093「魔道具大好きソアラちゃん(3)」
「ああ、もうっ!! あ、ちょっと待って! 今はそんなことよりも聞きたいがあるのです、ラルフ・ウォーカー!」
ソアラちゃんが何か私に対して質問があるようだ。何だろう?
「あの魔石に封入した『治癒』はラルフ・ウォーカーが⋯⋯⋯⋯あ、すみません、つい。えーと⋯⋯ラルフ・ウォーカー様が⋯⋯」
「あ、もういいよ、ソアラちゃん。敬語は」
「え? で、でも⋯⋯」
「大丈夫。それにソアラちゃんには気兼ねなく本音で意見を言って欲しいから。⋯⋯このままで」
「わ、わかりました、ありがとうございます。そ、それでは⋯⋯⋯⋯ラルフ・ウォーカーが魔石に封入した魔法ですがあれは六大魔法の光魔法『治癒』なんですよね?」
「うん。あ、いや、正確に言えばそうじゃない⋯⋯かな?」
「え?」
「正確には⋯⋯⋯⋯六大魔法の光魔法『治癒』と同じ効果の生活魔法です」
「は⋯⋯はぁぁぁっ?! 光魔法『治癒』と同じ効果の生活魔法ぉぉっ!! な、ななな、何を言っているんですか、ラルフ・ウォーカーっ?! い、意味が、意味がまったくわかりません! 比喩ですかっ! 比喩表現の一種ですかっ!!」
「いや、比喩でも何でもなくそのままの意味だよ? そうだなぁ、言い方を変えるなら⋯⋯生活魔法版『治癒』って感じ?」
「な⋯⋯な⋯⋯」
ソアラがラルフの言葉に呆気に取られる。
「ちょ、ちょっと待ってください?! この生活魔法版『治癒』はラルフ・ウォーカーが封入したんですよね? だったら、この魔法はそもそもどこで習得したものなんですか?」
「私が作りました」
「へ〜、ラルフ・ウォーカーが作ったんです⋯⋯ええぇぇぇぇぇぇぇっ?! おい、いま何つった!!」
「私が作りました」
「魔法を⋯⋯作った? つまり、オリジナル魔法⋯⋯ということですか?」
「はい」
「う、嘘⋯⋯」
********************
「信じられません! とても信じられませんが! しかし、目の前で実際に見て、そして、それを体験したことはまぎれもない事実⋯⋯⋯⋯まいりました、ボクの負けです」
ソアラちゃんが何やら『敗北宣言』を口にした。
そうか、何かと戦っていたのかソアラちゃん。おつかれ。
「さて、それでは改めて聞かせてください。この生活魔法版『治癒』を⋯⋯⋯⋯本当に魔道具にして販売するのですか?」
「ええ。販売します」
「フリオ先生。先生はこの魔道具を販売する事の重大さを⋯⋯」
「もちろん、承知していますし、私だけでなく、学園長ザナーク・レンフロもセルティア王国第二王子レオンハート・セルティア様も承知しております」
「⋯⋯フリオ先生。ラルフ・ウォーカーのこのオリジナル魔法は生活魔法です。そして、生活魔法の使用に長けているのは『生活魔法士』の称号を持つ者。そして、何より生活魔法に長けているのは圧倒的に平民や獣人・亜人が多い。⋯⋯これは、貴族のこれまでの既得権益を脅かす商品となりますよ?」
「そうですね」
「やはり、それを承知の上で販売するということなんですね。⋯⋯わかりました、やっと。どうして、おじいちゃんが村一番の魔道具加工職人であるボクを手元から離してでも、あなたたちについていくよう指示したのか」
「⋯⋯⋯⋯」
「わかりました。ボクも全力で事に当たらせていただきます! 改めて、よろしくお願いします!」
「どうか、ソアラ君の知識と技術を存分に発揮してください。こちらとしても全面的に協力は惜しみません。よろしくお願いします」
「ソアラちゃん!」
ソアラがフリオとのやり取りを終えるタイミングで、ラルフが声を掛ける。
「⋯⋯ラルフ・ウォーカー」
「ソアラちゃん。さっきも言ったけどこれからはどんどん本音できてね」
「ふん。言われなくてもそのつもりです、ラルフ・ウォーカー。あなたがそこまでの常識破綻者ならボクもそのテンションに合わせなきゃいけないですからね。⋯⋯極めて不本意ではありますが」
そうかなぁ? むしろ、ソアラちゃん、そのテンションのほうがい生き生きしているけどなぁ⋯⋯。
こうして『ここにいる理由』を理解したソアラは、それ以後——ラルフや他の皆と分け隔てなく、身分関係なく『本性』でぶつかっていくようになるのであった。
********************
「で、この生活魔法版『治癒』の魔道具のイメージなんだけど⋯⋯」
「いや、これだと使い勝手が悪すぎますし、そもそも全く美しくありません」
「なるほど。たしかにソアラちゃんの言う通りですね。それではこういうのはどうですか?」
どうも、私です。ラルフ・ウォーカーです。
あれから、ソアラちゃんとは連日のように魔道具開発に勤しんでいた。
いやぁ、それにしてもソアラちゃんの『魔道具愛』が迸っていますな!
そして、私もまた魔道具には機能と美しさを求めるのでソアラちゃんとはかなり意気投合した。⋯⋯もはや『同志』と言っても過言ではありません。
しかし、そんな『魔道具オタク』であるソアラちゃんと私のやり取りは、結果的に別の問題を引き起こす事となりました。
「お、おい、テイラー! いい加減適当なところで折り合いつけてさっさと魔道具製作を開始しろと⋯⋯言ってこい!」
「ちょ、レイカ先輩?! 勘弁してくださいよぉ! あんな『魔道具オタク』な二人の中に入って、そんな喧嘩を売るようなこと言ったら、それこそ立ち直れないくらいにダメ出し喰らいますってぇぇ!」
「うるさい! あたいは先輩だぞ! 先輩の言うことは絶対だぞ!」
「い、嫌だぁぁぁ! 俺は嫌だぁぁぁ!!」
「あ、逃げるな、こいつ! 待て、テイラー!」
とまあ、こんな感じで魔道具製作の進捗がだいぶ遅れる事態を招いた。
さすがにこれはちょっと洒落にならないなと思った私は、何とかソアラちゃんの『及第点』で折り合いをつけてもらうよう掛け合った。
「どうでしょう? このような杖の形は? 持ち手の親指が魔石部分に触れることで⋯⋯」
「なるほど。これなら自然な形で魔石に触れられるから魔法発動も自然ですね。しかし、ちょっと外観がシンプル過ぎやしませんでしょうか?」
「いえ、かえってこのくらいのシンプルさが飾らない感じで、そのもたらす魔法効果とのギャップが生まれていいのではないでしょうか?」
「⋯⋯なるほど、わかりました。ボクとしては外観をもう少し派手にしたかったですが⋯⋯しかし、ここはこの魔法の生みの親でもあるラルフ・ウォーカーの意見を採用しましょう」
「ありがとう、ソアラちゃん」
ということで、何とかソアラちゃんの合格をいただき、長さ30センチほどの杖の形をした魔道具が採用された。
ちなみに、イメージは『ハリー○ッターの杖』で、持ち手の親指が触れる部分に魔石の一部を剥き出しにして、そこから魔法発動のきっかけとなる生活魔法を流せるよう仕上げてある。
こうして、世界初となる『生活魔法版『治癒』の魔道具』が爆誕した。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
https://ncode.syosetu.com/n3084hz/
『毎週土曜日13時更新』です。
よろしくお願いいたします。
mitsuzo




