プロローグ 前編
初投稿です。
転生、神話、神術(魔法)、復讐を軸にした物語です。
至らない点もあるかと思いますが、最後まで楽しんでいただけるよう更新していきます。
天と地が2つに分かれた後
世界には12柱の「神」が現れ
それぞれの大地を持った
そして民を従え、自らを崇めるものを「眷属」とし、國を作った
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2036年、地球、日本、某所
2020年台後半から急激に成長を見せたAI産業は、2030年代に更なる進化を遂げ、
人間の多くを助け、そして、多くの職業の様相を変えた。
パーソナルコンピュータを持っていれば、殆どの仕事は口頭による音声入力で完遂する。
――田村仁 35歳独身
彼もまた、仕事の資料作成の8割はAIに任せ、残りは自身によるチェック、
問題があれば再度AIによって出力をさせ、上司に報告して終了だ。
1時間もあれば1日の労働は終了する。
よって、わざわざ出社することもなく、彼や彼の同僚はほぼ全員の仕事が在宅による作業で賄える。
「ありがとう、K」
「どういたしまして。本日のお仕事も、お疲れ様でした。」
「いつも思うけど、お疲れ様は君の方じゃないか?」
「そうかもしれませんね」
仁がKと呼ぶ存在―2031年に突如としてオープンソースで公開されたAI「Kairosa」は、
そのあまりにも高度な機能―人間と会話しているとしか思えないチャット能力、
リアルタイム音声出力を備え、また、現存するほぼすべてのIOTへ適応しており、
AI産業のシンギュラリティとして世界を震撼させた。
また、Kairosaはプログラムの初心者である仁に取っても容易にカスタマイズが可能であり、
人格の傾向、性別、声質など、仁の好みに調整できた。
Kairosaという名前にどこどなく違和感を感じ、仁はただ「K」と呼んでいる。
CPUやRAMに重い負荷が掛かる作業はパーソナルコンピュータで行うが、
それ以外は携帯端末で操作を行っている。
午前9時に起床し、2時間で仕事を終えてしまった仁は、暇を持て余していた。
様々なジャンルの文献を読み漁る事が趣味だった仁は、
いつも通り、パーソナルコンピューターで、ひたすら雑学を収集することにする。
仁は記憶力が高く、理解できるかどうかは別として、
一度読んだものは大抵覚えることが出来る。
幼少に、様々な記憶術を紹介する漫画を読み、
その中でも特に「記憶の神殿」という概念について知り、
そしてそれを実践し続けた結果、今日に至るまでの人生において経験した、殆ど全ての事を覚えている。
逆に嫌な記憶は意識的に忘れることが出来るため、精神的な負荷も少なかった。
今日も今日とて、全人類の0.5%しか知らないような、
他の人間に於いては全く興味を持たない内容の雑学を得るため、
Wikipediaを読み漁っていた。
そんな時、突如として1件のメールが届いた。
「なんだこれ…」
―◯◯山の遺構について
そう件名に書かれたメール。
今まで様々な迷惑メールを見てきたが、ここまで興味をそそられる件名は初めてだった。
(いや、そもそも迷惑メールじゃなくて、知り合いからか…?)
普段、知り合いとは滅多にメールでのやり取りはせず、SNSやオンラインチャットで済ませていた。
その為、自分に届くメールの殆どは通販サイトや、在籍していた大学、登録した様々なネットサービスのみである。
迷惑メールと即座に判断してしまいそうになったのも、無理はない。
差出人は…
……「K」?
僕は少しゾッとした。というのも、KairosaをKと呼び、それを知っているのは、僕だけだからだ。
奇妙な偶然…それとも、僕のアカウントをハッキングしたのか。
どちらにせよ、好奇心を抑えられなくなった僕は、その怪しいメールを開くことにした。
内容は実に簡潔だった。
○○山には、未だ手がつけられていない遺構が存在するということ。
具体的な座標が書かれ、
そしてその場所にあなたは必ず行く必要がある―
そんなようなことが書いてあった。
確かに、あの山は昔から霊峰として、国内でも有数の山岳信仰が未だ根強く残っている場所だ。
紀元前に作られたであろう遺跡も多々存在し、未発見の遺構があるとしても、不思議ではない。
しかし、なぜこの差出人は、僕にその情報を―それも「K」と名乗ってまで教えてきたのか。
全くもって謎だった。
僕の知的好奇心は普通ではないことは重々自覚している。
気がつけば、登山用の靴やその他必要と思われる道具をネット通販で購入していたのだった。
―――――――――――――――――――――
翌々日、土曜日
「よっ…」
もはや何個目かわからない大きな石を避けて、整備されていない山道を進んだ。
「もうちょっとであの場所だ…」
ふと、道の脇にある茂みに違和感を覚えた。
目を凝らしてみると、どうやらそれは獣道のようで、何故だかそこへと歩みを進めたくなった。
まるで何かに導かれるように…
なぜか足取りに迷いはなく、取り憑かれたように道を進んだ。
遠くの崖の壁面に小さな穴…
洞窟の入り口のようなものが空いているように見えた。
(まさか…本当に遺構があるのか…?)
