しよう」
「は、はい」
お兄さまを恨めし気に見ていたせいで、お父さまの声に危うく気づかないところだった。
「2人ともくれぐれも逸れない様にしなさい」
「「はい」」
商人ってどんな服装しているんだろう?と密かに心弾ませたのは内緒である。
相変わらずレイチェルは腹黒です。
リズはいいように遊ばれてます




