091「魔道具大好きソアラちゃん(1)」
——これは、生活魔法版『治癒』の魔道具販売が決まる前のお話
ボクの名前はソアラ。
ドワーフの集落であるイツクール村に住んでいる。
父はドワーフ族だけど母はエルフ族という⋯⋯いわゆる『ハーフリング』と呼ばれているやつだ。ハーフリングの子は基本『父親の血が濃い』ので、種族的にはボクは『ドワーフ族』となる。
ボクの父は魔道具加工の凄腕の職人さんなんだけど、ボクもまた物心つく前くらいには魔道具加工がすごく好きで、それは、ほぼ毎日父の作業現場に通うくらいには好きだ。
父はそんなボクを見て魔道具加工の手解きをしてくれたんだけど、実際にやってみるとすぐに父の技を吸収することができたんだ。
すると、父はそんなボクを見て驚くと同時に「ソアラは天才だ!」とすごく褒めてくれたんだ。ボクもすごく嬉しかった。
その後も、父の魔道具加工の技をいろいろと教えてもらい、それらを習得した後は村の職人さんの家を周り、技を教えてもらった。皆、快く教えてもらったおかげで魔道具加工の技術がさらに上がった。
そのおかげで、現在は村一番の魔道具加工職人と言われるようになった。
でも、それはボクだけの力じゃなく、父や周囲の職人さんが惜しみなく技を教えてくれたおかげなんだ。だから、ボクは今でも心の底から父や職人さんたちを尊敬している。
そんなある日——村に人間族の一行がやってきた。
ボクたちドワーフ族やエルフ族は人間族から『亜人族』と呼ばれ、過去に奴隷扱いされていたらしい。だから皆、村に来た人間族をとても警戒していた。
ボクは昔のことはよく知らないけど、でも、そんな悪い人たちには見えないけどなぁ⋯⋯。
その後、彼らはおじいちゃんの家に招かれたみたいで家に入っていった。すると、そのタイミングで父に声をかけられた。
「ソアラ⋯⋯。もしかするとお前を人間族の彼らに紹介することになるかもしれないから、おじいちゃんの家に行きなさい」
「え? 紹介? どうして?」
どうしてボクが人間族に紹介されるのか聞いたが父は教えてくれず、「とりあえず、おじいちゃんの家に行きなさい」とだけしか答えてくれなかった。
ボクは訝しんだけど、でも父もこれ以上は語らなそうな雰囲気だったのでそのまま父の指示に従って、おじいちゃんの家に向かった。
あ、ちなみに、ボクのおじいちゃんはこのイツクール村の村長なんだよ。すごいでしょ。
その後、本当におじいちゃんはボクを人間族たちに紹介した。しかも、それだけじゃなく『人間族の彼らと一緒にセルティア王国にあるセルティア魔法学園へ行く』ことが決定した。
いきなりのことなのですごく驚いたけど、でもボクはずっと外の世界に憧れていたんだ。だから、今回の突然の出来事はボクにとって「チャンス」だと思っている。
「外に⋯⋯出られる」
基本、ドワーフもエルフも人間族の国では肩身が狭いらしい。奴隷⋯⋯とまではいかないにしても、それに近い扱いを受けることだってあるそうだ。
正直、そんな話を聞くと怖いけど⋯⋯でも、人間族の国にある魔道具も見てみたいし、人間族の国にあるダンジョンに行き、この村では取れない魔石や鉱物なんかも取ってみたい。
とにかく、やりたいことが山積みだ。
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「えっ?! 今、何て言いましたっ!!!!」
突然ごめん。
でも、それくらい緊急で異常な話をボクは今、目の前の少年から聞かされたんだ。
「えっと、だから⋯⋯六大魔法の光魔法『治癒』と同じ効果が出る生活魔法の魔道具を作るって話なんだけど⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
この子は一体何を言っているのだろう?
えっと⋯⋯たしか、この少年の名前は⋯⋯あ、そうそう、ラルフ・ウォーカー。たしか、このセルティア王国の東の国境を守っているウォーカー辺境伯っていう貴族の息子だっけ?
「あ、あの、光魔法は六大魔法なので生活魔法では発動できないかと思うのですが⋯⋯」
ボクは失礼がないよう、できるだけ丁寧な口調で指摘した。すると、
「あ、大丈夫、大丈夫。その辺りの話はもう終わったことなので」
「え? お、終わったこと?」
んんんんん〜⋯⋯? ど、どゆことぉぉ〜⋯⋯???
ボクがラルフ・ウォーカーの説明に唖然としていると、
「おい、ラルフ。その話を口で言っても理解できるわけないだろ? ソアラちゃんに実際に体験させろよ」
「あ、そうでしたね。すみません。『百聞は一見に如かず』ですので、では、ソアラちゃん⋯⋯この『魔石』を手に取ってください」
「え? これ⋯⋯は?」
「これは、今話した光魔法『治癒』と同じ効果を出す魔法が封入された魔石なのですが、この『治癒』の魔法は生活魔法で作られているので、魔石に発動のきっかけとなる生活魔法の魔力を少し注いで『治癒』と魔法名を言えば効果が発現されますので試してみてください」
「ええっ?! すでにこの魔石に封入してあるんですか?」
「はい。ちなみにソアラちゃんの称号も『生活魔法士』ですよね? 村長さんが言ってました」
「はい、その通りです」
そう。ドワーフやエルフでも『六大魔法』の称号を持つのは一部の人たちだけだ。そして、私はその一部の人ではないのだ。
「では、生活魔法を込めて魔法を発動させてみてください」
と、目の前のラルフ・ウォーカーがニコッと可愛い笑顔を見せる。その笑顔を見る限り、彼が嘘をついているようには見えないのだけれど、
「で、でも、そんなことが⋯⋯できるわけ⋯⋯」
ボクは恐る恐るだったけど、何とか覚悟してラルフ・ウォーカーから受け取った魔石に生活魔法の魔力を込めてみた。すると、
「え? あ、あれ? う、嘘⋯⋯っ!?」
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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mitsuzo