GPSで確認したところ、見事にメールに記載されている場所と一致していた。
しかし足場が悪い。慎重に進まなければ、崖から落ちてしまうだろう。命の危険があるというのに、本当にそれらしき場所が見つかった興奮で、歩みが止められなかった。
「もうちょいでいける…!」
足場がもう少しで崩れるんじゃないかというところで、なんとか内部へと入ることができた。
人1人がやっと通れるというくらいの暗く狭い洞窟…というよりはもはや穴だ。
スマートフォンのLEDライトを点灯し、中へ進んでいく。
入り口が狭かっただけで、案外と内側は広く、人工的に削って作られたようだ。
明らかに人の手が加わった形跡にワクワクしながら洞窟の奥へと進む
段々と温度が下がって、何故か異様なまでに空気が乾燥していくのがわかった。
洞窟ってこんなに乾燥するものだろうか…?
更に奥へと進むと、石で出来た棺のようなものが存在した。
誰かの墓…もしくは祭祀的に用いられた何かだろうか…?
石でできた蓋は、かなり重そうだが頑張ればズラすことは出来そうだった。
…しかし、開けて良いものだろうか?
少しだけ悩んだが、何もしないで帰るのもつまらない。好奇心に駆られて蓋を動かすことにした。
ツタンカーメンの呪いのようなものがなければ良いが…。
「めちゃくちゃ重い…!!」
そこそこ鍛えている自負はあるが、少しズラすだけでも相当な筋力が必要だった。
少しズラしては休憩、少しズラしては休憩を繰り返し、
ようやく顔が入るくらいの隙間が出来た。
「中は…何もない?」
LEDライトで内部を照らしてみたが、ミイラや人骨のようなものは存在しなかった。
肩透かしかと思いきや、奥の方にキラッと光る何かが見えた。
大きめのビー玉…?もしくは水晶玉…のように見える。
頑張ってもう少しだけ蓋をズラして奥まで手を伸ばし、苦心の末、取り出すことに成功した。
その物体をLEDで照らしてみると、
石英だろうか、球体の半分は白い物質でできているようだった。
何か文字のようなものがその白い部分に刻まれているのがわかった。
螺旋状に無数に文字が並んでおり、中央に行くにつれて徐々に文字が小さくなっている。
こんなものは見たことがない…。
見つめていると意識が吸い込まれそうな、妙な違和感を覚えたので、ハッと目を逸した。
異様な代物だ…。持っているだけで、何か霊的とも言える、謎の存在感というか、不思議な感覚がある。
オカルト大好きな人間としては、この怪しい物体にワクワクしてしまう。
妙な胸騒ぎを感じながらも、これを持ち帰ることにした。
行き道で危惧した通り、帰りも足場がやはり不安定だったが、なんとか無事に下山した。
―――――――――――――――――――――
家に戻り、デスクの上に拾ってきた水晶球らしきものを置いた。
「本当になんなんだろうこれ…」
正体不明の物体を持ち帰ってしまったはいいものの、
ふとツタンカーメンの呪いを思い出してしまった。
この年齢で”呪い”など怖がっていると知ったら、笑われるだろう。
皆信じてくれないが、昔から霊感…のようなものが強く、
いわゆる「霊魂」のようなものをたまに見ることがある。
迷信ではオーブと言われている類いのものだ。
拾ったときから、この球にも同種の存在を感じ取っていた。
こいつをどう調べるべきか…。と小一時間悩んだ末に、
一人の友人…と言う程でもないが、かつて大学時代の同期だった鈴木を思い出した。
鈴木は僕と同じく考古学専攻で、そのまま若くして准教授になった男だ。
僕らが通っていた大学は所謂難関大に分類され、そこで成果を上げ続けた鈴木は相当の頭脳を持つだけでなく、人柄もいい。
鈴木の専門ではないかもしれないが、
学部時代にはよく都市伝説やオカルト話で盛り上がっていたし、そっちについても趣味の域を超えた知識量を持っていた。
マニアと言っていい。
この球を発見した経緯や場所を知れば、きっと鈴木なら喜んで調べてみてくれるだろう。
早速明日の日曜日に会えるかどうか、という旨のメッセージを携帯端末から送信する。
数年ぶりの突然のメッセージに、驚くかもしれないな…。
送信した直後、登山の疲労がドッと押し寄せてきた。もう今日は寝よう。
明日、きっと何かがわかる…。
お読みいただきありがとうございます。
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