069「学園長室の会合②」
「ところで、テイラー君。君はどう思っている? この国の現状、そして、世界の現状を⋯⋯」
「え? そ、それは⋯⋯」
ザナークの突然の⋯⋯身分の低い貴族のテイラーにとって答えづらい質問に困り顔を浮かべるテイラー。すると、
「もしかして、答えにくい、と思っているのかな? だとしたら、それこそ話して欲しい。ここはそういう場だ」
「っ!?」
「それに、君だって理解しているのだろう? この状況を⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
テイラーはザナークに見透かされたような発言に驚くと同時に沈黙する。そして、その沈黙はザナークの言ったことが正しいと暗に示しているに他ならなかった。
しかし、テイラーはそれはわかった上で沈黙をしていた。というのもテイラーの中で「この現状は自分にとってプラスになるものだ」と直感的に感じていたからだ。
「⋯⋯そうですね。率直に言わせてもらえれば、希望の全く持てない国だと思いますし、そして世界もまた同じような認識です」
「!」
ザナークの質問やフリオが言った『世界変革』の言葉に、今自分がどういう状況かを把握したテイラーは、腹を括って本音をそのままザナークに返す。そんなテイラーの忖度しない言葉に少し驚くザナーク。
「うんうん。なるほど。自分の今の状況を瞬時に判断した上で出した言葉のようだね。優秀だね、テイラー君。素晴らしいよ」
「! あ、ありがとう⋯⋯ございますっ!?」
ザナークはテイラーの対応に満足すると手放しで褒めた。そして、そんな言葉をもらえるとは思わなかったテイラーはザナークの言葉にあたふたする。
「はっはっはっ! フリオ先生、彼もまたとても優秀な生徒のようだね」
「はい」
「しかし、こんな優秀なテイラー君でも学園を出て社会に出れば将来がないというわけだからな⋯⋯。本当に嘆かわしいものだよ」
「そうですね」
ザナークとフリオのやり取りをテイラーはじっと横で聞いている。すると、ザナークから再度声がかけられた。
「テイラー君。我々の目的は先ほど言った通り『六大魔法絶対主義の打倒』だ。そして、その計画に君も参加してもらいたい」
「⋯⋯六大魔法絶対主義の打倒。それって、つまり、現政権の打倒⋯⋯ということですよね?」
「! ふふ⋯⋯まーそういうことだ。理解が早くて助かる」
ザナークはテイラーの腹を括ってからの言葉に驚きつつも、頼もしく思いながらそのような感想を呟く。
「しかも、ここにレオンハート様・ミーシャ様がいらっしゃるということは、現政権の打倒⋯⋯というのは現国王と次期国王と言われている王太子様たちを打倒する⋯⋯ということを意味しているのでしょうか」
「ああ、そうだね。テイラー君のその認識で間違ってないよ」
レオンハートがテイラーの持論に肯定の言葉をかける。そして、
「テイラー君、君は本当に優秀だね。ミーシャと同い年とは思えないよ」
「ちょっと、レオお兄様!」
「ははは、ごめん、ごめん。でも、本当に素晴らしいよ、テイラー君。君の将来が今から楽しみだ」
「お、恐れ入りますっ!?」
レオンハートがそこまで褒めるとは思っていなかったテイラーは、思わず恐縮してしまう。
「ほらぁ! テイラー君が萎縮しちゃったじゃないですか! レオお兄様が無駄話をしたからですよ」
「あはは、ごめん、ごめん。でも、これからよろしく頼むよ、テイラー君」
「は、はい! ですが、本当のところいろいろ不安しかないのが本音です。すみません」
「いや、まだ入学したばかりの君をこのようなことに巻き込んでしまうのを本当に申し訳ないと思っている。⋯⋯すまない」
そう言うと、第二王子であるレオンハートが子爵家のテイラーに頭を下げた。
「や、やめてください、レオンハート様っ!? そんな、俺ごときに頭を下げるなんて⋯⋯!」
「いや、これぐらいどうってことないさ。それよりも私はテイラー君の協力を望んでいる」
「レオンハート様⋯⋯」
「ふむ。まーそういうことだ、テイラー君。レオンハートも私も君にぜひ協力して欲しいと願っているのだ。何なら私の頭だって下げるぞ?」
「や、やめてください、学園長!? そんなことしなくても大丈夫です!」
「! ということは⋯⋯」
「はい。学園長が考えている『六大魔法絶対主義の打倒』。そして、その先にある未来は俺の望む未来につながっていると⋯⋯そう思いました。なので、俺でよければぜひ協力させていただきます!」
テイラーは多少怯えながらも、しかし、変に取り繕うことなく、本音の言葉をザナークにぶつけると、右拳を胸に掲げ、膝をつく礼をした。テイラーがしたその『礼』は騎士が主君に忠誠を誓うときに行う礼であり、それはテイラーがザナークやレオンハートに自分の想いを示したものでもあった。
「うむ。素晴らしい礼だ、テイラー・バレンタイン!」
「ありがとう⋯⋯テイラー・バレンタイン。君の想い⋯⋯しかと受け取ったよ!」
そして、そのテイラーの『礼』に、ザナークとレオンハートが力強い返事を返した。
テイラーは突然のことではあったものの、これまでラルフの横でラルフの凄さを目の当たりにしていたこともあり、いつかこうなる日が来るんじゃないかと思っていた。
(とは言え、思ったより早かったし、想像以上にスケールがデカい話だったけどな⋯⋯はぁ)
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mitsuzo




