084「ドワーフに会いに行こう〜オプト神教〜⑩」
「うむ。そして、そんな世界の常識をすり替えるほどの規模であれば、おそらく『集団』でその常識のすり替えである⋯⋯『情報統制』を行っていたと思われる。以上の可能性から『情報統制』を行ったのはおそらく⋯⋯」
「「「「「⋯⋯⋯⋯(ごくり)」」」」」
皆がゴズ村長の推察の解に注目する。
「宗教じゃ」
「「「「「宗教っ?!」」」」」
ゴズ村長の言葉に皆に緊張感が走った。
「そ、それって、もしかして『オプト神教』のことを言っているのですが?!」
テイラーがゴズ村長に緊張した面持ちで問いかける。
「⋯⋯いや、そんなことは言ってない。あくまで可能性の話じゃ」
ゴズ村長はそう言って否定をする。⋯⋯が、その表情を見るに『オプト神教』を疑っているように見える。
「あ、あの、オプト神教ってたしか『オプト神』という神様を崇めているんですよね?」
今度は私からゴズ村長に質問してみた。
「そうじゃ。オプト神は種族に関係なく、この世界全体で『唯一神』として崇められている神様じゃ」
そう言うと、ゴズ村長がオプト神教の説明をしてくれた。
「オプト神教は、オプト神の崇拝を中心にした宗教じゃ。もちろん世界各国に支部を持つ巨大組織。故に各国においても大きな影響力を持つ。そんなオプト神教くらいの宗教が1000年前にあったとしたら、世界の魔法の常識をすり替えるということも可能だったかも⋯⋯という話じゃ」
なるほど。たしかに、それなら可能かもしれない。1000年前で新聞といったメディアがない時代、人の組織力が与える影響力は今よりもずっと高かったのかも⋯⋯。
そう考えると、ゴズ村長の語る推察は大いに可能性のある話だと思う。
だけど、ゴズ村長の話す雰囲気を見ていると、
「あ、あの、ゴズ村長は、やっぱり⋯⋯1000年前にこのオプト神教が世界の魔法の常識をすり替えたと考えているのでは?」
「⋯⋯ラルフ君。私の話はあくまで可能性の話に過ぎない。そもそも、この話自体ただのドワーフ族に伝わる言い伝えに過ぎないからね。だから、オプト神教が関係している・していないの前に、そもそも1000年前に本当に生活魔法が主流魔法だったのかも含め⋯⋯確固たる証拠があるような話ではないんじゃよ」
さもありなん。
とはいえ、ゴズ村長の顔を見ていると、オプト神教を怪しんでいるように見えるけどね。
まー、宗教なんてあまり関わり合いにならないほうがいいと思うので私は特にそれからツッコむことはしなかった。しかし、
「じゃが、おそらくオプト神教が関わっているのは間違いないじゃろう」
「えっ?!」
はぐらかすようにしていたゴズ村長が、いきなり、はっきりとオプト神教が犯人だと告げる。
「奴らは、そもそもこの世界の魔法の常識である『六大魔法』を主流魔法として人々に教えを説いているし、教育機関もまた魔法教義はすべて、そのオプト神教の『六大魔法』の教義を教えている。彼らは六大魔法に関してだけは、昔からかなり積極的に活動しているからな」
「そうなんですね」
「じゃが、証拠がないのも事実じゃから表立って言える話ではない。少なくともオプト神教の影響力の強い人間族の国であればなおさらじゃろう?」
「そうですね。オプト神教への教義に対して意見を言うなどすればすぐに捕まるでしょう。それくらい人間族の国でのオプト神教は絶対的です。⋯⋯もちろん、私たちの国、セルティア王国もまた例外ではありません」
と、レオンハート様がゴズ村長に答える。
それにしても、私たちの国の第二王子であるレオンハート様の口からそのような話を聞いて、私はオプト神教が強い影響力を持っているんだなと改めて実感した。
「しかし、もう一つ気になるのは古代遺跡にあるあの装置です。あれを見ると、やはり昔に生活魔法が主流だったというのは本当だったんじゃないかと⋯⋯」
さらに続けて、レオンハート様が、あの古代遺跡の『転移陣』の入口にあった岩壁が扉に変わる装置の話をした。
「同感じゃ。ワシもあの古代遺跡の装置が生活魔法の魔力が使われているのを見るとな。じゃが、ワシらも含めて六大魔法が主流のこの世界で生活魔法はほとんどわからないことばかりじゃ。ドワーフの先祖が残した言い伝えといっても、ワシ個人的には『眉唾もの』としか思っていなかったじゃ。⋯⋯しかし」
「!」
そう言って、ゴズ村長が私を見る。
「ラルフ君の生活魔法を見て、ワシは先祖の言い伝えが本当の話だったと確信しているよ」
「あ、ありがとうございます⋯⋯」
ちなみに、村長にはさきほど自分の生活魔法を見せている。
「さて、ゴズ村長。今回我々がここに来た本当の目的ですが⋯⋯実はラルフ君の生活魔法を魔道具化するために、ドワーフの魔道具加工の職人さんを学園にお招きしたいのです」
「何!? ラルフ君の生活魔法を魔道具化⋯⋯じゃと! 本気か?!」
ゴズ村長がフリオ先生の言葉を聞いてすごく驚いている。
「はい。しかも、ラルフ君のオリジナル魔法の魔道具化です」
「な⋯⋯?! フリオ⋯⋯それが何を意味しているのかわからんわけではないよな?」
「もちろん。それに、ここにはレオンハート様もミーシャ様もいるでしょう? それが何よりの覚悟と思っていただければ⋯⋯」
「はい、フリオ先生の言う通りです。私たちもまた覚悟を持ってきています」
「私も同じです」
「レオンハート⋯⋯ミーシャ⋯⋯」
フリオ先生の言葉にレオンハート様もミーシャもゴズ村長に覚悟⋯⋯という話をしていた。一体、何の話をしているのだろう?
「⋯⋯なるほど。わかった。では、こちらも最高の魔道具職人を派遣しよう」
そう言って、ゴズ村長が立つと奥のドアを開ける。
「この子が、このイツクール村の最高の魔道具職人だ⋯⋯」
ゴズ村長がそう言いながら、奥の部屋から彼女を紹介した。
「ワシの孫娘の⋯⋯ソアラじゃ」
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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mitsuzo




