092「魔道具大好きソアラちゃん(2)」
ボクは恐る恐るだったけど、何とか覚悟してラルフ・ウォーカーから受け取った魔石に生活魔法の魔力を込めてみた。すると、
「え? あ、あれ? う、嘘⋯⋯っ!?」
光魔法『治癒』を封入した魔石が光り輝く。
「ま、魔石が⋯⋯ボクの流した生活魔法の魔力で⋯⋯封入してある魔法が⋯⋯発動しそうなんだけど⋯⋯」
でも、ボクの流した魔法は生活魔法だよ? 生活魔法の魔力で六大魔法の光魔法が発動するなんて、そんなの、そんなの⋯⋯。
と、ソアラが一人プチ混乱していると、
「ソアラちゃん。では、私にかけてもらっていいですか? いや〜、さっきちょっと手を切っちゃいまして⋯⋯たはは」
と、この光魔法『治癒』を封入した『張本人』であるラルフ・ウォーカーが情けないくらいに砕けた笑顔でそう呟いた。この人、自分がどれだけのことをしているのか本当にわかっているのだろうか⋯⋯。
「は、はい。わかりました⋯⋯」
ボクは彼の言う通り、魔石に再び『生活魔法』を流し、ラルフ・ウォーカーに向けて魔法名を呟く。
「⋯⋯『治癒』!」
カァァァァ⋯⋯!
すると、ボクの魔法名の発言が引き金となり、魔石から光がさらに迸るとラルフ・ウォーカーの切り傷のある手に向かって照射された。そして、
「ほ、本当に⋯⋯傷が⋯⋯消えたっ!?」
本当に、本当に、ラルフ・ウォーカーの手の傷が消えた。⋯⋯しかも、完全に!
「いや〜、ありがとうございますぅ。痛みも完全に引きました〜」
本当に生活魔法の魔力でこの魔石に封入されている六大魔法の光魔法『治癒』が発動したことに激しく動揺しているボクに対して、今のこの『奇跡』をさも『当たり前のこと』『当然の日常』のようにあっけらかんとし、さも平常運転のテンションで謝辞を述べるラルフ・ウォーカーに、何だかボクは⋯⋯⋯⋯すんごい腹が立った!
「ふ、ふざけないでくださいっ!!」
「ええっ?!」
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「ふざけないでください! どうして、こんな奇跡のような非現実に、どうして⋯⋯どうして⋯⋯こうも冷静でいられるのですか?!」
「ええ⋯⋯そ、そう言われましても⋯⋯」
なんか、すごいソアラちゃんが激おこでいらっしゃるのですが⋯⋯? なぜにっ!?
「だって、おかしいでしょ! 光魔法は六大魔法の一種ですよ! それを、生活魔法の魔力で発動できるだなんて! あり得ないです! 本来なら絶対にあってはならない現象ですよ!」
ソアラちゃんは、いよいよ言葉遣いも気にせず、自身の何かのショックから来るのか激しい想いを吐露し続けた。
「⋯⋯六大魔法の魔道具であれば、その発動のきっかけとなる流す魔力は六大魔法。そして、生活魔法の魔道具であればきっかけとなる魔力は生活魔法⋯⋯これが常識です! 世の理です! それなのに目の前では今まさにその常識がガラガラと音を立てて崩れたんですよ? どうしてラルフ・ウォーカーも周りの皆さんも全然動揺していないんですかっ!?」
「い、いや、俺らも初めて見た時は驚いたけどさ⋯⋯もう慣れたというか⋯⋯」
と、テイラーがソアラちゃんを宥めようと優しく問いかけるが、
「だまらっしゃい!! こんな非現実を慣れてどうするんですかっ!!!!」
「ひ⋯⋯ひぃぃぃぃ!?」
火に油を注ぐ結果となった。
ああ⋯⋯テイラー、そういうとこだぞ。
「し、信じられません⋯⋯。この目の前の現象が一体どれだけの⋯⋯どれだけの可能性と危険性を孕んでいるのかおわかりにならないのですか?!」
ソアラちゃんは少し冷静さを取り戻したのか言葉遣いが戻ってきた。おかえり。
では、冷静になったところで色々お話を聞いてみよう。
「あの⋯⋯ソアラちゃんの言う『可能性と危険性』ってどういうものなの?」
「くぅぅ!! この魔法を作り出した生みの親がそれを知らないとか⋯⋯! 知らないだとかっ!! ラルフ・ウォーカー、あなた一体どんだけですか! 天才って、みんなこんな常識破綻者なんですかっ!!」
おっと、口調が元に戻ってしまったようだ。私もテイラーと同じように火に油を注いでしまった⋯⋯しかも大量に。
さっきはバカにしてごめんね、テイラー。
「え? それじゃあ、村で魔道具加工職人として『天才』と言われたボクもラルフと一緒なの? い、いや、そんなことはない! ないはずです! ボクはラルフとは違う! ボクはこんな⋯⋯ラルフ・ウォーカーのような⋯⋯常識破綻者では無いです! 絶対に無いはずですっ!! え、無いよねぇぇっ?!」
村で魔道具加工職人として『天才』と言われてきたソアラちゃんにとって、どうやら私の功績があまりに非常識にも関わらず、それに対して特に気にする様子がないのが常識が破綻していると言う。
そして、それは天才だからなのかと自身に問う。
そして、それは自分も当てはまるんじゃないかと自身に問う。
そして、そのことを否定するもちょっと心当たりがあるのか、最後は自分を疑った言葉を呟くソアラちゃん。
うん、大丈夫だよ、ソアラちゃん。
自分の関心ごとに熱中して簡単に貴族相手に言葉遣いが破綻するような君は、きっとこちら側の人間だよ(ニッコリ)。
「な、何を笑ってるのよ、ラルフ・ウォーカーっ!! さも⋯⋯『仲間だね』みたいな顔しないでよぉぉ! ボクは君みたいな常識破綻者とは違う! 一緒にするのはやめろ! やめてぇぇ〜〜!!!!」
うん、どうやら私の真意をちゃんと汲み取ってくれたようだ。
やっぱり、ソアラちゃんはこちら側だね。⋯⋯さす以心伝心。
「ああ、もうっ!! あ、ちょっと待って⋯⋯! 今はそんなことよりも聞きたいがあるのです、ラルフ・ウォーカー!」
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mitsuzo




